コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
目を覚ますと、僕はまた あの場所 に来ていた。でも以前とは違い既に真っ黒な世界だった。僕は、少し離れたところに背を向けて立っている人を見つけた。きっと僕に話しかけてきた人だ。
「あの──────」
『ちっ。せっかく溜め込んで来た魔力がすっからかんじゃねえか。あの駄犬も仕留められなかったしよ。ブツブツ……』
なんかブツブツ言っている。僕には関係ない事だ。うん。
「あの……すみせん……!」
『また数年ここにこもるのかよクソが。……あぁ!?』
彼は独り言をやめ、僕に急接近。すごく怒っているようだ。
「うわっ?え、えっと、」
『さっきのことか?俺に感謝しろよ。お前の魔力と超超貴重な俺の魔力を使ってあの犬を追い返したんだからな』
「え?あ、ありがとうございます……?」
なんの事だろう?僕は犬なんて見てないけど……。それより、確認したいことがあったんだ。
僕の記憶のこと。
「君は誰なの?」
『……』
「どうしてここにいるの?」
『そりゃあ俺の……いや、まあ何となくだ』
「今なんか誤魔化したよね?」
『めんどくせぇガキだな……。次にここが白い新世界だった時に聞け』
白い新世界?ますます意味が分からない。
「初めて会った時、僕の記憶に何かした?」
『あー……だからな……』
彼はポリポリと頭をかきながら目をそらす。本当に何なのだろうか。せめて今の状況を説明して……
『ん、時間だな。ったく、次までにそのこんがらがった頭を整理しとけよ。俺が気になるのならな』
「えっ、」
その瞬間、ふと意識が飛んだ。
「────まって!!」
思わず手を伸ばした先は天井だった。両サイドには涙を浮かべたライ姉さんとアリサ姉さん。僕はあの世界から戻ってきたのだ。
「次……か。……ぐっ?!」
頭を回して始めて自分の体がどうなっているのか気づいた。そういえば僕、あの人に状況を教えてもらってない。どうして身体中が痛いんだ?
「「ラウロ!!!」」
「うわっ、痛っ、痛いよ姉さん!」
「だって、だってぇぇ〜〜」
子供のように泣きじゃくるライ姉さん。
「ぐすっ。ラウロ、貴方何時間も目を覚まさなかったのよ?」
「そうだよぉ〜心配したんだよぉ〜!ぐずっ」
とにかく2人を落ち着かせないと。全く、心配症だなぁ、この人たちは。
……あれ?僕、こんな風に2人を”視てた”っけ?まだ長い付き合いじゃないのに。僕、いや”俺”か?違う。おかしい。なんだか僕が僕じゃないみたいだ。あの場所から還ってきてあの人の感傷を受けたのか?分からない。
「……ラウロ?まだ傷が痛む?」
「ほらぁ!もっと良いポーション使えって言ったじゃんアリサぁ〜〜」
「これが今買える1番良い物だって一緒に何度も確認したでしょう?」
僕が少し黙っているとすぐ言い争いが始まる。
過保護な2人をどう収めたものか。
「大丈夫だよ。それより、どうして僕はここに……」
「覚えてないの?」
アリサ姉さんが一段と不安そうな表情を浮かべる。外が暗いことから、あの真っ黒な世界にいた時間からさほど立っていないようだけど、本当にどういう状況か分からない。森に入ってからの記憶が一切ない。
ましてや、ベッドに横たわる程の怪我をしたなんて……。
「……今の状況を教えくれる?」
「うん。森へ入ってからは簡単なスライム退治をしてたんだけどね、なんか大きな狼が来てラウロと戦い始めてね、私達は何も出来なくてね、ぐすん」
話の展開が急すぎて理解できないよ、ライ姉さん。でも、もしかしてあの人が言ってた犬って狼のことだったのかな?
とにかく、僕が今こうなっているのはあの黒い人が表にでて狼と戦ったせいなのだろう。この痛み、ただの筋肉痛だといいんだけど。
「今日はもう寝ましょう。ライ、電気消して」
「うん。……ラウロ、ごめんね。私がもっと気を張り巡らせていれば敵襲に備えられたのに」
「謝らなくていいよ。でも、これからも訓練を続けさせてくれないかな?加護を得られるまででもいいんだ」
「分かってる。加護を得るまでなんて言わないで。私たちはもう仲間なんだから」
「そうよ。貴方の願いは私たちが守るわ」
「ありがとう」
俺は初めから覚悟を決めている。基礎を学び、加護を受け取ればあとは簡単だ。一応冒険者登録をして、奴に近づけれさえすれば────。
「えっ……」
僕、やっぱりあの人と融合してるのか…?
考え方が明らかにおかしい。これは危険だ。今後もあの人が力を振るえば、僕は乗っ取られるのかもしれない。
でも、防ごうにも彼が出てくる条件が不明だ。怖い。それでも僕は知りたい。彼は誰なのか、僕の家族は今どうなっているのか。そして、白い世界と黒い世界についても。
「……ラウロ?」
「ううん、なんでもない。早速明日から訓練お願いします!!」
「体が治ってからね」
「うん!」
とにかく力をつけよう。
自分と謎の青年、2つの思考が混ざり合う中、ラウロは冷静に新たな目標を立てた。
家族の記憶が薄れていることも知らずに────