私にとってのそれは、 あの日の出会いから始まっていたのかもしれない。
そう思うほどに、彼は私を変えてくれたのだ。
だから今度こそ……! 私だって、彼に何かしてあげたいんだ!!
「……」
しかし、彼女は相変わらず黙ったままだ。
私を見つめるその視線からは、何も読み取れない。
私は彼女に対して、何をすれば良いのか分からなかった。
ただ、このままずっと沈黙しているわけにもいかない。
とりあえず、話しかけることにしてみた。
「えっと……」
だがやはり言葉が出てこなくて、少しの間だけ沈黙が流れる。
すると、彼女が唐突に口を開いた。
「あなたは、誰?」
彼女の声を聞いて、ドキッとする。
その美しい音色に、思わず聞き入ってしまいそうになったからだ。
(この子の声、綺麗すぎるよ)
私がそんなことを考えていると、再び彼女が問いかけてくる。
「あなたは、どうしてここにいるの?」
「あー……ううん、なんでもないよ」
答えようとして、途中で思い留まった。
なぜこんなことをしていたのかなんて、正直に話したところで信じてもらえないだろうと思ったからである。
それに、そもそも私自身ですらも、この世界に生きる全ての人間だって、皆等しく欠陥だらけだ。
だからこそ、誰かを責める事なんて出来ない。
誰もが同じくらい不完全だから。
それなのにどうして……。
こんなにも苦しいのか。
それでも尚、私は前に進もうとするのだろうか。
誰の為でもない。自分の為に。
全てを諦めた私が唯一望んだ事。
それは―――『生きたい』という願い。
ただそれだけの為に。
今になって思うのだ。
あの時、お前は何を思った?……あぁそうか、だから俺達は出逢ったんだな。
お前はいつもそうだよな。
俺はずっと独りぼっちなのにさ。……なんていうかさ、お前はずるいな。
自分の気持ちだけ押しつけておいて、 勝手に満足して、どっかに行っちゃうのかよ。
ほんっと、そういう所だけは昔から変わらないよな。……でもさ、やっぱり好きだわ。
お前のことが好きで好きでたまらないんだよ。
こんな風に思うのは、もう最後かもしれないけどさ。……だから最後に言うぜ。
俺はお前が好きだよ。
この世の誰よりも愛している。
例えそれが、一方通行の想いだ