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キャラ崩壊、kgri.rbri、チャイナパロ、何でも許せる方向け。晒し行為はお控えください。
箱の中には瓶があって 前編 の後編です。先に前編を見ることをおすすめします。
闇市の中、人を掻き分け小走りで道を歩いていると、ふと横目に見知った黒髪を見つけた。すぐ視線を向けると、そこには伊波が居て、何やら手を引かれ路地裏に連れられている。
「伊波っ!」
やっぱりあの男達が見たのは伊波だったんだ。ただの杞憂ではなかった。伊波の手を引いている奴は、どんな顔をしているのかと、卑しい顔を思い浮かべては手の内にある銃を握り締める。
追いかけた先、入り組んだ路地裏の行き止まりに彼は向った。再び名前を叫んで、角から顔を出す。
そこには、藤色の髪の男に押し倒されている伊波を見つけ た。
=-O inm視点
手を引かれるままに歩く。通りすがる大半の人達がこちらをジロジロと見てきて、何だが落ち着かない。けれど星導は気にも留めず、ズンズンと歩き進んで行った。
「ねぇ、何処に連れてこっての?」
「まぁまぁ、悪いようにはしませんから。」
なんて、信用出来ない言葉をはいては、手首を握る力を強められた。痛い。と言えば、握った手を若干緩めてくれる。
ただ流されるままに路地裏に来て、ついた先は何もない行き止まり。
「何ここ。通り抜けられる壁でもあんの。」
そう冗談めかしに言う。けれど、何も反応をもらえなくて、少しむすっと頬を膨らませた。ねぇ。と声を掛けようと、肩に伸ばした手を、もう一度握られる。今度は痛いと言っても、緩めてはくれなかった。
「ちょっとっ!何急にっ。」
「プレゼントを渡すんですよ。」
星導は口角を吊り上げ、素早く懐から何かを取り出し投げつけた。鼻先に当たった瞬間、弾け、ピンクの煙が舞う。咳き込んでる間に握った手首を壁に縫い付けられた。
「プレゼントは、嫌でもアツくなっちゃう不思議なお薬〜。 解消させてあげましょうか?」
「気持ちだけで十分ッ!!」
ちゅっちゅと口をタコにして、キスを強請る。この手の煙には多少耐性があり、顔がほてる程度ですむ。その為、路地裏でそんな事出来る程思考力は落ちてい無く、両肩を押して出来る限り顔を背けた。
「さっきまでのミステリアスオーラは何処行ったんだよ!」
「失礼ですね、今でも健在ですよ。」
「な訳ないだろッ!!」
攻防戦を続けていれば、何が因果か、体勢を崩し そのまま二人して床に倒れたのだ。不幸にも、星導に押し倒されたような体勢になる。
「いたた…」
「伊波っ!」
強打した背中を擦っていると、ふいに自分を呼ぶ声が聞こえ、星導の腕の向こう側に視線を向けた。そこには、息を切らした様子のカゲツが立っていて、目を見開いていた。
「カゲツ !?」
何で彼がここにいるのとか、何で切羽詰まった様子だったのかとか、そんな事を考えるが、それよりも前に、この体勢を見られたという事が非常に不味く、何も言わず瞬きすらしないカゲツに、どうにか弁解しようと、言葉にならない声を上げた。
「えと…これは…その…全部星導が悪くて…。」
「え? ちょっとライ?」
そう目の前の男を指差して苦笑いを浮かべてみる。何か反応を貰えないかと、少しの間が流れる。カゲツがふっふっと息を吐いてばかりの口から、あ…。と声を上げた時。ザッ!と素早く懐からなんと拳銃を取り出した。
「やっ……あっぶない!!」
星導の首に腕を回し強く引いた。肩を地面に打って、少し腰が跳ねる。バンッ!と銃声が鳴った後、星導の頭があった個所の壁に小さな穴が出来て、少しの煙が吹いていた。
「いなっ…」
カタカタと金属が震える音が鳴り、カゲツは拳銃を握った手を震わして、ぐらぐらと目を回した。
「伊波から抱き着いたッ!! うわっ、ああッ ああ!!」
