テラーノベル
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私、ウィリアムは幼い頃から厳しく両親に育てられた。
まだ親の温もりが欲しい頃、1人この領地へと送られていた。
自分達と一緒にいると甘えが出ると考えた両親はまだ幼い私を置いていったのだ。
初めの数日はとうとう捨てられたのかと思い泣いて過ごした。
しかし泣いても勉強は待ってくれない。
両親が用意した家庭教師との勉強は一日中行われた。
心身共に疲れていた私を助けてくれたのはこの屋敷で働く使用人達だった。
しかし立場は違うのであからさまに話しかけたりはしてこない。
料理を工夫してくれたり、楽しそうな本を置いてくれたりと彼らが私になにかしてくれようとしていたことは感じていた。
しかしここでの平穏な生活も数年で終わった。
学園に通う年齢になるとすぐに家に戻され、いっそう厳しい日々を送った。
そして淡々と日々をこなし大人になり、プルメリアを譲り受け屋敷で暮らすことになるとあの領地から海産物が送られてきた。
彼らなりにお祝いのつもりだったのだろうが、その中にはプルメリアが見たこともない生物がいた。
私も初めての時は恐る恐る食べたものだ。
本当は嫌だったが出されたものを口にしないのは失礼だと思い食べてみるもその美味しさに驚いたものだ。
しかしプルメリアがそれを目にしてしまい、酷く嫌がっていたと報告を受けた。
せっかく送ってくれた物だったがプルメリアがそれを食べることはなかった。
そしていつの間にかプルメリアとの関係はどんどん険悪になり、お互い話もしない日々を送る。
ユウリができてもそれは変わらなかった。
変わらないどころかユウリが出来てからプルメリアとの関係は悪化したように思えた。
私としてもユウリが自分と同じように育つことにどんな違和感も持っていなかった。
全てが変わったのはプルメリアが事故にあった時からだ。
私が行けば怪我も悪化するだろうと近寄らないでいたら、目覚めたプルメリアは人が変わったように変化していた。
本当に記憶を少し失ったようで昔の事を覚えていない事もあるようだ。
そんなプルメリアはユウリを気にかけ一緒に過ごすようになっていた。
そして嫌悪感の塊のような顔で見ていた表情が嘘のようになくなり私をしっかりと見てくれるようになった。
そんなプルメリアと過ごす時間はいつの間にか私にとって癒しの時間となっていた。
プルメリアを通してユウリとの関係も良くなり、私は彼女達といる時間が何よりも大切になった。
今のプルメリアを見るとなにかしてあげたいと思うようになり、彼女が喜ぶ顔を見ると自分の心も温かくなるのだ。
アルバートにこの気持ちが何か聞いたところ泣きそうな顔をしながら〝恋〟だと教えられた。
結婚して何年も経つのに私は妻に初めて恋をした。
そんな彼女にここの土地をどうしても見てほしく誘ってみると喜んで了承してくれた。
ユウリとの関係はまだぎこちないがそれでもここに来ることを楽しみにしていた。
だからここを好きになってほしく色々と気をつけていたのに…
まさかここのメイドにそれを邪魔されるとは思っていなかった。
裏切られた気分に怒りが湧いてくる。
部屋に戻りプルメリアにこれまでの事を話すと彼女は黙って耳を傾けてくれた。
彼女に恋をしたところはうまく誤魔化しながら話す。
今頃好きになったと言われても彼女の気分を損ねてしまうかもしれないと思ったからだ。
私が一気に話すと「ちょっとまってて」と席を立ちお茶を入れてきてくれる。
「喉が乾いたでしょ? 少し飲んで落ち着いてください」
彼女に言われて初めて喉がカラカラな事に気がついた。
暖かいお茶を飲むとふっと気持ちが軽くなる。
すると彼女はカップを置いた私の手を取り話しかけてきた。
「話してくれてありがとうございます。あなたがそんなに気を使ってくれているなんて言われないとわかりませんでした」
ごめんなさいとプルメリアが頭を下げる。
彼女に謝らせたかったわけではないので顔をあげさせた。
「違う、君にそんな顔をさせたかったわけじゃないんだ」
「ええ、これはあなたの優しさに気が付かなかった私が情けなくて…」
プルメリアは眉を下げながら笑った。
「明日もう一度あのメイドと話をさせてください。処分はそれからでもいいと思うの」
「プルメリア」
彼女の提案に少し難色を示す。
バーバラと話して彼女がさらに嫌な思いをしたらと思うと気が気ではない。
そんな私の気持ちがわかったのかプルメリアは手を握りしめてきた。
「大丈夫です。私別に彼女の行動で嫌な思いをしてないんですもん」
「え?」
プルメリアの意外な言葉とその笑みに彼女を信じてみようと考えた。
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