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夢のような大騒ぎが終わって、打ち上げも終え、美冬と槙野はホテルの部屋の中にいた。
シャワーを浴びた美冬はベッドで大の字になってぐったりしている。
「もう、指一本動かないわ」
美冬の後にシャワーを浴びたバスローブ姿の槙野がそんな美冬の横に腰をかけた。
そして、美冬の髪をそっと撫でる。
「頑張ったな」
「それにとんでもないサプライズとかあったし」
「美冬の会社のメンバーはいい奴らが多いな。お前が一生懸命になるのも分かるよ」
「それは自慢なのよ」
そう言う美冬に槙野がゆっくりと覆い被さる。
「ふぅん? 俺は自慢じゃねーのかよ」
拗ねてるっ! 可愛いわ。
美冬はぎゅっと槙野を抱きしめた。
「自慢の旦那様よ」
槙野は一瞬目を見開いて口元に手を当てている。
珍しく顔も赤いようだ。
「どうしたの?」
「いや……美冬のデレが貴重過ぎて、その、直撃した……」
「何言ってるんだか」
「なあ、明日は休みだろう?」
機嫌の良い様子の槙野の手が髪から頬へと移っていった。
その長い指が美冬の顎をくすぐる。
「えーっと、休み……かなぁ?」
嫌な予感の美冬はキラキラさせている槙野の目からそうっと目線を外して曖昧に返事をした。
「じゃあ、気にしなくていいな」
なにを? なにを気にしないの!?
こっちは気になってしよーがないんだけど!
「思う存分抱くからって話」
にっ、と槙野は嬉しそうに笑う。
──くっ……食われるっ!
「あの……お手柔らかにお願いします」
「お手柔らかにしてるんだがなぁ」
どこが!?
美冬はつんっと顔を上げ、まっすぐに槙野を見た。
「あの契約書って、1年更新なのよね?」
「そうだな」
槙野が面白そうな顔をしている。
「文言を書き加えるとかは可能なのかしら?」
「へーえ? どんな?」
「えっちは12時まで!」「妻は夫を拒まない」
同時に発したセリフだ。
瞬時に槙野の目が据わった。
「12時までなんて足りるわけないだろう!」
「拒まないって怖すぎ。ドン引きよ、祐輔」
本当に引いたようで美冬の眉間にシワが寄っていた。
「まあ……ちょっとモラハラっぽいかもな。でも本当に足りないんだよ。それにたまには思う存分したいし」
槙野はむぅーっとしながらもブツブツと発言の言い訳をしていた。
美冬はくすっと笑い、つん、と真面目に考えている様子の槙野の顔を指先でつつく。
「あのね、別に祐輔とするの、嫌じゃないよ?」
「あれだけよさげなのに、嫌とか言われるのは心外なんだが」
本当にたまにぶん殴りたくなるのは何かしら?
「やっぱり更改時に文言を改めることを提言するわ」
「考えとく。今は……思う存分可愛がらせろ」
その笑顔に結局のところ、逆らえない美冬なのだった。
契約だけの関係かと思ったら、気づいたらこんなに溺愛されていて、美冬も槙野を愛している。
しかも、契約は有効なのだ。
きっとこの先もずっと更新し続けるのだろう。
*⋆꒰ঌ┈┈END┈┈໒꒱⋆*