担任の先生があいさつをするる。これから一日が始まる。憂鬱になりながらも俺は窓から見える稲荷神社の頂上を見る。いつも通り鳥居は朱色に輝いている。
「これから〜……」
担当の先生の号令が教室内に響いた。それから授業を受けてなんとなく意味を理解していた。面倒な移動教室も我慢して行く。それが一日だ。
それから昼休み。昼食を食べて午後の授業が始まる。そして、授業が終われば下校。また次の日も次の日もきっと同じ時間が過ぎる。
それから数日が過ぎたある日。真夏の暑さがまだまだ残るこの季節。俺はいつも通り学校へ登校していた。一限目の授業。俺はいつも通り窓から外を見ていた。そこから見える稲荷神社の頂上には社と朱色の鳥居が佇んでいた。すると、どこからか「坂口さん。坂口さん!」という声が聞こえた。その声は数学担当の原口先生に間違えはなかった。しかし、原口先生の姿は見当たらない。もしかすると、俺は幻でも…?あの少女を見たのも…と思った。
「坂口さん!坂口さん!」その声が段々近くなってくる。すると視界が暗転した。
「んん…」
俺は重たいまぶたを開ける。
「あれ…?」と少し思ったものの目の前を見た。そこにはいつもの教室、黒板そして、窓の外は……辺り一帯木がたくさんある林だった。
「坂口さん」
原口先生がそう言いながら黒板に書いてある問題を指さしていた。
「あ…えっと…」
方程式なんぞ分かりっこなかった。
そして俺の夏が終わった。
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