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ci君が無自覚で人にすきにさせちゃうのわかる〜 すきいいいいいいい 今回もめちゃめちゃ神作だった
たまたまの出会いで仲良くなるって展開好きだわ、、。 ファンタジーは見てる側も面白いし、想像が働くからいいよねー
この小説は、卵が好きな配信者様、やばい街の矢印様、同じくやばい街の先生とまいたけ様の名前をお借りした二次創作作品になります。
この小説はボーイズラブの要素を含みますが、本人様方が同性愛者という訳ではございません。ご了承ください。
また、そのようなコンテンツに嫌悪感を感じる方は作品を閲覧しないことを推奨します。
港町の端、小さな店がある。店の看板にはこの国の文字で「ステキな魔法の道具屋」と書かれているようだ。
建物の地下にあるその店の中は、薄明かりに照らされて全体的に暖色を思わせる。暖色の店内は数々の珍妙な道具で覆われていて、壁の色はほぼ見えないと言っても過言ではないだろう。ひとつ、目玉のオブジェが着いた風鈴のように見えるもの。ひとつ、黒猫が描かれた分厚い本。ひとつ、藤色の光を放つポーション。などその道具は多様だ。
その店の奥、珍妙な道具たちに囲まれるように、ぽつんっとカウンターと、店主であろう男がいた。男は魔法使いの醍醐味とも言えよう、つばが大きく、先の尖った帽子を被っており、服も黒いので身体のほぼ全てが黒色の布に覆われている。しかし、それのお陰とも言えようか。彼の唐紅の髪がよく映える。
「あー、売れへん。なんでみんな買ってくれないんやろうか、こんなええ魔具揃いなんに」
そんな愚痴をこぼしながら、彼はカウンターに突っ伏す。
彼の名はちーの。その体内に保有する魔力こそ少ないが、列記とした魔法使いである。
彼の店には、多くの道具が置いてある。それらのほぼ全てはちーのが愛情込めて作った魔道具だ。
しかしながら、街の端にひっそりと立っている店であり、その上客となる対象は魔法使いだけと限定的なので、全く持って客が来ず、その過半数が売れない。故にこうしてカウンターに突っ伏す日々が続いているのだ。
「はぁー……みんなええ子なんになぁ」
そんな独り言をこぼしていると、カランコロンとドアベルが鳴る。
知人が自分を訪ねに来たかと思い体を伏せたままで見遣れば、見たことの無い黒ローブの男が入店していた。
「え?あ!い、いらっしゃいませ!」
ちーのは突っ伏していた身体を急ぎ起こし、客に歓迎の言葉をかける。
「ステキな魔法の道具屋…って、魔具売ってるって解釈でいいんすか」
男の声はまるで若草が揺らいで擦れ合うような、乾いているが、聞き心地は悪くない不思議な声質だ。
ちーのは愛想よく、しかし少し胸を張って答えた。
「ええ、ええ。勿論、その通りでございます!何から何まで揃っております故、満足していただけることと存じます。」
「…そっすか。じゃあ、この身体能力増強のポーションと、あと、箒ってありますか?」
「かしこまりました!少々お待ち下さい!」
ちーのは男の注文にこくこくと頷きながら答え、後ろの倉庫から何本か箒を取り出してカウンターに並べる。
「どの子もよく飛べますけれど、どれにするかはお客様が選ぶのが1番だと思います。箒は魔法使いにとって相棒みたいなもんですからね」
そう言われた男は少し顎に手を当て箒を品定めするように眺める。そして、心に決めたように、1本の箒を手に取った。
「じゃあ、穂先が綺麗なこれで。」
穂先が綺麗、という言葉に、造り手であるちーのはもちろん喜んだ。
「かしこまりました。ではそちらの2点のみで宜しいでしょうか?」
「はい」
「ありがとうございます。それでは、お会計ですが…」
数枚の硬貨を手の上で並べて数えたちーのはにっこりと笑って「丁度、お預かりします。また来てくださいね」と男を見送る。それに男も「ん」と、悪くは無いと言える反応をした。ちーのの店の未来が少し明るくなったように思えるだろう。
