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「うわぁ…ちょー金持ちじゃん。見て若井、海辺に家だよ?しかもこんな豪華な。」
どこから見つけ出してきたのか、海の近くに建てられた家の写真を見せてきた。広い敷地に屋外のプールが付いていて、まさに金持ちの家という感じだった。
「ここにそいつが居るの?」
「んー…多分。」
「多分って…これで一般人だったらそれこそ俺ら終わりだよ。」
ここに来て曖昧な返事を返す元貴に噛み付くように返してしまう。今まではそれで何とかなっていたかもしれないが、慎重に行かなければいけない。それは元貴も分かっているはずだ。
「分かってるよ。だから今やってんじゃん。」
「ちゃんとハッキリさせて欲しいから俺は言って…」
「何も出来ない癖に黙ってろよ!!」
声を荒らげる元貴が珍しくて圧倒されてしまう。何も出来ない、という言葉が胸に突き刺さる。だが、それも事実で何も言い返すことが出来ない。今出来ることは弱々しい謝罪の言葉を紡ぐことだった。
「……ごめん。」
そう言った俺に元貴は何も返さなかった。一緒に吸っている空気の悪さに耐えきれなくなり部屋を出る。暗かった部屋の外は痛いほど眩しくて、感情が高ぶる俺を慰めてくれるようだった。
涼ちゃんが居なくなった日もこうやって喧嘩していた。懐かしくて思わず目を細める。俺が早く駆けつけなかったせいとか、元貴が涼ちゃんのお泊まりの誘いを断ったせいとか。ただひたすらにお互いを否定しあっていた。何も生まれるものはないのに。
仲直りしたのはいつだっただろうか。涼ちゃんの部屋の物を整理していた時、懐かしい写真が出てきた。
仲違いを起こした俺たちの真ん中で困ったように眉を下げる涼ちゃんの写真だった。「僕が居ないと2人はダメだもんね」なんて笑いながら言っていた涼ちゃんの姿を今でも鮮明に覚えている。そこでやっと気付いた。元貴と俺の目的は一緒で、大切な物も一緒、と。
泣きながら謝る元貴に釣られて、一晩中共に泣きじゃくったのが遠い記憶のように思える。
涼ちゃんは、俺らのことをよく分かってたんだ。よく見て、よく喋って、よく笑って。それは一緒のはずなのに、俺らは涼ちゃんのことを分かった気になってた。今の俺達を見たら君は、何と言うだろうか。
俯いていた頬から零れ落ちていく涙にはっ、とする。いつの間に泣いていたのか、弱い自分が情けない。
ズボンのポケットに入れておいたスマホが振動する。涙で滲む視界でロック画面を瞳に映せば、3人の写真が目に入る。
もし願いが叶うなら、この写真の中で息をしている君にもう一度会いたい。俺も写真の中に行けたら、なんて馬鹿な考えを振り払う。
服の袖で乱暴に涙を拭って深呼吸をする。元貴にもう一度謝ろう。そう決心して扉を開けた。