テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
⚠注意⚠
自殺未遂あり
なんでも許せる人のみ
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
──一人じゃ、死ねなかった。
自分の首を吊ろうとも
立ち止まってしまう。
ナイフを首に突き立てても
刺す勇気が出ずに力が抜けてしまう。
薬を飲もうにも飲み込む勇気も出ずに
吐き出してしまう。
それが、いるまの限界だった。
なつと一緒に死のうとしたあの場所。
けれど、気がつけば、自分ひとりだけが
生き残っていた。
なぜだか分からない。
薬の量だったのか、タイミングだったのか。
でも理由なんてどうだっていい──
問題は「なつがいない」という、
ただそれだけだった。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
雪の中からなつの冷たい体を抱き起こし、
抱えたまま歩き続ける。
なつの身体は異常に軽かったのに
何度も転んだ。
何度も「夢であってくれ」と願った。
でもなつは、何も言わない。
あのまま、永遠に。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ようやく辿り着いたのは、
2人だけの場所。
何度も隠れて帰ってきた、
あの小さな、秘密の家。
逃げるように暮らしたあの部屋には、
なつが笑っていた痕跡がまだ、
そこら中に残っていた。
靴が片方、脱ぎっぱなしで転がってる。
冷蔵庫には、なつの好きな
冷凍クレープがある。
テーブルの上には、半分読んだ漫画が
置きっぱなしだ。
ベッドの上には、2人で丸まって眠ったときの匂いが残っていた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「……帰ってきたよ、なつ」
いるまはそう呟いて、死体を優しくベッドに寝かせる。
髪を撫で、目を閉じさせ、
肩まで布団をかける。
まるで、ただの昼寝みたいに。
その横に、そっと自分も横になる。
抱きしめるように、冷たいなつの身体を
腕に抱いて。
「……起きたらさ、……コンビニ行こうな。
今度は、逃げなくてもいいとこ行こう……」
涙がぼろぼろ落ちても、なつのまぶたは
閉じたままだ。
口元に手を添えてみても、やっぱり、
呼吸は感じない。
──ひとりで死ぬなんて、無理だった。
なつといっしょじゃないと、何もできない。
だから、生きてるしかなかった。
「お願いだから、起きて……なつ……」
でも願いは届かない。
いるまの声が掠れていく中、部屋の外では
また雪が降り始めていた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
スクロール有難うございます。
もうすぐ3周年なんて本当に時が立つの
早いですね。