さて、彼、ローブの男が去り、ちーのの店は再び静寂に包まれる。滅多に来ない客が一人来ただけで盛りあがっていた自分が野暮だったのだろうか?と、ちーのはハッとしたことだろう。
「ん”〜っ、来ないなぁ。さっきの人が来て、もっと来るかも〜って思ってたけど…そんなこと無さそうだなぁ。」
と、肩を落として呟く。しかし、そんな時こそ何かが起こるものだ。
カランコロンとドアベルが鳴る。期待の目を向けたドアの前には、見知った顔がふたつあっただけだった。
「なんだよもぉ〜トントン、鬱先生!」
ちーのはむすりと頬を膨らました。
「いや、すまんな。普通の客やのぉて」
と、双葉のように二股のアホ毛が特徴的で、下重心に紺色の髪を跳ねさせた、気怠げな瞳の”鬱先生”と呼ばれた男は手を顔周りでひらひらと振って笑う。
「せやぞ〜?ちーの!」
“トントン”と呼ばれた、パッチワークのデザインが施されたニットを被り、同じくパッチワークデザインのシャツを身にまとった、頭の上から顔の着いたキノコを生やす童顔の男も、にか、と笑ってちーのに寄った。
「来てくれるのはええけど、ホンマにお客さんかと思って期待してまうやん。」
呆れるちーのに鬱先生とトントンは顔を見合せ悪戯な笑みを浮かべる。
「そないな事行ってちーの、俺らが知らんわけないやろ?」
鬱先生とトントンは愚痴るちーのに向いにやりと怪しげな笑みを見せた。
「なに、何の話?」
「さっきまで!この店に知らんローブの客が来てたやないか!」
鬱先生とトントンは見ていた。店の階段を確実に上がり、新品の箒をうっそりと眺めるローブの姿を。早速使おうとでも言うように、階段をあがりきって直ぐにその箒で飛び立った姿を。
「まあ……そうやね。」
ローブの彼の姿とその声を思い出し、ちーのははにかむ。客人の退店後の様子を聞かされ更に顔を綻ばせた。
「これを機に、客もっと増えるとええな」
トントンはいつの間に魔法使いの象徴のような帽子を脱いだちーの頭を撫でる。唐紅がさらりと揺らめき暖色の灯りを映した。それと共鳴するかのごとく、ちーのは目を細めて笑う。
「ふふ、せやねぇ」
そんな顔をするちーのをみるのは実に久しぶりのことであった。それ故だろうか。トントンと、鬱先生の顔が、一瞬驚きに見開かれ、そしてぐしゃ、と笑顔になったのは。
それから実に2ヶ月の月日が経った。あの時トントンが口にしたの望みはまだ叶ってはいない。しかし、ちーのの店には確実に以前よりも高い収入が入っているのだ。それは何故だか。その原因がいつも通り、もう少しすれば来るだろう。
からんころん、とベルがなる。
「いらっしゃいませー」
彼は、初めてやってきたあの日からここの常連となっている。2回目に来た際には真っ先にちーのに「この箒は今まで使ってきた箒のどれよりも飛びやすかった。」と感想を言ったほどには、この店の品を気に入ってくれたようだった。
「…どうも」
しかし、今日の彼はどうも様子がおかしい様で、ふらついて、商品に覆われた壁に寄りかかった。
「ど、どうされました…!?」
ちーのが駆け寄れば男は荒い呼吸を繰り返し、苦しげに言葉を紡ぐ。
「ここに、来る前…森でビーストに襲われて……それで…回復薬が欲しいんですよ…」
よく見れば、男が歩いてきた道に男から滴ったであろう血液が残っているでは無いか。それを見たちーのは顔色を変えて頷いた。
「はい。すぐにでも…!」
店の棚からエメラルドグリーンの光を放つポーションを取り出したちーのは今にも倒れてしまいそうな男にそれを手渡した。
「……はー……ありがとうございます」
男はそのポーションを飲み干せば、その声色からは苦しそうな雰囲気は消えた。相変わらずのローブで何もかも隠しているため傷やら顔色やらは伺えないのだが。
「では、俺はこれで」
男はポーション代をカウンターに置き、ドアの方へ向かった。それをチーノは止めようと手を伸ばす。
幾ら、回復薬と言っても自然治癒を促進させる程の力しかない。血が何滴も滴るほどの傷となれば今から動くのは危険だ。もう少しここで休んで行った方が良い。そう、言おうとしたのだ。
