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「でも、ここ、博麗神社に辿り着いた人間にのみ選択肢が出てくる、 このまま幻想郷の住人になるか
元の世界に戻るか」
迷うまでもない、答えは決まっている
出すべき答えは─
「ここに、住みたい」
不意に出た答え、帰りたい
という考えを無くすように。
それに対して、霊夢は何かを求めるように
手をひらひらさせながら。
「…分かったわ、それじゃあ
お金30万で良いわ」
「…え!?お金いるの!?」
「当たり前でしょ、慈善事業じゃないのよ」
勿論、赤羽にそんな大金は持っていない、それなら
ただ帰ればいいだけだが、その選択肢は拒否を
している。
「……こ……ここで働けませんか!?皿洗いでも
掃除でも何でもする!」
「……なんでそんなに残りたいの」
「……わ……からない……」
言葉に詰まる、なんとなく、なんて言える
わけがない。
何より戻ればまた###########が
始まってしまう……。
頭の中に一瞬だけ流れた映像、しかし、
煙のように忘れてしまう何か
そんな不思議がる赤羽を無視して、
巫女が話を続ける。
「……良いわ、私の周りの世話をする
こと、掃除洗濯料理に買出し全部」
赤羽は分かった、と言わんばかりに強く頷く。
「それと、これ」
投げられた札のようなものは、白と赤の珍しい
陰陽玉の模様が描かれたものだった。
「それはいわゆる住人の証、博麗の巫女の名の下
保護されているって言う意味よ、証を持っている
人間を無闇やたらに襲うような愚か者は
普通居ないから」
赤羽は【博麗】の名がどれほどの影響
をうけるのか、未だ分からない。
「ありがとうございます!!」
「それじゃあ早速買い出しに行って
もらおうかし……ってアンタ、人里の
場所分かんないわよね」
困ったような素振りを見せる霊夢をよそに遠くから
キラキラと音が近付いてくる。
赤羽が向かって来る方を見ると箒に跨った
黒と白の服と黒のトンガリハット。
見た目からして明らかに魔女…
魔法使いのそれだった。
「っと!遊びに来たぜ!霊夢!」
霊夢とは正反対のような性格の、白黒の服と長めの
金髪の少女が明るく声をかける。
「今取り込み中なの、また今度来てくれる?」
すると白黒の魔法使いは不服そうに するが、
赤羽を見た途端、目を輝かせる。
「取り込み中〜?……ってもしかして
お前、外の世界の人間か!?」
その単語に警戒心を抱く赤羽、いくら
博麗の巫女の証を持っているとは言えどの程度の
効力か全く分からず、信用できないで
いたからだ。
「大丈夫よ、こいつはそんなのじゃないから」
不思議と霊夢の言葉には説得力が有り
警戒心が溶けてゆく。
「すっげぇ!!初めてみたぜ!!
なぁ、どうやって入っ てきたんだ!?
外の世界はどんなのだ!?」
こちらの興味が尽きない、という好奇心の
塊のような瞳を向けられる。
あまりの圧に赤羽は後退りをする。
「そいつ、記憶がないみたいなのよ、
あまり詰め寄りすぎないの」
「え……ごめんな、外の世界の人間って中々
見ないからついはしゃぎすぎちゃったぜ……」
申し訳なさそうに赤羽の方を向く少女。
好奇心は残しつつもこちらの嫌が事は
したくないと伺える。
「あ……いや……大丈夫何も覚えてないか ら
特に外の世界?とやらで話せる ことはないかな。というか外の世界っていうのは……?」
ここで一番疑問に思っていた内容を口に出し
問い掛ける。
「ここは幻想郷、外の世界…いわゆる
貴方の居た世界とはまた別空間 陸続きだけどね、
結界によって空間も時間も外の世界から隔離
されているからある種、 異世界っていう
形かしら」
「んでも!たま~に結界の穴を 通って外の世界のも
んが来たりするんだよ。
人間はかなり珍しいけどな!」
霊夢と被せるように説明を始める。
迷惑そうな顔をしつつも何処か
楽しそうにしていた。
「その…珍しいと言うのは……?あの子たちの話だと
過去にも人が来ていた……と」
少女たちの顔が曇る、してはいけない質問だったの
かと驚き、口を塞ぐ瞬間、 霊夢が話し始める。
「ルーミアとチルノが言ってたことね、数年前
幻想郷を維持するための博麗大結界に歪みが
起こったの。
原因不明、その結果一時的に結界は消失、外の世界
の人間が突如現れた新たな土地を奪い合うように
流れ込んできたの。
結果幻想郷も外の世界も共に甚大な被害が
出たのよ…」
暗い表情で話す霊夢の横で、白黒の魔法使いも
口を開く。
「あぁ……ルーミアとチルノか、あいつらはまぁ……
その一件で友達を傷つけられてるからな……」
「幻想郷には外の世界の人間歓迎ってのもいれば
反対のやつも居るのよ、その札を持っている限り
は安全だけどね」
あまりの衝撃に絶句する、あの子供達の怒気と殺気
はそういう事があったのかと、 理解する。
そんな気持ちを察してか知らずか魔法使いが少し声
を大きく話す。
「それはそうと!!自己紹介がまだだったな!
