“またね”
そんな無責任な言葉
それだけを残して
あの日、彼は姿を消した
____
あれからどれくらいたったか
僕はまた彼の部屋に居る
綺麗に整頓された部屋を見渡す
僕が頻繁に出入りしているので、埃はそこまで被っていないように見える
この部屋は彼がいた時から変わっていない
家具やPCなどはもちろん、2人の思い出の品もそのまま
どうせ僕から離れるのなら、全て壊してしまえば良かったのに
抱きしめていた彼のパーカーに涙が落ち、小さなしみをつくる
会いたい、なんてきっと我儘
立ち上がり、彼の机の上を見る
あの日と変わらず、小さな紙が置かれている
丁寧な文字で”またね”と書かれた紙
またね、か
ああ、やだな
ねえ、期待させないでよ
そんな、また会えるみたいな、
またね、なんてさ
どうせなら、さよならって言って欲しかった
どうせなら、貴方から言って欲しかった
そしたら、きっと、諦められるのに
そんなどうしようもないことに思考を巡らせる
ねえ、どうして?
なんでまたねなんて言うの?
彼のいない部屋に問いかけても、当然何もかえってこない
生暖かいものが頬を濡らす
もうどうしようもないんだ
諦めようとしてるのに、その言葉が頭をよぎるから
“もしかして”に頼って、また、
また、此処に来ちゃったんだ
此処に来れば、貴方と居られる気がしたんだ
段々と視界がぼやけてきて、その場に座り込む
それでも、
“もしかして”があるのなら
“ただいま”って
きっと、きっと、
貴方から言ってくださいね
____
何時までも涙が止まらなくて、部屋の隅でただただ蹲る
けれども時間は止まってはくれない
蹲っている間にも進んでいく
全てのものの時間が止まったように見えるこの部屋も、例外ではなく、
少しずつ、少しずつ、ゆっくりと、時間が流れていく
そんな部屋を、窓から差し込む白い光が照らしていた
コメント
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泣いた、これは泣くよ???? 泣かなかった人逆に居る?ってくらい切なくてまじゴゴゴゴゴって感じで胸に刺さった(?)
めっちゃいい!!なんでこんなのかけるのぉぉぉ!!