けれど、少し遅かった。ドアの前までやってきた所で男は後ろ向きに倒れ込んだ。後ろから追いかけていたちーのもそれに押しつぶされるが如く床に倒れ込む。
「いった…ッ…っ大丈夫ですか?ちょっと!」
ちーのは男の下敷きになりつつも慌てて呼びかける。答えてくる様子はない。
「参ったなぁ…」
男の体に負担がかからないようにとしつつその下から脱したちーのは男を抱え、店を後にした。
なにぶん小さな店な訳で、人をまともに寝かせれるような場所はない。だからちーのは今日は店仕舞いにして男を自分の家に運ぶことにしたのだった。
勝手に運ばれて、迷惑がられるだろうか。自分と彼はただの店の店員と客な訳だし…なんて思考も過ったが、ちーのに男をそのまま放置しておくことは出来なかった。
「んー……これでええか」
男の体を自身のベッドの上に乗せ、ちーのは息をつく。彼の傷の具合によっては今すぐにでも治療がしたいため、申し訳なさを感じつつも男からそのローブを剥いだ。するとどうだろう。通常よりも早く傷が癒えているはずなのに、赤い。赤黒い血肉が嫌でも目に入った。これはまずいと直ぐに魔法薬やら包帯やら何やら自分に出来る目一杯の治療を施した。一通り、治療が終わりちーのはまじまじと男の顔を見る。男は濃色の髪を頭の丁度真ん中で分けており、その綺麗な額がよく見える。そして、その髪型によく合うつり目がちでまつ毛が目立つ瞳と凛々しい眉、少し乾燥した薄い唇…と、声を聞いて想像していたよりも幾分若々しく見える為、ちーのは少々驚いた。想像は自分と同い年か、少し上くらいだと思っていたのだ。これは世間様の目が怖いなぁ、なんて冗談を頭の中だけ言って、ちーのは男に薬を塗ったり、包帯を巻いたり、治療し始めたのだった。
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最近、お気に入りの店ができた。港町の端、追いやられるようにある小さな店。そこに初めて入ったのは、その店のほぼ真上で箒が壊れてしまったという偶然に過ぎない理由だ。けれど、俺はその店が好きになった。そこの商品は他の市販品と違い唯一無二で、効力も抜群。箒も操作しやすくて、それでいて頑丈。なにより、店員の人当たりが良く、また来ようと思えた。自分が、人に好印象を受けて、その店に通おうだなんて思ったことは初めてだったから、とても驚いたことを覚えてる。それから、何か魔具が欲しい時はその店に行くようにしてた。今日もそうだった。森の中、強力なビーストに攻撃されて重傷を負った。傷ついた腹が焼けるように痛い。彼の店で買った箒に連れていかれるように店に入った。そして事情を説明すれば、彼は直ぐに薬をくれた。とても心配した顔をして。その、心配そうな顔を見ていられなくて、そんな顔をさせてしまうのが申し訳なくて、逃げるように店を後にしようとした俺はそのまま…
「……ここは…?」
倒れ込んだ後、どれほど経っただろうか。俺はすっかり月明かりに照らされた部屋のベッドに寝かされていた。
自分の体を見遣ればほぼ裸。最初こそ驚いたが、その腹や手足に巻かれた包帯で、誰かが自分を治療するために服を脱がせたのだと気がついた。
「あ、目覚めました?ちょうど夕食を持ってきたところです」
その部屋の戸を開きやってきたのはよく行く店の店員だ。その手にはスープ皿とパンが乗ったお盆を持っている。
「部屋、暗いですよね。今灯りを付けますから」
彼はいそいそとベッドの直ぐ側にある小さな机の上にお盆を置くと部屋の明かりのスイッチを引いた。
カチ、と音がして電球が明るく暖色の光を放つ。彼はそのまま慣れた動きで月明かりの見えた窓にカーテンをかけた。
その姿は、いつも店で見る姿とは異なり、薄いシャツと薄いズボン、なんとも寒そう…というか言っては悪いが貧相な格好だ。彼は意外にも売れていないのやもしれない。
「ごめんなさい。僕の回復薬では傷が治りきらなくて…暫くは傷は塞がらないと思います」
