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僕は、とある悪趣味な実験の被験体だった。
その悪趣味な実験というものは、超能力を『使えるようにした』子供を集めて、バトルロワイヤルをするというもの。
僕は、『好きな本を題名さえ覚えていたら手元に出現させることができるが、一生痛覚がなくなる』という能力だった。
武器にならない、地味で、弱い能力。
つまり、強い能力の子供にバトルロワイヤルで淘汰されて敗北するということ。
敗北とは、この悪趣味な実験で言う死で、最後の一人になるまで生き残ることが勝ち…だった。
500人以上いる子供の中から一人しか生き残れない。
僕の親友は、『触ったら死ぬ毒を足元に生成する、ただし自分自身には効果がない』という最強な能力だった。
でも僕は、読書が好きなだけの臆病な子供だった。
そして、怖かったから逃げた。
隠れた。
泣いた。
命乞いした。
そうこうしているうちに僕と僕の親友に減った。
僕は、唯一の友達を、親友を、僕を信じてくれていた初めての人を、漢字辞典を投げて、僕一人だけ生き残ったのだった。
親友を殺す前、親友は最強の超能力を持ってるけど、自分を信じてくれた唯一の人間である僕を殺すことができないから、「俺を殺して生き残れ」と伝えてきた。
もう、唯一の大切な親友はいない。僕に残ったのは、親友の血で少し赤くなっている部分のある漢字辞典だけだ。
親友は遺言で言った。
「老衰で死んじまえ」と。
僕は親友と一緒に生きてたかったんだ。
僕は痛覚がないから怪我した時に最初に気付いて「ったく、しょうがないな」って言って笑ってくれた君と幸せに、しわくちゃの年寄りになるまでずっと生きてたかった。
漢字辞典を選んだ理由は何だと思う?
君が「霞ってきれいな漢字だよな」って言った時に僕と一緒に霞って漢字を調べたのが思い出だからだよ。
親友に、昔「なんで僕を信じたか」を聞いたら、
『500人以上が殺し合う中で誰もが強くなろうとして獣になっていくのに、君は最後まで「怖がり、隠れ、泣き、命乞いをする」っていう人間としての弱さを捨てないと思う。私にとってその「弱さ」が、この施設で失われかけていた「人間性の証明」に見えた』って言ってくれた、
大好きだった。
血で汚れた漢字辞典の『霞』の項目に血が飛んでいた。
痛みは感じないはずなのに、痛い。
世界が、霞んで、いく。
まるで、儚い春のように、霞のように、消えていく君を、抱きしめることが出来たらどんなに良かっただろう。
…幸せの道はいつまでも続くと思っていた。でも、その幸せの道は今、霞んでいて見えない。
もうすぐ、この蠱毒の実験の生き残りの僕は成功体と言われて、暗殺者にならないといけなくなるのだろう。
そうなるなら…ザバッっと親友の毒の残りを浴びた。
溶けている。
溶けていく。
痛くない、けど床にはまだらに真っ赤な花が咲き始めた。
君のいない世界で暗殺者になんてなりたくない。
ああ、視界が朧げになっていく。
走馬灯で思い出す。
漢字辞典で霞の解説は…【日の出や日没に雲が美しくいろどられること。】だった。
もうそろそろ日の出だ…さようなら、セカイ。