テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
近所の居酒屋で、お酒を飲みながら二人でご飯を食べる。
デートのために買った新しいワンピースが、なんだか居酒屋の雰囲気からは浮いている気がして、思わずため息をつくと、
「なんだよ、ため息なんかついて。食事ぐらい楽しそうにしろよ」
と、向かいの彼から睨まれた。
そのまるで咎めるような眼差しに、
(楽しいわけがないじゃない)
聞こえないよう口の中で言う。
……この後、部屋に帰って朝まで過ごすだけとか、どれだけワンパターンでマンネリなんだろうと感じる。
「……ねぇ、さっき雨降ってたの知ってる?」
たいした話題もなく、ふと思い出したことを彼に聞いてみた。
「雨? 知らないけど、それがどうかしたのか?」
「どうかしたのかじゃないし。電話しても寝てて、迎えにも来てくれないとか、」
ぶつぶつと言う私に、
「おまえ、ホントうるさくなったよな。さっきもため息とかついたりして、かわいくもないし。なんか……老けたんじゃね?」
彼がさも不機嫌そうに返してきた。
「老けた!?」ってどういうことよ? と、大声で訊き返す。
「声でか……ほら、そういうところだって」
ヘラヘラと笑う顔に、失礼すぎじゃないかと思う。
自分だって服装にもまるで気をつかわないとか老けたどころじゃないのにと、目の前の彼がいい加減憎たらしくも見えてきた。
なんだかこんな不毛な付き合いをだらだらと続けてる自分がやるせなくも思えて、「はぁ」と、またため息がこぼれる。
「だから、そのため息やめろよな。飯がマズくなんだろ」
言って、彼がジョッキからビールをゴクリと飲む。
一緒に食べてたってご飯も全然おいしくもないし、しゃべればけなし合うようなことしかできないとか、もう付き合う意味もないんじゃないかと感じた。
食べるだけ食べて、「じゃあ、帰るか」と、彼が席を立つ。
まだこっちは食べてるのにと思いながら、もうそんなことを言う気もなくて、ただ無言で後を付いていく。
マンションに着いて、部屋へ向かうエレベーターを待っている間、
「そう言えばさっき、ここの最上階に住んでる人と会ったんだけど」
ふと思い出して口にすると、
「最上階? それって、あの社長じゃないのか?」
そう彼が答えた。
「あの社長?」
「なんだよ、知らないのか? よくテレビとかにも出てるじゃん。IT企業の鷹騰社長だよ」
「たかとう……?」
口にして、ようやく思い出した──。
そうだ、どこかで見たことがあると思ったら……、
巨大IT企業 Coolz・Corporation(クールズ・コーポレーション)を一代で築いた、若きイケメン社長として、
テレビや雑誌とかでよく取り上げられてる──
あれって確か、鷹騰社長だ。
「そうだったんだ……」
「あの人って、男の俺から見てもかっこいいよな。おまえも、そう思っただろ?」
「うん……まぁ」と、曖昧に答える。
確かにかっこは良かったけれど、あの滲み出る暴君っぽさは、いくら見てくれをプラスしても、マイナスイメージの方が勝ってる気がした。
「俺も何度か会ったことあるけど、最上階とかに住んでて、ホントいかにも金持ってそうな雰囲気だよな」
「うん……」とだけ頷いて、なんか”金持ってそう”って言い方が、嫌な感じだなとも思った……。
コメント
1件
うわ、この話すごくリアルで胸がギュッとなる…💧 彼の「老けたんじゃね?」とか、ため息を咎めるトーン、めっちゃゾワッとした。 デートのために着たワンピースが浮いてるのも、なんか切ない…。 でも最後、あのイケメン社長の話が出てきて、ちょっと空気変わったね。 このあとどうなるんだろう。続きがすごく気になる…!
312
ホクロの住民
36
278
#学校
より
84