一般的に回復薬とは傷を治す薬ではあるがその効果を細かく言えば自然治癒を速める薬。いくら速めたところで限界があるわけで、自分は全然治ってないのに動き始め、意識を失ってしまったのだろう。なんとも恥ずかしいことこの上ない。
「いえ、あなたが謝ることでは無いです。薬のおかげで幾分楽になりましたから。こうして運んでくれて…治療を施したのも貴方ですよね。ありがとうございます」
そう、素直に思ったお礼を言えば彼は照れくさそうに頬を掻いた。
「これ、夕食、少ししかないですが…どうか冷めやらぬうちに召し上がってください。」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
そのスープは暖かく、ずっと続けた一人旅で冷えた心を溶かすのには十分すぎた。パンだって少しばかり固いが美味しい。しばらくすれば直ぐに食べ終わってしまった。
「あの、ぼくちーのっていいます。チーノ・T・ポーノと…あなたの名前も伺っても宜しいですか?」
「俺、俺はショッピです。ショッピ・アロウといいます。」
「ショッピさん、ですね。」
「はい。」
彼はそれから暫くの間俺の傷の具合を心配し、大丈夫だと分かれば安心したように笑ってくれた。そしてすぐ、「明日!」と大声を出す。その先に続く言葉を聞けば、「明日まで動いてはいけませんよ!そして、そこまで傷が深ければあと一、二週間は激しい動きをしたら傷が開きますからね」と、そう言った。それに分かったと了承すれば彼はすぐに顔を綻ばせる。そして、また来ますと微笑んで部屋を去った。
ちーのさん、良い人だ。ただの客の俺にここまでしてくれる。あんなに眩しい笑顔を見せてくれる。彼に好印象を持って、そして、俺は彼に幸せになって欲しいと強く思った。
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「ちょっと、ショッピくん。今やってるの結構ミスったら不味いやつだからちょっかいかけないで〜」
ちーのがショッピを助けてから、早くも半年が経った。その半年、ショッピはちーのの店に入り浸っていることがほとんどで、もう、ただの客と店員の関係は裕に超えている。実際今だって、店の奥の扉の向こうにある薬草や木や紙やら沢山の魔法道具を作る部屋に、ショッピが入っていてもちーのは怒りもしない。
「えぇー、ええやん。大丈夫やってちのさんこんくらいで失敗せんもん」
「いや、分からんやろ。今こうしてる間にも俺の可愛い魔法薬ちゃんが床に〜、あっ!」
ちーのがわざとらしく短い悲鳴を上げて魔法薬を少量床にこぼす。床に散った魔法薬はすぐにゴポゴポと音を立てて床を溶かして行った。
「な?危険やからやめてな」「ハイ」
素直に退いたショッピに「よろしい」と一言送り、零した魔法薬と溶けた床を片付ける。
ちーのの背から退いたショッピはむすくれて近くの机に寄りかかる。さすれば綺麗な髪がさら、と靡いた。
「ちょっとくらいええですやん」
「あかん。集中できへんもん。質の悪いもん作ってまったら魔法薬にもお客さんにも失礼やろ」
正論を言われ、ショッピはぐうの音も出ない。
「また今度な。」
不敵に笑うちーのに、不意打ちの仕返しにショッピは少したじろいだ。
「……変なちのさん」
ショッピに1発食らわせたと思ったちーのは小気味よさそうに笑い、再び作業に徹する。その横顔は、真剣そのもので、先程までのおふざけが嘘かのようだ。そしてショッピもちーののその様子を静かに見ているだけ。暫く、無言の時間が続いたが、2人にとってそれは全く苦では無かった。
そして、久しく口を開いていなかったちーのが口を開く。
「あ…薬草足りひん。取ってくるからショッピくん、店番よろしく」
「……えぇ?俺ただの客なんやけど…」
言い終わる前にちーのは「じゃ!」と部屋を出ていってしまった。
仕方なし、とショッピは扉の外、店に戻り、普段はちーのが構えているカウンターに自分がかける。
外はいつの間にやら雨だ。ショッピが店を訪れた際には降っていなかった上に降ってくるような気配もなかった筈だが、そこまで時間が経っていたのだろうか。それとも、唐突に降り始めたのだろうか。どちらにせよ、森に薬草を取りに行った彼のことが心配だった。
