元貴 side …
寝室に着くと、若井は俺の事をベッドに投げ倒した。俺がベッドに倒れ込むと、若井はすぐに俺の上に馬乗りになる。
「やッ…やだッ…泣」
震える手に必死に力を込めて、逃げるように後ずさりするが、若井はジリジリと俺との距離を詰め、終いには俺の顔を掴んできた。
「…可哀想に、こんな顔しちゃって」
若井が親指で優しく強く、頬に流れた涙を拭う。それと同時に殴られた頬がピリッと痛む。若井の行動は優しさのはずなのに、ものすごく恐怖を感じた。
「泣かないで?元貴」
ドスの効いた若井の声は、頭の中にずっしりと響いて聞こえた。若井が何度拭っても、俺の頬は濡れるばかりだった。そんな俺を見かねた若井は更に俺との距離を詰め、優しく強引に口付けをした。部屋にマットなリップ音が響く。若井の唇はどこか生ぬるくて、なんだか生気を感じない。
「んッ…」
若井がゆっくりと唇を離す。俺が息をしようとすると、若井がそれを防ぐように俺の唇を舐める。若井に殴られて出来た口の端の傷口からは、小さく血が溢れてきていた。若井が俺の傷口を舐め上げると、傷口はピリッと痛んだ。
「わ゛ッわ゛かい゛ッ…泣」
恐る恐る彼の名前を呼ぶと、若井は俺のズボンをずるりと勢いよくずらしてきた。
「ッ!!いやッ、!やだッ!泣」
足をばたつかせて抵抗すると、若井は俺の太ももに顔を近づけた。次の瞬間、太ももに衝撃が走った。
「ん゛ッ、!!!泣」
若井が俺の太ももに噛み付いていた。ジリジリと太ももの付け根が痛む。若井がゆっくりと口を離すと、太ももには赤い歯型がくっきりと付けられていた。
「…も゛ッ、や゛だッ…泣」
溢れ出てくる涙を必死に隠した。拭っても拭っても零れてくる涙はキリがなかった。若井に泣き顔なんて見られたくない。見られてしまったらまた何かさせるかもしれなくて、怖くてたまらなかった。
「ひぐッ、泣…ぅ゛ッ…泣」
部屋に響いた俺の無ざまな泣き声。若井は黙ったままだった。今、若井はどんな顔をしているんだろう。まだ俺の事睨んだままかな。頭の中は若井のことばっかりだった。
「…元貴」
若井が俺の名前を呼ぶ。その時の声は、少しだけどす黒さは薄れていて、暖かく聞こえた。俺は小さな期待を胸に、恐る恐る顔を隠している手を退けてみる。
「元貴はほんとに自由だよね」
目の前には先程と変わらない瞳をした若井の姿があった。俺の小さな期待はすぐに粉々に打ち砕かれた。もしかしたら、あの頃の若井に戻ってくれたかもしれない。そんな風に思ったんだけどな。
コメント
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もうほんとにすきですだいすきです~!!毎回いいね100回くらい押してます最高ですっ
最高すぎます。。。 天才すぎますよ、🥹