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「お嬢様、お連れしました」「ようこそ、氷室零。
貴方の来訪は運命で見えていたわ」
刻を同じくして、また1人、幻想入りし た白いイヤホンを付けている黒色の髪と瞳少 年は、どこからともなく現れたメイド に連れられ、紅い館を訪れていた。
「誰だよ、テメェ」
──────時は少し遡り──────
「……は?どこだここ」
先程まで路地裏に居たはず……。
うたた寝をしたときのように、目の前の景色が切り替わる。
「……林……いや、森の中か……。
いよいよ死んだか?」
少年は自らを嘲笑する。
困惑の果てなのか、それとも、 別の何かから来ているのかは 定かではない。
「お待ちしていました、氷室零様」
そんな少年の後ろから、音もなく近づき、 声を掛ける人物が現れる。
黒髪の少年、氷室は距離を取り、 警戒しつつ後を振り向く。
そこには、この場にはそぐわないメイド
服を着た人物が立っていた。
「誰だ?」
完璧な見た目メイドを警戒する。
─完璧過ぎたからだ─
服どころか靴にすら土がついた形跡は 無く、木の枝や葉も一切付いていない、 まるでそこに【現れた】ように。
「お嬢様……レミリア・スカーレット様 から承っております。
貴方を紅魔館へご案内するようにと」
少年の来訪を知っているかのように、 そのメイドは話を始めた。
しかし、氷室は何が何だか 分かっていない。
唐突に変わった景色、背後から 突然現れたメイドに困惑しつつも、 警戒しながら話しかける。
「招待状も受け取った覚えはねぇん だけど?」
「招待状は必要ございません」
氷室の皮肉に対してキッパリと答える。
「…もし、行かないと言ったら?」
「引き留める事はしません。
ですが、氷室様が紅魔館に来ることは 確実ですので」
迷いなく答え続けるメイド。
不思議と恐怖はない。
いや、感覚が麻痺しているのだろうか?
しかし、こちらの来訪を知っていたの
なら、何か情報があるかもしれない。
「……ッチ……癪だがその通りみたいだ。
お前の言う主様に会いに行ってやるよ」
「ありがとうございます。
申し遅れました、私は紅魔館メイド長の 十六夜咲夜と言うものです。
以後お見知り置きを」
丁寧に挨拶をする咲夜と名乗る人物
手を上げ、指を鳴らす動作をする。
─瞬間─景色が変わる。
目の前には巨大なレンガ造の建物 だろうか、紅の館が目に映る。
「こちらへ」
驚く暇もなく案内をされ歩み始める。
巨大な門と、その横の人物像のような
ものを抜け、館へ入る。
そして……。
────────現在────────
「貴方の来訪を待っていたわ」
「だからテメェは誰だよ」
目の前に現れたのは少女の体型の 白が強いピンク色の正しくお嬢様のよ うな服装を纏った人物が、大層立派な 椅子に座っている。
背中側にはコウモリのような羽と紫に近 い様な青髪、深紅の瞳と赤のリボン付 きのナイトキャップを着けている。
あちらは氷室の事を知っているよう だが、氷室は全く覚えがない。
「紅魔館の主。
レミリア・スカーレットでございます」
一瞬の沈黙が流れる。
「は?このチンチクリンが?」
「誰がチンチクリンよ」
若干不服そうな表情をするレミリア。
しかし氷室から見ればただの子供、 いや、幼児そのものだったからだ。
「お嬢様、本当にこちらの方が そうなのですか…?」
信じられない、という表情をしながら 咲夜が尋ねる。
「あら、珍しいわね、 どうしてそう思うの?」
「いえ……その、あまりにも口が悪いと
言いますか…本当にこの方が
紅魔館の執事になるのか…と」
「は?」
意外な言葉だった。
見ず知らずの土地に来て、見覚えのない
人物と館に連れてこられ、挙句の果て
には執事になると言い始めたのだ。
「間違い無いわよ。
ねぇ氷室零、ここの執事長になって
みる気は無いかしら?」
「断る」
バッサリと切り捨てる。
当然だ、執事なんてもうウンザリだ
何よりどうせコイツラも…。
そんな考えを遮るように、レミリアは
不敵に笑いながら、話し始める。
「……そう、でも貴方、どうやって帰る
つもりなのかしら?
ここに来た道も、何も分からないので
しょう?」
「……へぇ?脅してるのか?」
氷室の目つきが一層鋭くなり、眼前の
子供を睨みつける。
しかし、レミリアはまるで子供を
扱うかのように続ける。
「いいえ?貴方の心配をしているのよ」
自信満々に、それでいてこちらを心配す るような表情を向けられる。
実際、氷室に帰る場所はどこにもない。
「安心してもらえるかは分からない
けれど一つ、教えてあげるわ。
幻想入りして、残る選択をしたのは
貴方一人じゃない、他にも5人は居るわ
外の世界から来たから話も
合うでしょう。
いつか会えると良いわね」
「……俺が来ることを知っていたような
口ぶりだったり、これからのこと
分かったように話したり……
なんなんだテメェ?」
まるで、これからの行動を見透かされているような話ぶりに不快感を覚える。
「運命を見ているのよ。
ある種の未来予知と言ってもいいわ」
「はぁ??」
普通ならこんな戯言を信用出来なかった
だろう……、だが唐突に背後に現れた
メイド、こちらの来訪を知っていたか
のように用意周到だったりと、信じざ
るを得ない。
そして……考えるのも、もう
面倒くさい。
「あ”ー……クソ、分かったよ……。
なってやるよここの執事に。
どうせ帰れる場所もねぇし。
ただし、俺は必要なこと以外は
やらねぇ、テメェらと馴れ合う
つもりもねぇ……それでも良いのか?」
逃げられない、と悟った氷室は悪態をつきながら渋々了承した。
そんなことは気にしない、とばかりに
話し始めるレミリア。
「えぇ、構わないわ、お互いにゆっくり
打ち解けましょう。
改めて歓迎するわ、紅魔館の執事
氷室零、これからよろしくね。」
目の前に小さな手が差し出される。
氷室は手を払う、レミリアは残念そうに
しながらも、毅然な態度で続ける。
レミリアが指を鳴らすと、隣に一瞬で
現れる例のメイド長。
「咲夜、紅魔館の案内と、仕事の内容の
説明をお願いするわ」
「承りました。
それでは氷室ついてきなさい」
引き続きメイドにつられ歩み始める。
驚くことに不安、恐怖の感情はなく
あるのは。
─吐き気を催す程の感じたくない
帰郷感だった─
──────────────────