暖かな光と彼の作った魔具たちに囲まれ、ショッピはうつらうつらとしてくる。そうして少し伏して寝ようかと考えていた最中、カランコロンカラン!扉が勢いよく開いて、外の冷たい風が一気に吹き込んでくる。それと共に、入口付近には水滴が何個も何個も打ち付けた。
「ちのさん…!?」
そんな風と水滴と共に店に入ってきた人物、それは雨の降り頻る外を出歩き、雨にすっかり濡れたちーのだった。髪や服が濡れそぼっていて、今すぐにでも凍え死んでしまいそうにみえる。ショッピは急いでその姿に駆け寄った。
「ちのさん、雨具とか持ってなかったんですか!」
「もって、ない……だって、急に降ってきたもん」
ちーのは弱々しくそう答える。そしてフラフラとショッピに寄りかかった。
「さむい」
「!タオル出しますよ」
ショッピはさっと魔法でタオルを出してちーのを拭く。
「いいよ、自分でやるし…」
「だめです、俺がやります」
謎に自分がやると主張するショッピの圧に押されちーのは大人しくなる。「……わかったよ…」
と不服そうに言えば、ショッピはにっこりと笑う。
「服濡れてますね」
新しい服を魔法で用意される。
「髪の毛も完全に乾かしちゃいましょ」
炎魔法と風魔法の同時発動で温風を当てられる。
何だか暖かくて、安心してしまう、ちーのは密かにそう思った。
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「……できた」
と、ようやく終わった頃にはちーのは気を失うように眠りについていた。
「……無防備な人…」
半年前は同じように彼の前で倒れ込んだ自分が言えたことでは無いのだが、そう思わずにはいられない。彼はこうして眠っているが、この眠り顔を晒しているのが自分では無い誰かだったら?そうしたら彼はどうなってしまうのだ?もしも彼がそうして誰かに脅かされたら、自分は耐えられるのだろうか。
「……後味は悪いやろな」
彼を守りたい。自分の気分を害さない為にも。
そう、自分は意外にも面倒見が良いと言われるのだ。きっと彼にもそのお節介が働いてしまっているだけなのだ。そうに違いない。
「……」
けれど、どこか熱を帯びる己の顔に、むしゃくしゃして前髪を握りつ潰した。
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ふと目を覚ますと、ちーのは自宅の天井を見つめていた。ショッピにせっせと世話を焼かれているうちに、寝てしまっていたか、ショッピはどこであろうか、そう周りを見渡す。
そうすると、控えめに椅子に座りこみ腕を組んで寝ているショッピを発見した。
「こいつ、ここまで運んでくれたんか…」
ちーのが寝起きの声を上げるとショッピもパチと目を開ける。
「あ、起きましたか。おはようございます」
ショッピは嬉しそうに口元に項をうかべる。そして次に、家に勝手に入ってしまったこと、店を勝手に閉めたことを詫びた。
「いや、ええよ。俺こそいつの間にか寝ちゃってたみたいで…起こしてくれても良かったけどそのままにしてくれたんだもんね。ありがとう」
まさか、礼を言われると思っていなかったショッピは目をぱちくりさせる。そんなショッピを無視して、ちーのは軽く伸びをして立ち上がった。
「もう夜だ。雨はまだ降ってるね。泊まっていく?」
暫く硬直したショッピは、ようやく口を動かしてYESと答える。どうしてそこまでぎこちないのか謎に思いながらもちーのは事を進めた。
「風呂は湯がもったいないから一緒に入ろうね」
「……アホなんですか?」
「ソファが狭くてごめんね」
「俺が椅子に座れば済むことですけど」
「ベッドはひとつしかないから一緒に寝よう」
「あー!もう!!ちーのさん!!」
「ん?なに?」
あんたは俺を挑発してるのか!喉まででかかったその言葉を既で押込めるショッピ。ちーのは不思議そうに小首を傾げた。
「はぁ…ちょっとはこっちの気持ちを考えてくれます?………分かってはいると思いますけど、俺は……男な訳で」
