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ころさな
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一次審査の結果が届いたのは、応募から一週間後だった。
学校から帰宅し、制服のままスマートフォンを開く。
新着メール、一件。
送り主は――SIXFONIA。
鼓動が一気に速くなる。
「……っ」
震える指でメールを開く。
『一次審査 通過のお知らせ』
「……!」
思わず息を呑む。
何度も文章を読み返しても、書いてあることは変わらない。
「通った……!」
部屋に一人しかいないのに、小さくガッツポーズをした。
夢への第一関門。
その扉は、確かに開いた。
◇◇◇
二次審査当日。
会場は都内にあるSIXFONIA本社。
入口にはテレビカメラが何台も並び、スタッフたちが慌ただしく動いている。
暇72「すご……」
なつは思わず立ち止まった。
受付を済ませると、スタッフが説明を始める。
「今回の二次審査は、オーディション番組『PROJECT Re:Start』として撮影・放送されます。」
会場がざわつく。
暇72「番組……?」
そんな話、募集要項にはなかった。
「緊張する……」
「テレビとか聞いてないって……」
参加者たちの表情が一気に硬くなる。
そんな中、なつは深呼吸をした。
(テレビでも関係ない。)
(俺はアイドルになりに来たんだ。)
◇◇◇
控室。
番号順に椅子が並べられている。
なつは自分の番号札を見つけ、腰を下ろした。
すると、隣の席に一人の少年が座る。
紫髪に鋭い目つき。
イヤホンを片耳だけ外し、足でリズムを刻んでいる。
見るからに近寄りがたい雰囲気だった。
(怖……。)
そう思った瞬間だった。
いるま「おい」
暇72「……え?」
いるま「荷物」
暇72「え?」
いるま「当たってる」
暇72「あ、ご、ごめん」
慌ててバッグを引き寄せる。
いるま「ちゃんと周り見ろ」
暇72「……は?」
謝ったのに、その言い方はなんだ。
なつの眉がぴくりと動く。
暇72「ちゃんと謝っただろ」
いるま「謝ればいいって話じゃねぇ」
暇72「……感じ悪」
いるま「お互い様だ」
空気が一瞬で冷えた。
(なんだこいつ。)
(最悪。)
二人は同時にそっぽを向いた。
こさめ「ふふっ」
後ろから小さな笑い声が聞こえる。
振り返ると、淡い水色の髪の少年が困ったように笑っていた。
こさめ「二人とも、会ってすぐ喧嘩しちゃだめだよ?」
暇72「あ……。」
いるま「……。」
二人は同時に黙る。
その隣には、背の高い金髪の青年が立っていた。
みこと「仲いいね」
「「どこが?」」
声が綺麗に重なる。
今度は水色の髪の少年が吹き出した。
こさめ「息ぴったりじゃん」
暇72「全然」
いるま「違う」
また同時。
みこと「ふふっ」
金髪の青年も優しく笑う。
みこと「僕はみこと」
こさめ「雨乃こさめです。よろしくね!」
暇72「……なつ」
いるま「……いるま。」
四人は簡単に自己紹介を交わした。
この時はまだ、誰も知らない。
この四人が、これから何度も同じステージに立つことになるなんて。
◇◇◇
「では、番号順にスタジオへお願いします!」
スタッフの声が響く。
一人ずつ名前が呼ばれていく。
ステージの向こうには、眩しい照明。
そして。
「……。」
審査員席の中央。
そこには、憧れ続けた人が座っていた。
LAN。
画面越しではなく、目の前にいる。
思わず息を呑む。
(本物だ……。)
隣では、いるまも真剣な表情でステージを見つめていた。
その目には、強い闘志が宿っている。
(絶対、負けねぇ。)
(俺も、絶対に受かる。)
まだお互いのことは大嫌い。
けれど同じ夢を追う者として、二人は初めて同じ場所を見つめていた。
ここから始まる。
夢への、本当のオーディションが。
◇◇◇
スタッフに呼ばれ、なつはスタジオへ足を踏み入れた。
大きなステージ。
頭上には何本ものスポットライト。
カメラが数台並び、その向こうには審査員席が用意されていた。
中央には、LAN。
その隣には、SIXFONIAのスタッフやダンス・ボーカルトレーナーたちが並んでいる。
テレビで何度も見てきた憧れの人が、今、自分の目の前にいる。
(……落ち着け。)
緊張で喉が渇く。
しかし、ここで怯んでは意味がない。
夢を掴むために来たんだ。
「エントリーナンバー28番、暇72さん。」
暇72「はい。」
スタッフの声に返事をし、ステージ中央へ歩み出る。
正面には、番組用のカメラ。
赤いランプが点灯した。
「まずは自己紹介をお願いします。」
暇72「高校二年生、暇72です」
「小さい頃からStellarisに憧れてきました。今日は、自分らしく全力で頑張ります。」
「よろしくお願いします」
深く一礼する。
LANは優しく微笑みながら頷いた。
LAN「よろしくお願いします。」
その一言だけで、少し肩の力が抜けた。
LAN「それでは、ダンス審査を始めます」
流れ始める課題曲。
イントロが鳴ると同時に、なつは身体を動かした。
覚えてきた振り付け。
鏡の前で何度も練習した動き。
だが、緊張からか足が少し重い。
(落ち着け……!)
