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――地下・秘匿施設――
重い振動が、
床から身体へ伝わってくる。
天井は高く、
無機質なコンクリートと装甲板に覆われていた。
その中心。
白いモビルスーツ——
シラヌイが、
静かに立っている。
「朝倉恒一、
シラヌイ、発進シークエンス待機」
地下特有の、
閉塞した空気。
恒一は、
コックピットの中で深く息を吸った。
(……地上じゃない)
(ここから、
出るんだ……)
操縦桿を握る手が、
僅かに震える。
⸻
「……恒一」
通信が入る。
同じ地下にいるはずの声。
「神崎……艦長」
「俺は今、
この施設のさらに奥——
戦艦の艦橋にいる」
神崎の声は、
落ち着いていた。
「お前の発進は、
この戦艦と直結している」
「つまり——
お前は最初から、
切り札の一部だ」
恒一は、
息を呑む。
「……そんな……」
「安心しろ」
神崎は、
すぐに続けた。
「理解しなくていい」
「判断は、
俺がやる」
「命令も、
俺が出す」
一拍。
「朝倉恒一」
フルネーム。
「怖いか?」
「……はい」
「それでいい」
「恐怖を感じて、
それでも動けるなら——
今は十分だ」
短い沈黙。
「生きて帰れ」
「それが、
最優先命令だ」
「……了解」
恒一は、
震えたまま答えた。
「必ず、
帰投します」
「行け」
⸻
警告音。
《LAUNCH SEQUENCE START》
床が、
ゆっくりと割れる。
リフトが下降し、
シラヌイが地下深部へ運ばれる。
前方。
闇。
そして——
光。
《カタパルト接続》
「……っ」
次の瞬間。
射出。
地下から地上へ。
岩盤を貫く専用シャフトを、
白い機体が一気に駆け上がる。
圧。
加速。
視界が、
一瞬白く弾けた。
⸻
――地上・戦場――
突如として、
地面が割れた。
白い機影が、
煙と粉塵を突き破って出現する。
「……何だ!?」
敵部隊が、
一斉に反応する。
「地下から……
モビルスーツ!?」
⸻
――地下戦艦・艦橋――
神崎は、
スクリーンを見据えていた。
「支援部隊、
予定通り展開」
「地下射線データ、
全機に共有」
味方部隊が、
即座に動く。
ミサイル。
実体弾。
地上に張られる、
防護と牽制の火線。
⸻
――戦場――
「朝倉恒一、
前に出るな」
神崎の指示。
「支援が道を作る」
「その中を進め」
「……了解!」
恒一は、
命令通りに機体を動かす。
(……守られてる)
それが、
はっきり分かる。
⸻
その時。
《高速接近》
黒と紫の影。
異常な速度。
「……っ!」
ビームサーベル起動。
衝撃。
《NEURAL LOAD WARNING》
赤。
「……重い……!」
⸻
爆煙の中。
黒い専用機が、
静かに立っていた。
通信。
「……地下から出てきたか」
低い声。
ロングヘアの男。
「なるほど……
だから位置が掴めなかった」
恒一は、
言葉を失う。
⸻
その瞬間。
戦場全体が、
低く唸った。
地面の奥。
さらに深い場所からの、
振動。
敵専用機が、
一瞬だけ動きを止める。
「……この下に……
まだ何かあるな……」
神崎の声が、
冷静に響く。
「気にするな、
朝倉恒一」
「まだ——
目覚めただけだ」
⸻
白いガンダムは、
地上に立っていた。
だがその背後には——
まだ姿を見せない
本当の戦場が、
確かに存在していた。