「……うん?」
「警戒とかしないんすか?その…そういう趣味のやつも最近増えてきてるし…同性だから安全だとは言えないっていうか…」
どんどんショッピの言葉尻が小さくなっていく。これではまるで、自分で自分を同性愛者だと言っているような言い草だ。それは断じて違う。自分はそういう趣味じゃない。ただ、ただ…
「んー、と……?ショッピくんは、俺に気があるわけ?」
「え”!?いや、ちがッ…う……のか?」
「え、違うの?」
「いや……えっと……それは……」
煮え切らないショッピにちーのは首を傾げる。
「違うならいいじゃん!それに、もしもショッピくんが俺をいやらし〜目で見てたとして…別におれはショッピくんならいいから」
「え?」
「だから、俺はショッピくんが俺のこと好きで一緒のベッドで寝るなんてどうにかなっちゃいそう〜って言うならいいよって」
にこ!と自信満々な笑みを向けられて呆気にとられる。ちーのは思った以上に自分の事を信用しているようで……というかむしろこの笑みで確信犯なのかもしれないと思い直す。
「俺は、本気だよ」
ちーのはそれだけ言ってふい、とそっぽを向く。それは思わせぶりと言えばそうだし、ちーのからショッピへのアプローチだとも言えるだろう。
「ちのさん……」
「なに?」
ショッピが声をかけると、ちーのはそっぽを向いたまま返事をする。その態度に腹が立ったショッピは少しばかりちーのの手を引いた。チーノがこちらを振り向く。目が合い、ショッピは決意を固める。
「俺は、あんたのことを守りたい!幸せでいて欲しい!!好きだよ!嗚呼、好きだとも!!」
「ふふっ」
ちーのは突然笑い出す。そんなちーのに戸惑うショッピ。ちーのは笑いながら、頬から耳までを一気に赤らめてまたそっぽを向いてしまう。そしてやっと口を開いたかと思えば
「ありがとう……おれも、すき…」と、小さく呟いた。それにショッピが笑ったのを見ると「……俺はもうねる!!」と、それだけを言って布団を頭まで被ってしまう。そして、もう何も言わなかった。
一方ショッピは、口をついて出た言葉を脳内で反芻していた。好き、好きか。自分がちーののことを、好きだと。
「まじか……」
1度言葉にしてしまえば、もう自分の気持ちに嘘はつけない。自分は彼のことが恋愛的な意味で好きになってしまったようだ。
全くもって、納得ならない。ただの店員と客がこれほどの関係にまでなるなんて誰が予想できただろうか?否、誰もできなかったに違いない。現に本人だって現状を疑っているのだから。
そもそも、ショッピは1人を好み、1人で旅を続けてきた。誰を好きだとか、大切だとか、そういう感情には慣れていない。これが恋愛的な好きなのか、友情的な好きなのかも手探りでしか感じられない。けれど、友人に心打たれて心臓が早くなるなんて聞いたことは無い。きっと、これは恋愛だ。そう結論づけたショッピは溜め息をつき、自分も布団に入り、眠りについた。
「「ちーのに!?ボーイフレンド!?」」
声を合わせて叫ぶトントンと鬱先生を落ち着かせるちーの。けれど、2人はいくら宥めても収まらない。
「しかも相手はあの時のローブやと!?」
「大丈夫なんか?ちーの!あのローブに脅されでもしたんや…」
「え?いや違うよ。ショッピくんはそんな事せん」
鬱先生の問いかけに応じたちーのの言葉に2人はもっと取り乱す。
「ショッピ!?!?今ショッピって言ったんか!?」
「え?うん。」
「うわ……まじか……」
「いや、まだ決まったわけじゃ…」と小声で呟いたトントンと鬱先生の言葉はちーのには届かない。そして、暫くして眉間に皺を寄せたトントンが遂に口を開いた。
「……そいつの…苗字は…もしかしてアロウとか言わへんやろな…?」
「え?なんで分かるん?もしかして、知り合いかなんか?」
ちーのは首を傾げた。何故知り合い?と、不思議そうな顔をしているが、2人からすればもう倒れてしまいそうなほど衝撃的だった。
「そ、そ、そ、そいつは…ッ世界的に見ても5指には入る____!
