「じゃ、来週から花咲区に行ってもらうから」
たった3ヶ月の研修期間で、私の配属先が決まった。
私には理想と離れた、海の見える街。
オフィス街で働くのが夢だった私の理想は、一瞬で消えた。
そんなことを考える暇もなく、引っ越し先と引っ越しを今週中に済ませなくてはならない。
ライブどころではなかった。
「今美土里区なら、同じ都内だからすぐ引っ越しできますよ!家はここら辺が通いやすいと思いますし、いっそ引っ越しちゃいましょう!」
不動産のお兄さんにあっさりと引っ越しを勧められ、4年間住んだ初めてのひとり暮らしの家を離れることに決めた。
こんなにも環境が変わることなんて今までになかったから、不安で仕方ない。
気持ちも追いつかない。辛い。逃げたい。
でも、これが社会人。
頑張るしかないって言い聞かせて、とりあえず大変なことを全て済ませた。
思いのほかあっという間にやることも終わって、新しい土地でやっと一息ついた。
「もっと頑張れば都会のオフィスで働けたのかな」
下町を歩きながら、オレンジジュースを片手に暗い夜道を歩き回った。もう、12時はとっくに過ぎていた。
「えっ?うそ!もうこんな時間・・・。明日から仕事なのに!」
とりあえず帰る方向を向いた。
でもこれで帰ってしまったら、もう本当に明日が来てしまう。
無理、無理無理無理。どうしよう。
新しいことだらけで頭が追いつかない。
うまくやっていけるかな、ミスらないかな。
ずっと不安が頭によぎって足がうまくすすまない。
結局公園で一息つくことにした。
「あーもう、このままここで一生過ごしていくなんて無理・・・」
そう呟いた時だった。
あれ?
あそこを歩いてるのは・・・
私は息が止まった。
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