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今夜も惣一郎は私にキス以上の事を求める事はないだろう。
(私と惣一郎の関係って不倫になるのかな)
私は何気なくイーゼルに立てかけられたキャンバスを覗き込んだ。
「ーーーーえ、どういう事」
今日、初めて筆を入れた筈の私の絵はおおかた仕上がっていた。ポーズは右脚を椅子の上に置き、左手を膝に置き、顔は惣一郎の方を向いていた。その目、鼻筋、唇は私によく似ていたが、ただ一箇所異なる点は浴衣を肩に掛けている事だった。
(ーーーあ!)
浴衣を肩に掛けた裸婦、黒髪をハーフアップに結えた姿は胡桃の樹の下のあの女性だった。
(あの人が碧さん、宗一郎の奥さんかもしれない)
そう考えた私は顔が赤らみ息が荒くなった。私は宗一郎の奥さんの目の前で激しく口付け合い、裸体を筆先で撫でられ快感に悶え嬌声を上げていた。
(ーーーど、どうしよう)
もし写真や動画を撮られていたら、不倫の証拠資料として弁護士に提出されたら、裁判になって慰謝料を請求されたらと思うと不安が波のように押し寄せ、如何に自分が軽率であったかと心から悔いた。
(45歳、奥さんが居てもおかしくない)
ガラス扉に激しく打ち付けていたシャワーの音が止んだ。私がイーゼルを前に呆然と立ち尽くしていると髪の毛を拭きながら廊下を歩いて来た惣一郎が足を止めた。
「あぁ、気が付きましたか」
「この女性が奥さんなんですね」
「そうです碧みどりです、あなたによく似ているでしょう」
私はその言葉に引っ掛かりを感じた。
「惣一郎、違うんじゃない?」
「なにがですか」
「私が奥さんに似ているんじゃないの?」
また気怠い表情になった惣一郎は濡れた髪を掻き上げた。
「意外と鋭いんですね」
「どういう意味なの」
「そうです、初めてあなたと会った時驚きました」
「美術棟の階段で」
「正確には昇降口の階段です」
私は脚が震えるのを感じた。
「だから声を掛けたの」
「オレンジジュースの缶を開けたのは七瀬ですよ」
「違う、どうして加賀笠間の駅に居たの」
「あぁ、鋭いですね」
そう言うと惣一郎は私の脇を抱えてベッドルームへと引き摺った。
「そ、惣一郎!」
私は呆気なくベッドへと押し倒され、両手首はマットレスにめり込んだ。私の動きを制した惣一郎は激しく唇を吸い上げ口腔内を所狭しと舐め回し始めた。
「ん!ん!んん!」
なにかを誤魔化すような愛撫に抵抗し、私は脚をばたつかせた。
「痛い、そんなに暴れないで下さい」
「誤魔化してる!」
「ーーーー」
「加賀笠間の駅で声を掛けたのは偶然!?」
「七瀬の跡を追つけました」
「なっ、なんで!」
「画絵の続きが描きたかったからです」
「奥さんに頼めば良いじゃない!」
惣一郎の指先が私の股間へと伸び茂みを掻き分けた。
「やっ!」
私は初めてのセックスに膝を閉じようとしたが惣一郎の脚がそれを許さなかった。茂みを掻き分けた指先は突起に触れゆっくりと円を描き始めた。
「あ、あ!」
「まだ濡れてますね、続きをしますか」
「嫌!やめて!」
「こんなに口を開いているのに」
他人に触れられる行為は恐怖が先に立った。けれど筆になぞられた快感が肢体の奥底から滴り落ち、膣は難なく惣一郎の指を受け入れた。惣一郎は私の耳を唇で喰んだ。顔が熱った。
「は、初めてなんです」
「知っていますよ」
刺激に膨れた突起はこれまで感じた事のない快感を連れて来たが、膣内を前後する指の感覚は異物感を伴った。惣一郎が耳元で囁ささやいた。
「 碧 はもう居ないんです」
「ーーーなに、あっ!」
「だから二番目が必要だったんです」
「あっ!」
「それがあなたです」
グチュグチュと生温い体液の感触が股間で前後した。
「あ」
惣一郎の舌が乳輪を舐めあげたその時、玄関の扉をノックする音が聞こえた。