カランコロン、ドアベルがなる。
「あ、今ちょうどお前のこと2人に話してたんやで!」
「やほ、ちーの。あの2人が話してたトントンさんと、鬱先生か。こんちは」
ショッピは今日も今日とてこの店に来る。見た目は至って普通のローブを羽織った青年。けれど、その姿を認めれば鬱先生は腰を抜かし、トントンは後ずさる。正直言ってもう生きた心地がしない。彼が指をひと振りすれば自分たちの命はおろか、この港町が全て吹っ飛んでしまうのだ。
「あ、ドウモ……えと、君…は、ちーのと、あー、友達……なのか?」
恐る恐る問うトントンに鬱先生は絶句する。そして、そこに追い打ちをかけるようにショッピは首を振る。
「恋人っすけど」
「「えぇぇぇぇ………」」
またも声が揃ってしまう。もう2人とも限界だ。そんな様子を見ていたちーのはキョトンとしている。
「えーと、2人は何にそんなに驚いてるワケ?」
「いや、お前…だってそいつ…ショッピ・アロウって世界レベルの上級魔法使いやぞ!?しかもドがつくほどの人嫌い!!そんなやつと、こ……恋人って……」
2人はちーのに説明しろと目で訴える。しかし、ちーのはそんな視線も気にせず呑気に茶を啜っているのだ。
「さすがやなショッピ。世界に名を轟かせて、しかもあの鬱とトントンを飛び上がらせるなんて」
「せやろ。もっと褒めてもええんやで」
ぐっ、とグータッチをする2人を唖然とみている鬱先生とトントン。もう、何を言っても無駄なのだと2人は悟った。
「まぁ……幸せならええよ。別にショッピくんが強いってだけで付き合っちゃダメとか意味わからへんし」と、鬱先生。「そうやな……」と、トントン。
それを聞いて、ちーのもショッピもにっこり笑った。
港町の端、隠されるようにひっそりとある店。その店の看板にはこの国の文字で「ステキな魔法の道具屋」と書かれているようだった。
「いらっしゃいませ。」
店の中、カランコロン、とベルが鳴る。沢山の足音が聞こえる店内は暖色の明かりに照らされている。
店の奥の部屋に構えているこの店の店長が作った魔法道具で覆われた壁は、所々壁の色が見えている。
「この5点でよろしいでしょうか」
会計するのは、濃色の髪をセンターで分けた好青年。手のひらの上で銀貨の枚数を数えると、にっこりと口元だけを笑わせて「ちょうどお預かりします。」そう言った。客は少し頬を赤らめ、店から出ていく。それを好青年が見送り終わったところで、青年の後ろの扉が開かれた。
中から出てきたのは唐紅の少し長い髪を後ろで結った男。この店の店長であった。店長は、青年と楽しげに話すと、すぐにどこか店の外へ出ていってしまった。
「今日は、雨が降らんといいけどね。」
青年のその声は、店の中の五月蝿さにかき消されて誰の耳にも届かずただ、暖色の天井に溶け込んで行った。
聞 い て ‼️‼️‼️‼️
やっと!やっと念願の1万文字行けたー!!!
嬉しい😭
まあ、普段と違って場面が何個も何個もあるから文字数も必然的に増えただけだけど: (
でも嬉しいもんはうれしい!!わぁい!
やっぱりファンタジーは描きやすいね!うんうん。
それと、ちのーんと鬱先とコーラさんがモルカーの声優になった話、みんな聞いた?
多分wrwrd時代に受けた案件なんだろうけど、しっかりまじヤバ所属とかチーノ→ちーのとかロボロ→コーラとか表記も立ち絵も変えてお知らせしてくれててありがたいよね。ほんと、wrwrd側の対応がカス過ぎて他の企業が当然とも言える対応をした時に嬉しくなっちゃう。だって、今wrwrd表記でゲスト売りしたとしてもう抜けたメンバー、意味をなさないビジュアルでモルカーはそこまで集客効果ないだろうし、まじヤバ個人の表記の方が絶対モルカーには得だし。もしもwrwrd表記だったらそれはモルカーの案件の権利?というか提供者?がwrwrdになってた場合だと思う。案件の権利取られてたらきっとwrwrd表記の旧ビジュだったんだろうなぁ〜。
まあ、モルカーの収入がwrwrdじゃなくて各個人に入りそうなのが嬉しいね。
我は日曜日見に行くなり🚗たのしみ!
体調不良で咳めっちゃ出るから、映画見に行くまでに治さねば…
じゃあ、こんなもんかな。終わるよー
おつぐれ!