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哲汰side
今日も学校が終わってすぐに病院へ向かう。
受付を通ると、いつもの看護師さんが
声をかけてきた。
看「あ、哲汰くん。今日も学校お疲れさま〜。面会時間はいつも通り十九時までね」
哲「は〜い、ありがとうございます」
すっかり顔なじみだ。俺が毎日来てるの、
もうバレバレなんだろう。
最初は骨折でこの病院に
通っていただけだった。
けれど、あのとき偶然見かけた直弥に
一目惚れして、同じ高校だってわかって、
心臓病で入院していることも知って……
そして、直弥も俺のことを好きだと
言ってくれた。
そこからはもう、毎日来るのが
当たり前になった。
「直弥が寂しくないように」
――そう言っているけど、本当は違う。
俺が後悔しないためだ。
いつ直弥が居なくなるかわからない。
だから一分一秒も無駄にしたくない。
直弥の笑顔も、拗ねた顔も、
ぜんぶ焼き付けておきたい。
病室のドアを開けると、やっぱり。
直弥が必ず振り返ってくれる。
その視線をもらう瞬間が、
俺の一日のハイライトだ。
直「……また来たの?」
哲「“また”はないだろ。俺の生きがいなんだけど」
直「生きがいとか大げさ」
哲「いや、マジ。俺が来ないと直弥寂しいだろ?」
直「……別に」
哲「ほら出たツンデレ」
直「違ぇよ」
わざとニヤけてベッドの横の椅子に
腰を下ろすと、直弥がジトっと睨んでくる。
はいはい、かわいい。
哲「はい今日のノート。」
直「ありがと」
哲「授業サボらなかったから褒めて」
直「……勝手にやってるだけでしょ」
哲「褒めてくれないとやる気でないんだけどなあ」
わざと甘えた声を出すと、
直弥はむっとした顔でそっぽを向いた。
でも、その頬が少し赤くなっているのに
気づいて、俺は小さく笑う。
直「てかよく飽きないよね、毎日」
哲「飽きる? なんで?」
直「だって俺、ここから出てないし、景色も同じだし」
哲「いやいや、全然違う!直弥が毎日違う顔してんだもん」
真っ白な部屋も、直弥も、
俺の目には毎日違う色をしている。
飽きるなんて、あり得ない。
哲「そういえば今日、体育でバスケやったんだけどみんなから「エース」って言われるぐらい活躍してさ」
直「なに自慢話?」
哲「いやいや、ほんとに俺がいないと試合まわんないの。みんな困っててさ」
直「自分で言う?笑」
哲「事実だから」
直「はいはい」
哲「え、ちょっと!信じてない顔しただろ!」
直「だって……」
哲「だって?」
直「お前、調子に乗るとめんどくさい」
哲「ひどっ!」
直弥が小さく笑った。
その笑顔を見た瞬間、
胸の奥がぎゅっとする。
直「なに?」
哲「いや……やっぱ直弥は笑ってる方がいいなって」
直「……なに急に」
直弥が照れてそっぽを向く。
真っ白な病室も、その仕草ひとつで
違う色に見える。
俺にとっては、毎日が違う景色だ。
だから、飽きるわけないんだよ。