そう言って、拳銃を強く握り直す。銃口は、伊波と星導どちらを撃つかで揺れている。
「カゲツ落ち着いて、これはっ……お前、どさくさに紛れて抱き着いてんじゃねぇよ!」
いつの間にか、腹回りを強く抱擁されていて、星導の服の襟部分を引っ張った。が、このタコ中々剥がれない。
「………邪魔された。」
小さく、呟く声が聞こえた。瞬間、星導の髪がみるみる変形していき、ミチミチと音を立てて、三つ編みを結んでいた結い紐が千切れた。髪から触手に変わり、1本の触手がカゲツの顔面を強く叩いた。その衝撃でカゲツは倒れ、手の内から拳銃が滑って遠くへ行く。
「カゲツっ!」
急いで駆け寄って見ると、意識を失っているようで、顔に赤く吸盤の跡がついていた。
「その人が同棲中のカゲツさん? ライって、ちょっと男と密着してるだけで撃ってくるような人と一緒に暮らしてるんですか?」
「……同居ね。」
嫌味ったらしくっ言ってきた言葉に対し、反論もできなかった。
星導は、カゲツが落とした拳銃までスタスタ歩き、拾い上げると、銃弾を全て抜いて元の場所へまた落とした。
ガチャンっと、銃が床に跳ねる音が鳴った後、カゲツは顔を顰めてすぐ目を覚ました。
「あ、カゲ…」
声を掛けようとしたが、カゲツは直ぐ様起き上がり、流れるように拳銃を拾い上げ、星導の頭を抑えつけた。
わずか数秒の事で、反応できず。星導はそのまま地面に倒れる。眉間に銃口を突きつけられ、迷いなく引金をを引いた。
しかし、引くこうにも途中で詰まり、カッカッと軽い音を鳴らす。
不可解な顔をするカゲツに、星導はおもむろに手の平から銃弾を落として見せた。そして、してやったりと言うような顔をする。が、次の瞬間に、拳銃で頭を殴られた。
「いッッ…たぁい!?」
そう星導はぶたれた個所を擦る。絶対タンコブ出来た。
「カゲツ、落ち着いて…!」
カゲツを羽交い締めにして、動きを抑える。何とか状況を説明しようと、暴れる手足に対抗しながら、口を開いた。
X-* kgt視点
路地裏で押し倒されてる伊波を見た時、頭が真っ白になった。何が音を立てて崩れていく感覚がして、視界が、伊波と男以外真っ黒になって何も見えなかった。
ハッとして、ちょっとでも思考が回り始めた時に、男を撃たなければと思ったのだ。全然冷静じゃない、パニック真っ最中だった。そんな中で、もっと密着されて、伊波の方からともなれば、ぐるぐると目が回った。もうどっちを撃てば良いかも分からなくて、震えている時に顔面に強く触手でぶたれた。
今になると、そのぶたれた衝撃のおかげで少し冷静になれた気がする。今すぐにでも目の前の男を殺してしまいたいが、伊波の話を聞く事にしたのだ。
「………で、こうなったって訳。」
「浮気やない?」
「…え?」
「そもそも、他の男とデートしてるってのがおかしい!てか、何で闇市までノコノコついて行ってん、普通ここ来た瞬間ヤバいとか思わんの?」
限りなく正論をぶつける。伊波は口を閉じ、目を逸らした。そして額から冷や汗が流れている。もっと色んな不満を言ってやろうと、口を開いた時、待って!と手の平で止められた。
「言い訳さして? その……デートに関してはぁ…ビジネス、仕事?だからぁ…」
「えぇ!俺とライはビジネスカップルって事!?」
「ちょっ、お前は黙ってて一回。」
「ノコノコここまで付いて来た事に関しては、ね……オレの危機感がぁ…足りてなかった、かも。」
「かもやない。絶対 足りてない。謝って。」
「………ごめんなさい?」
そう上目遣いに呟いた。何でも上目遣いすれば許して貰えると思っているのだろう。大きな目をパチパチさせて、最近知った小悪魔のような人間とは、伊波の事を言うのだろうと思いながら罠に掛かる。けれど、いいよ、許すよ、何て決して言えず、ぷくっと頬を膨らませて黙り込んだ。もう絶対許さない程イラついている訳ではないが、全て流せる程の時間は、まだ経っていない。
