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「ーーというのが作戦、というよりも私たちがすべきことですね」
「……無理だろ」
「可能不可能の問題ではなく、これが出来ないと脱出できないという最低限の条件です」
「じゃあもう脱出できねぇって!!」
指揮に第三ゲームの作戦を聞いてみたのだが、シンプルにto doリストが帰ってきた。
で、しかもその内容がだいぶ無理強いな内容で、まず前提としてネームドと真っ向から戦いに行くことになる。
それはまだ分かる。元からネームドとは敵対していたし、まだ目的が不明なネームドはぶっ飛ばしておいた方がいいのも分かる。
その時に指揮は戦えないので俺についてくる感じになる。
それもまあむずいけど、指揮を失ったら俺は脳みそ筋肉野郎になってしまうので、指揮を失わないためにも仕方ない事かなと思う。
で、その戦う相手が今残ってるネームドほぼ全員という。
確かにmessiahとかmeutrueは敵対しているか怪しいが、確定なのは上の三人、ほぼ確定がtearとambition。
あとは明らかに怪しい音端とも戦うことになるかもしれないくらい。
それを俺一人でぶっ殺す。
全員勝てる前提。上に関しては二人同時とかで来るかもしれないけどそれでも頑張ろうみたいなノリ。
無理じゃん!!もうマジで勝てるわけないだろ!!
しかも第三ゲームで指揮と離れるかもなわけだし終わりすぎてるだろ!!
もう嫌だ。俺諦めたい。
「不確定要素がオンパレードしてるって……!今のうちに遺書でも書いとこ」
「お願いしますよ、脱出できるかどうかは貴方にかかっていますから」
「最悪だ……なんで俺がこんなひどい目に」
「出来る限りの事は致します。まあ、取りあえずは第三ゲームを乗り切りましょう」
「そうだよねー!第三ゲーム乗り切れれば脱出だもんねー!」
「うおおお!!最下層壊してごめん!!」
「今言わないでよそれ……どっちみち許してないけど。……さて、僕が放送しだしてるって言うことは」
「ピンポンパンポーンが直ってる!?」
「あのさぁ!!進行の邪魔しないでくれる?!」
「まあ話聞きましょうか」「全くしょうがないなぁ」
「僕が放送してるってことは、もう第三ゲームの準備が整ったってことだよ、そろそろ第三ゲームを開始するね。第三ゲームの会場は最下層。君たちにとっても僕らにとっても、第三ゲームは最後の舞台になる。だから、三週間の準備期間があったのもよかったのかもね。君たちも最下層に行けたし。まあそのせいでお仲間が一人”成っちゃった”みたいだけどね」
「やっぱバレてたんだなあれ」
「あれほど走っていたら気づかれるものも気づかれますよ。それに、猫手さんの件も把握されているようですしね」
「鬼の形相で参加者が最下層で走ってるってblossomから聞いたときは、変な夢でも見たんじゃないかって思ったよ。あれtearの部屋から行ったんでしょ?何やってんのあいつ。後でしばき回しとくわ」
「……でね、今結構ややこしい状況だと思うんだけど、まず参加者で第三ゲームに参加してもらう人は4人。衣川と花芽は参加者カウントじゃなくした」
「4人?俺と指揮と……小指は入んないんだろ?」
「死者はカウントしないよ」
「音端もいるか。後、天神も生きてるってことなのかな」
「そうすれば4人になりますね」
「じゃあ第三ゲームを発表するよー!第三ゲームのテーマは題して『シンプルにめっちゃ普通に戦う』!!」
「し、シンプルにめっちゃ普通に戦うだってぇ?!一体どんなたたか……ゲームなんだぁ?!」
「そんな無理して乗らなくても……テーマ考える時間なかったんですよね」
「極端な奴しかいないの??」
「まあ実際君たちが第三ゲームにまともに参加する想定なんてしてないから。君たち参加者の目標が何故か脱出することにすげ代わってるのは甚だおかしいけど、要は第三ゲームなんてガン無視で脱出しようとしてるんだし、こっちもまともに考えてられないよ。で、誰と戦う気?」
「いっぱい」
「小学生並みの回答ですね」「小並回」
「上と戦おうとしてるの?無理無理。僕ならまだしも、神化人が二人もいるじゃん。猫手が神器になってるからjealousyは倒せるけど、そこまでも想定通り?それともまぐれかな。それに、bloodは神器作ってないよ?君たち二人とも霊媒体質じゃないんだから、そもそもbloodを見れないから戦えないじゃん」
「だよなhappy!無理だよな!」
「君はどういうポジションなの……、まあでもさ、やっぱ最初から上と戦うの無理だと思うし、上よりちょっと弱い奴から戦ってみたら?それで、いかにネームドと戦うのが無謀か分かると思うよ」
