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直弥side
ぼんやりと窓の外を眺めていた。
青とも灰色ともつかない、
曖昧な色の秋の空。
毎日同じ景色で、時計を見ても
数字がただ流れていくだけにしか思えない。
――ガラガラ。
ドアの開く音に、反射的に振り返った。
そこに立っていたのは、やっぱり。
哲「よっ、直弥!」
大きな声と、眩しい笑顔。
毎日欠かさず俺のところへ来る、
彼氏の哲汰。
あいつがこの病院に来たのは、
骨折がきっかけだった。
たまたま俺を見かけて、
一目惚れしたらしい。
まったく信じられない話だが、本人は真顔で言い切るんだからタチが悪い。
同じ高校だってこともあとから知って、
それからは顔を合わせるたびに
話すようになって……
まあ、結局俺も、気づいたら
恋に落ちていたわけ。
直「……また来たのか」
哲「“また”って何だよ。俺は毎日来るって決めてんの!」
直「勝手に決めるな」
哲「直弥が寂しくないように来てるの」
さらっとそう言えるのが、ずるい。
こっちは心臓が悪くて入院してんのに、
そんなこと言われたら 鼓動が早くなる。
直「別に頼んでないし」
哲「も〜素直じゃないね なおくんは〜」
哲汰は当然のようにベッドの横の椅子に
腰を下ろした。
哲「はいノート」
直「ありがと」
哲「今日数学の時間気づいたら寝てて」
直「いつもじゃないの?笑」
哲「いつもじゃないわ笑」
哲「寝ちゃってたから もしかしたらよだれついてるかも ごめん」
直「よだれ?汚」
哲「汚ってひどくない?!俺 直弥の彼氏なんだけど?」
直「いや彼氏だとしても汚いもんは汚いだろ」
哲「まぁ嘘だからいいけど」
直「嘘なのかよ笑」
哲「うん嘘笑 」
哲「直弥が笑ってくれればそれでいいから」
さらっと言うなっての。
口が半開きになりそうなのを
慌ててごまかし、俺はわざと窓の方へ
顔を背ける。
直「……バカ」
哲「はいはい、可愛いツンデレいただきました~」
直「もうお前うるせぇ、帰れ」
哲「なんでよ なおくんなおくん」
直「お前、近ぇよ!」
哲「照れてんの?かわいいなおくん」
俺の頬に軽く指を伸ばそうとするから、
慌てて払いのけた。
けど、指先が触れるか触れないかの一瞬で、胸の奥が熱くなる。
真っ白な病室。白い壁、白いベッド、
白いシーツ。
でも哲汰がいると、その白の中に
色が差し込む。
窓の向こうの空より、ずっと鮮やかに。