私は魔理沙!霧雨魔理沙だ!魔法使いをしてる!
よろしく!!」
得意げな顔で自己紹介をする魔理沙はその一言だけ
で重たい空気を一変させた。
「僕は赤羽日向、昔の記憶は無いけど、外の世界の
知識ぐらいなら少しはあるから、
それでもいいなら少しだけ話せるよ」
そう言うと少女はまた、キラキラした目でこちらを
見てくる。
それをよそ目に、霊夢が閃いたような表情で話す。
「あ、丁度良かった、魔理沙、アンタこいつを
案内して」
「案内?」
「幻想郷よ右も左も分からないんじゃ買い出しに
行けないでしょ」
当然のように話す霊夢。
無論外の世界の人間が幻想郷に住むなんて事態は
極めて異例も異例のはずだが。
「あぁそうか…って、こいつ幻想郷に居る
つもりなのか!?」
あまりの衝撃なのか目を見開く。
大事そうに持っていた箒からも一度手を
離し慌てて再度掴む
「えぇ、そうよ、私の身の回りの世話を
することを条件にね」
「はぁぁ!?!?」
見開いていた目がさらに丸くなり、 箒と帽子が地面
に落ちてしまった
「あの、案内が……嫌なら別に……
大丈夫だけど……」
「ダメよ」
霊夢が少し食い気味に話す。
「あのねぇ私の札を持っていても危険はあるの!」
あまりの剣幕に後退りしてしまう赤羽、
声から真剣なのが伺える。
「分かった…?」
「ま…まぁそういう事なら私が案内してやるぜ」
魔理沙は、ようやく驚きが引いたのか帽子と
箒を取り、埃を払いながら承諾する。
「助かるわ、それじゃあお願いね」
「おうよ!そんじゃ箒に跨て私の後に
乗ってくれ!」
「え!もしかして俺も飛べるのか!?」
赤羽は期待の眼差しで魔理沙を見つめる、魔法で
空を飛ぶなんて誰しもが一度は夢見た光景、
そんな夢が今、現実に起ころうとしている。
「勿論!一人二人増えたところで問題ないぜ!
私は天☆才魔法使いだからな!」
自信満々で得意げに話す魔理沙に促され
たまま、箒に跨り両肩をしっかり掴む。
─瞬間─
「あ、ちょっ」
「いっくぜぇぇ!!!」
「え?」
何かを察した霊夢が静止しようと
するも、すでに遅く。
─衝撃が走った─
感情的な意味ではなく物理的に。
「ああああああああああぁぁぁぁ ァァアアアアア!?!?!?」
幻想入りして、始めて空を全速力で飛び
悲鳴が遠くなる少年を見ていた巫女
は心配そうに、大きくため息をつい た。
「お嬢様、お連れしました」
「ようこそ、氷室零、貴方の来訪は運命
で見えていたわ」
刻を同じくして、また1人、幻想入りし た
白いイヤホンをした黒色の髪と瞳少 年は、
どこからともなく現れたメイド に連れられ、
紅い館を訪れていた。
「誰だよ、テメェ」
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