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じゃむじゃむあっぽー🍏
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第7話
次の日、涼架の席は空席のままだった。
朝のホームルームで隣のクラスの担任が「藤澤は体調不良で欠席だ」と告げたと知った瞬間、俺の心臓は嫌な音を立てて跳ね上がった。
(やっぱり、寝坊なんかじゃなかったんだ….)
あの夜、街灯の下で見た涼架の青白い顔と、痛々しいほどの笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。
酷いことを言って突き放してしまった後悔が、どす黒い塊となって俺の胃の奥に居座り続けた。
それから、二日、三日と日が経っても、涼架が学校に姿を現すことはなかった。
スマホへ送った「こないだは悪かった」という謝罪のメッセージも、既読がつかないまま時間だけが過ぎてい く。
そして、一週間が経とうとしていた放課後のことだった。
進路指導室へ提出物を出しに行く途中、職員室の奥にある応接スペースから、担任と学年主任の深刻そうな話し声が漏れ聞こえてきた。
普段なら気にも留めないはずのその声に、俺の足はピタリと止まった。
「…..そうですか。藤澤くん、やはり病気が悪化して…..」
「ええ。お母様からご連絡がありまして、これ以上通学を続けるのは難しいと。近いうちに、お母様に学校へ来てもらって、ロッカーや下駄箱の荷物を引き取ってもらうことになりそうです」
「あんなに明るくて良い子だったのに、本当に残念だな……」
荷物を、取りに来る?
通学を続けるのが、難しいーー?
頭を激しく殴られたような衝撃が走った。手元に抱えていたプリントが、カサリと音を立てて震える。
『ちょっと、寝坊?しちゃって….。目が覚めたら、もうこんな時間でさ….あはは』
あの夜の、涼架の掠れた声が耳の奥でリフレインする。
「嘘つき…..」
俺の唇から、かすれた声が零れた。
寝坊なんかじゃない。あいつはあの時、もう自分の身体が限界だと分かっていながら、俺に余計な心配をかけまいとして、嫌われたって構わないとばかりに、必死で笑っていたんだ。
それなのに俺は、ただの寝坊だと決めつけて、ヘラヘラして酷いなんて、最悪な言葉を投げつけて置き去りにした。
「…っ!」
気づけば、俺は職員室のドアを激しく押し開けていた。ガラガラと大きな音が響き、中にいた先生たちが一斉に俺を振り返る。
「おい、若井!?急にどうした」
「先生!!」
担任の制止を振り切り、俺はまっすぐにそのデスクへと詰め寄った。
鏡を見るまでもない。今の俺の目は、誰が見ても恐ろしいほどに鋭く吊り上がっていただろう。先生が一瞬、気圧されたように身を引く。
「藤澤…..涼架は、今どこにいるんですか」
「な、何を言っているんだ。藤澤は病気療養中で…..」
「知ってますよ!さっき荷物を取りに来るって話、聞こえました!あいつ、どこの病院にいるんですか!教えてください!!」
職員室中の視線が俺に集まる。学年主任がすくっと立ち上がり、厳しい声で俺を諌た。
「若井、落ち着きなさい。生徒の個人情報を、いくら友人とはいえ教えるわけにはいかない。藤澤くんのご家族の意向もあるんだ」
「落ち着いてられるかよ!!」
俺はデスクを激しく叩いた。
自分の心臓の音が、耳元でうるさいくらいに鳴り響いている。
「あいつ、俺にずっと嘘ついてたんです!自分の身体がキツいのに、学校ではいつも笑って、僕は何ともないよって顔して……っ。このまま会えなくなるなんて、絶対に嫌だ!頼みます、先生….っ!」
俺は、生まれて初めて他人のために頭を下げた。拳をきつく握りしめ、床を見つめる。
「俺、あいつに酷いこと言ったんです。謝らなきゃいけないのに、何も知らないまま、あいつを一人で傷つけたままなんて、絶対に嫌なんです…..っ。場所だけでもいい、教えてください…..!」
静まり返った職員室で、俺の必死の訴えだけが響いていた。
長い沈黙の後、担任の先生が深くため息をつき、静かに席を立った。
「….若井。今回だけだぞ。メモは渡せないが、一度しか言わないからな」
ハッと顔を上げると、先生は複雑そうな、だけどどこか優しい目で俺を見ていた。
「市内の、中央総合病院の別棟だ。面会ができるかどうかは、ご家族の判断に任せる」
「…!ありがとうございます!!」
俺はそれだけ言うと、鞄を掴んで職員室を飛び出した。
廊下を猛スピードで駆け抜け、下駄箱を通り過ぎて校門へと走る。
ポケットの中で、あの時架と交換した、猫の消しゴムが暴れるように俺の太ももに当たっていた。
(待ってる、涼架…!今度こそ、お前の嘘を全部暴いてやる…..!)
夕焼けに染まる街の中を、俺はただ一人の名前を叫びそうになりながら、全力で走り続けた。
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