「カゲツが一番だよ?」
そう言われれば、思わず顔をあげてしまう。まるで魔法の言葉だ。嬉しいけれど、少し痛い。
「よく、俺の前でそんなイチャラブ出来ますね。」
そう、三つ編みを編みながら星導は呆れたように言った。とぼとぼと歩いて近づいてくるもんだから、これ以上近づくなと言う意味を込めて思い切り睨みをきかせる。星導はお〜怖い怖いと、思ってもないのに笑いながらそう言った。
「星導、オレ今日はもう帰るよ。」
「えっ。」
「そろそろ良い時間でしょ? 後カゲツに見つかっちゃったからさ。もう続行は無理だと思うんだけど。」
「全然、僕二人の後ろ付いてくよ。」
「本人もこう言ってるし…。」
星導は編んでいた指を止め固まった。指先からするりと藤色の髪が流れる。
「え〜!!やだぁ! やだやだ!」
「わがまま言わないの。」
「やだやだやだ! まだライと一緒にいたい!」
地団駄を踏み、駄々をこねる。急な幼子見たいなムーブに、怒りを覚えるが、同時に恐怖も湧いた。けれど、ライは慣れた様子であしらっていく。
「くッそ…闇市だったら邪魔が入らないと思ったのに、何で居るんだよぉ……。」
今度はぎりぎりと歯を食いしばって、囁くように呟いた。あまりにも急な切り替えに、冷や汗が頬を伝う。
「…っ確かに! 何でカゲツここにいるの?」
伊波はハッとしてぽんっと手を叩いた。そしてくるりと振り返り、カゲツに今更ながらに問う。
「僕は今日仕事で……あっ!そうや仕事!」
「僕仕事で来てるんやった!!」
「え?仕事ほっぽり出してここまで来たんですか?」
「やって……伊波の姿が見えたから…。」
本当は伊波の噂話が聞こえたからだけど。その時にはもう、仕事の事なんて頭から抜け落ちていた。
「ちょ…待ってて!秒で終わらしてくる!!」
そう焦りながら言ったカゲツは、ランカー選手にバトンが渡ったかのように走り出した。
残った二人の間に、何とも言えない空気が流れる。
三つ編みを結び終わった星導がよし。と呟き、ライの肩に手を乗せた。目線だけ寄越すと、口では何も言わず顔で物語っている。今、時間ありますよね? 待ってる間暇でしょう?とかが、脳内で星導の声で再生された。はぁ…と思わず溜息がもれる。
「ライ。」
「……カゲツが帰って来るまでね。」
そう言うと、星導は心底嬉しそうに笑い、ライの首に腕を回した。そして、ちゅっと額にキスを落とす。
この後、ものの数十分で帰ってきたカゲツにまた脳天ぶち抜かれそうになったのは、別の話。
その日の夜。二人して夕食を食べ終わった後、カゲツが渡したい物があると言った。もじもじとして、ずっと後ろ手に何か隠している。そんな大きな物では無さそうだけど。
「何?それ。」
「あ…えと、プレゼント。いつも世話になってるから…。」
そう差し出されたのは、白い箱で、受け取って中を開けてみると、シルクの中に沈められた小瓶が置いてあった。小瓶の中には琥珀色の液体と、小さな花が浮いている。これって確か、昼間星導が言っていた流行りの……
「……香水?」
「そう、今流行りなんやって。伊波、香水何個も持っとるからもういらんかなと思って………渡すか迷った。」
髪をいじらしく触って、嬉しくない?と不安そうに聞いてきた。確かに、要らないなと思った物だったけど、カゲツが香水を嫌がると思っていたからだし、何よりも、不安そうにしてプレゼントを渡すカゲツが、優しい子だと思うと同時に、可愛いらしいと思った。
「ありがとう。大事にするね!」
そう言うと、安心したのか、息を吐いて微笑んだ。
カゲツのオレへする一挙一動に、愛を感じれて。今まで人に長く愛される事などなかった物だから、ただ嬉しくて、ただただ愛おしい。
箱の中には瓶があって瓶の中には花がある。