「ネームドと戦ってほしいのか戦ってほしくないのか分かんねえなお前」
「ま、ほぼ駆除してほしいような奴なんだけどね。ネームド同士だと殺しあえないから、君たちに殺してほしいのさ」
「俺達が上にとって邪魔な奴殺すと思ってるのか?」
「僕にとっても邪魔な奴だけど、君たちにとっても邪魔な奴だと思うから、みんなこいつを殺したがってるよ」
「例えばどのような点が邪魔なのですか?」
「秘密」「じゃあ殺さねえよ」
「ここまで酷いコンセプトとはいえ、一応第三ゲームではあるからね。もしかしたら君たちが本当に戦いたくない相手と戦わさせられるかもしれないし、殺したくない相手を殺してしまうかもしれない。ゲームにはそれほど強制力があるから、嫌でも僕がやらせたかったらやらせられる」
「マジで無理だこれ、今までありがとう顔も知らない兄ちゃんたち」
「で、誰と戦わせようとしてるんですか?」
「勿論ambitionでしょ?それから花芽と衣川。messiahごとambitionをすっ飛ばしてよ」
「協力的なやつを殺させようとしてるんだなやっぱ」
「そりゃあそうだよ!折角の最後のゲームなんだし、最後の最後まで手は抜かないで堅実な立ち回りで行きたいからね」
「そいつら全員ぶっ飛ばさないと、上に対する挑戦権すらないってことかよ……」
「そうですね、かなり厳しい戦いとなりそうです」
「参加者がネームドに打ち勝つ展開は想定されていないのでしょうか」
「まあね。勝てるなんてことありえないよ、”それこそバグでもない限り”」
「じゃあ、そろそろ始めようか。第三ゲーム、最終決戦を」
俺達は再びまばゆい光に体を包まれる。
広場から最下層に体を移されている最中なのだろう。
今思えば、第一ゲームの頃から俺達はとても成長した。
色々なイレギュラーを引き起こし、色々な企業秘密を知った。
倒すべき相手を見つけた。
そいつらへの道はまだ遠い。正直勝てるわけがない。
でも、俺達は脱出に向けて歩み続ける。
そのためには分の悪い賭けをしないといけないかもしれない。
無謀な挑戦をしないといけない。
それを乗り越えた先がまだ地獄だったとしても。
きっと俺達の為に亡くなってきたあいつらのために、
俺は戦う。必ず。
そして、今いる参加者のみんなと、俺の兄弟と、必ず脱出する。
*
彼/彼女は、ある人が言うには「主に従順な従者」、ある人が言うには「ノリが軽い好青年」、ある人が言うには「生きる希望を与えてくれた命の恩人」、ある人が言うには「生きる希望を絶った恨むべき相手」。
彼/彼女は、ある人が言うには「ウインドー族の好青年」、ある人が言うには「霊歌師の冷酷な男」、ある人が言うには「卯人のやんちゃ坊主」、ある人が言うには「郷恋族の文学少女」。
居たはずなのに、いやいなかったはずなのに、我々はそいつを各々違った形で認識し、あたかも初めから居たかのような扱いを行う。
jealousyは彼/彼女を「empty」と名付けた。
何もなかったはずの場所から生まれた何かとして。
さて、emptyとは別の人間の話だ。
彼から計画の話を受けた時、私は心底驚いた。
こんなにも計画性のない計画があってたまるかと。
結局他人任せという結論になるなら、計画なんてしなくていいと。
だが、彼は言った。その信じるという行為が計画になってしまうほど、自分はひねくれていると。
だから、こんな計画しか作れない自分を許してほしいと、そう彼は呟いた。
その言葉が本当に重苦しくて、久しぶりに嫌悪感以外の感情が芽生えた。
どす黒い感情の頂点なのに、温かいと勘違いしてしまうような感情が。
その感情を言葉に出来た時、彼は計画を作り始めてから最初に笑った。
本当に満面の笑みだった。
私に芽生えた感情のせいで、無理して悪い顔を作る私と、その彼の無垢の笑顔は間違いなく対比になっていると気づいたとき、
何故だかそれが非常に可笑しくて、私は久しぶりに心から笑った。
二人の笑い声が暫く響いて、その後静寂が訪れ、彼がまた話し出す。
もうそろそろ計画を実行する時が来た、お前は頑張りすぎているから、精々辛くない余生を過ごしてくれと。
何か言葉を返さないといけないと感じたが、彼にとってこの言葉を最後に私に送る言葉にしたいのだろうと気づき、
少々悲しい気持ちも覚えたが、私は何も言わなかった。
彼もそれを察してか、何も言わずに部屋から出ていった。
私はこれから殺される。
私より何倍も若い若者に殺される。
それが私にとって一番の幸せであると、誰にも悟られず死にたかったが、残念ながらそれは叶わず、私より何倍も若い脳みそを持った彼にいとも簡単に見破られてしまった。
それが嬉しいのか悲しいのか分からないが、その出来事を思い出すたび笑みが零れるのは、きっと彼が言う疲れのせいだろう。