リズムを感じながら踊る。
決してダンスが得意なわけではない。
それでも、一つひとつ丁寧に踊り切ることだけを考えた。
曲が終わる。
暇72「ありがとうございました」
息を整えながら頭を下げる。
審査員たちはメモを書き込んでいた。
表情からは何も読み取れない。
(……やっぱり、ダンスはまだまだか。)
悔しさが胸をよぎる。
LAN「続いて歌唱審査です」
マイクが渡される。
この瞬間だけは、不思議と緊張が消えた。
歌うことだけは、昔から好きだった。
ライブ映像を見ながら何度も真似をしてきた。
Stellarisの曲も、何百回と歌った。
イントロが流れる。
息を吸う。
そして。
「__♪~」
優しく、それでいて真っ直ぐな歌声がスタジオに響いた。
感情を乗せる。
歌詞の意味を伝える。
一音一音を大切に。
曲が進むにつれ、自然と身体も動き出す。
最後のフレーズを歌い終えると、静寂が訪れた。
「……。」
数秒後。
LAN「ありがとうございました!」
LANが笑顔で拍手を送る。
LAN「歌、すごく良かったよ!!」
その言葉に、思わず目を見開く。
LAN「感情の乗せ方が上手だね」
「技術だけじゃなくて、『届けよう』という気持ちが伝わってきた」
暇72「……ありがとうございます!」
自然と笑みがこぼれた。
憧れの人に褒められた。
それだけで、今日ここへ来た意味があったと思えた。
LAN「ダンスはまだ伸びしろがあります」
「でも、それを補えるくらい歌に魅力がある」
「これからも頑張ってください」
暇72「はい!」
深く頭を下げ、ステージを後にする。
◇◇◇
控室へ戻ると、ちょうど隣の席の少年――いるまが立ち上がっていた。
いるま「次、俺か。」
ぼそりと呟き、ステージへ向かって歩き出す。
(あいつ、どんなパフォーマンスするんだろ。)
気になってしまう自分がいた。
モニターに映し出される、いるまの姿。
「エントリーナンバー29番、いるまさん。」
自己紹介を終え、ダンス審査が始まる。
曲が流れた瞬間だった。
「……!」
会場の空気が変わる。
身体のキレ。
リズム感。
ターンもステップも、まるで音楽と一体になっているようだった。
(うま……。)
思わず息を呑む。
さっきまで「感じ悪い奴」だと思っていた相手。
けれど、そのダンスには圧倒されるしかなかった。
そして歌唱審査。
歌い始めると同時に、低く力強いラップがスタジオを駆け抜ける。
観客はいない。
それでも、まるでライブ会場にいるような熱量だった。
暇72「……すご」
なつは思わず小さく呟く。
悔しい。
でも、認めざるを得ない。
(こいつ……本物だ。)
◇◇◇
一方、歌い終えたいるまも控室へ戻る途中、ふとモニターに映る歌唱審査のダイジェスト映像を目にする。
そこには、自分とは正反対の歌い方で、観る者の心を惹きつけるなつの姿が映っていた。
(……歌だけなら、あいつの方が上かもしれねぇ。)
そう思った瞬間、少しだけ口角が上がる。
(だからこそ、負けたくねぇ。)
まだ互いに名前を呼ぶことすらない。
それでも二人は、この日初めて心のどこかで相手を「ライバル」と認め始めていた。
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コメント
5件
更新ありがとうございますっっ! 🍍📢がお互いのことライバルとして意識してるのめっちゃ好きですっ! 続きも楽しみに待っていますっ!
やばいやばいやばい!!😭💕 第2話、めっちゃ良かったよ…!! 一次審査通った喜びから始まって、会場の緊張感、いるまくんとの最悪な出会い(笑)からのLANさん登場…もう胸熱すぎる!! なつくんの歌、LANさんに褒められててこっちまで嬉しくなったし、いるまくんのダンスとラップの圧巻っぷりもすごかった…! お互い心の中でライバル認定し合うとこ、青春だなぁって涙出そうになったよ…😢✨ 次どうなるの!?続きが待ちきれない!!