*太郎太刀視点
主__柘榴様はとてもお優しい人です。
だからこそ、心配なのですよ。本丸でも、演練場でも、すぐに男と親しくなるから…
あの時。長谷部の頭をあの可愛らしい手で撫でたあの時です。心の底から炎が湧き上がって来るかのようでした。怒りなのか。これが嫉妬というものか。
最初は我慢していました。柘榴様が他の男士に話しかける姿をみて、心には霧がかかるようでしたが。
…でも、1年経つ頃には我慢も限界になってきました。あの方が他の男に触れる度、私の中の炎は大きくなっていき______
____その日、激しく燃え盛りました。
ああ、柘榴。私の可愛い柘榴。逃がしません。
もう、貴女を汚すものは、触れるものは、何びとたりとも許しません。
真っ暗な廊下で刀を握りしめながら立つ太郎太刀を、とある人物が見ていた_________
「はあっはあっはあっっはあっはあっ」
廊下に足音が鳴り響く。うるさい。うるさいはずなのに……
今は、そんな音だって聞こえない。
どうしよう。こんなつもりじゃなかった。
たすけて。あのひとはあんなひとじゃないはず。
違う。違う。だれか、たすけて______
私は一心不乱に走り……
ついに、何かに躓いた。
「っ!!!!_____」
「……じ……るじ……………主!!!!」
どんどん近づいてくる声に、意識が遠のいていく中、其方を見た。
長谷部だった。
「は…せ、べ……?」
「ああっ!!主、なんてことだ!!!しっかりしてください!!!!どうか、どうか…!!!」
汗を滲ませながら長谷部は懇願する。
こんな長谷部、初めて見たな。なんて、呑気に私はぼんやりした視界の中で思った。
走りすぎたのだろう。脳に酸素が行き届いていない。頭がクラクラする。
「___あいつめ……太郎太刀…っ!!!」
「たろ…う…たち」
ガバッ
長谷部の一言で私は一気に目が覚めた。
そうだ。こんなことをしている場合じゃない。
のんびりしていたら、あのひと……太郎さんに、捕まってしまう。
「ごめん、長谷部…私、行かなきゃ」
「待ってください!!主……」
パシっと手を掴まれ引き寄せられる。
「……実は、お慕い申しているのです」
「…はっ?」
「申し訳ありません。今、この場で言うようなことでは無いと。理解はしているのですが…」
驚きで身体が固まる。
「…ですから、あんな奴に取られたくない…!!!!」
長谷部の言葉からは切実さが伝わってくる。
しかし
「………ごめん。長谷部。…私は、誰のものにもなれれない」
「……主…………っ!!!!」
長谷部が腕を緩ませた瞬間、私は飛び出した。
ごめん、長谷部。ごめんね。でも、やっぱり誰のものにもなれないの。
…本当は、本当は、太郎さんのことが好きだった。
なのに、今は愛おしいなんて感情は無くなった。
ただひたすらに恐ろしい。あのひとがあんな顔をして迫ってくる様子を、初めて見た。
「……っ逃げ、なきゃ」
疲れきった足を一生懸命動かす。
捕まる訳にはいかない。きっと、太郎さんも何か取り憑かれているんだ。妖怪かなにかに。
「はっはっ__」
ポンッ
「あるじ」
おわった。おわった。つかまえられる。
「…主、怖がらないでください。」
やさしい、やさしい声が廊下に響く。
「捕まえた」
ぱたん
《次のニュースです。先日、備後国サーバーの睦月本丸の審神者が行方不明になりました。付近では調査が始まり、近隣の審神者も協力しているそうです___》
やだー!こわいね、神隠しってやつでしょ
大丈夫かなー?
助かるといいねー
刀剣男士に神隠しされると、99%の確率で神嫁にされるらしいからね〜
えーこわーい
うちら気をつけよー
だねー
「愛していますよ、私の柘榴」
永遠に、逃がしません_______
おわり。
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