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「相談があってさ」
彼とは同じクラスになってから3ヶ月の時、突然話しかけられたのだ。別になんとも思ってなかったから断る理由はなかった。
[いつ空いてる?]
いつの間にかLINEが追加されていて当たり前のようにそう聞いてくる。今まで男の子からこんな積極的にされたことなんてなかったから少し舞い上がってしまったところもあったと思う。
…彼とのお喋りは思っていたよりも楽しかった。恋愛の価値観が合い(恋愛相談だった)面白くてノリが良くて細かい気遣いが出来るところを初めて知った。
[今日はほんとにありがとう!]
[いちか思ってたより面白くて楽しかった笑]
こういう名前呼びに私は弱いのだ。
《こちらこそありがとう〜》
《私もめっちゃ楽しかった笑》
また2人でお喋りしたいな、と思ったけれど迷惑になったら嫌だからこれでやめることにした。でも、
「いちかーー相談乗ってーー😭」
『えーなになにどしたー?』
「あ、ここだとちょっとまずいよね」
「屋上の手前のとこで話そ?時間大丈夫?」
『うん、大丈夫!』
心臓がドクドクしていた。今まで彼を目の前にした時にはなっていなかったのに。たぶん右手を繋がれているせいだろう。どうやらついさっき別なクラスの女の子に告白されたらしい。
「気持ちは嬉しいんだけどさ~、俺ゆきちゃんが好きだからなんかあやふやなのって逆に相手傷つけるよなーって」
『うん。私もそう思う。なんて返したの?』
「あー、ちょっと考えさせてって返した」
「でもぶっちゃけゆきちゃん俺の事1ミリも好きじゃないっぽいしこの先俺の事好きな人現れないかもしれないからさ、このチャンス無駄にしたくないって気持ちもあるんだよね」
嫌だった。
私のほうが、一緒にいる時間は長いと思う。
「んで、どうすればいいと思う?」
『…ふっ、なーんで私に聞いてくんのよー』
ちょっとふざけた感じで言う。
「いや、こういうとき頼れるのいちかしかいないからさ」
『いや他にもいるでしょ、男友達のほうよくない?』
「入学してからさ、いちか結構1人で本読んでることあったじゃん。でも知らない人に話しかけられた時すっごいちゃんと答えてて、あーこの人周りのことよく見てんなって思ったんだよね。」
私のこと見てたんだ
「んでさ、ちょっとしてからゆきちゃんが涙目で来た時あったじゃん。そんとき俺話しかけようか迷ったんだけど男じゃわかんないしなって思ってすっごい迷ってたのさ」
それは5月に起きたゆきちゃんが痴漢を受けた話だ。
「そしたらいちかが咄嗟にゆきちゃんに駆け寄って小さい声で話しかけてつれだしてくれたじゃん。俺それ見てさ、世の中にはこんなにいい人もいるもんなんだなって思ったんだよね。」
「ほら、俺はさ、ゆきちゃんのこと気になってたからよく見ててそういう変化には気づくけどさ、普通に生活してたら気づかないじゃん。でもいちかは気づいたんだよね、ほんと、びっくりした。」
あれは違う。ゆきちゃんを心配して連れてったのではなく姿全体から滲み出る助けて、というSOSのサインが見えて、話しかけなければ、という義務感によって動かされたものだった。かなり深刻そうだったから誰でも気づけたと思う。たまたま私が声をかけただけ。
たまたま、
偶然なのだ。
「その時から恋愛関係とか勉強とかで悩んでて男どもってすぐ噂広めるからさ、いちかみたいな子に相談したいって思って」
矢島くんは私の欲しい言葉をくれる。
「いや、いちかに相談したいって思って」
求めている言葉をいつも与えてくれる。
「やっぱりゆきちゃん好きなんだよなー」
でも、私のことが好きなわけではない。
「でもあの子もいい子そうだったしな、振るのもメンタルやられるよなー、」
『断ったほうがいいよ』
すぐにそう言った。告白した子のことなんで何も知らないくせに、
どんな気持ちの入れようだったかも知らないくせに。
「そう思う?」
『うん』
『曖昧なのって良くないよ。好きなら好きってちゃんと人決めてその人に尽くすべきだと思う。途中で告白されたから〜なんてふらふらしてそんな簡単に諦めるのって勿体ないよ』
『あと…思わせぶりも、逆に相手傷つけるだけだし』
『ちょっと期待させることほど罪なことって、ないでしょ』
「めっちゃわかる、。いちかの言うことは的を得てるよね、いつも」
正論を並べるのが得意なだけだ。
自分のために。
「じゃあ、断る。これはあくまで俺が決めたこと。それでその子が怒っても責任は俺だからいちかは気にしないでな笑」
『うん笑』
「ほんとに申し訳ないし自分がーって考えたらまじで辛いと思うわ。」
それはゆきちゃんに対して。
私じゃない。
手を引っ張ってこんな人目のつかないところでこんな近い距離で話しているのにも関わらず、彼が好きなのはゆきちゃん。私じゃない。
「あ、そろそろ時間だ」
『戻ろっか』
「うん、ありがと、ほんとに。」
『うん』
―数日後―
「いちか、今度また話聞いてもらえない?」『あ、うんいいけどいつ?』
「うーん電話で」
『あ、うん』
正直かなり驚いた。電話ってちょっと非日常な感じを味わえるもので男女でやることに憧れを抱いていた。
…📞「もしもし」
『あ、もしもし』
「なんか変な感じだな笑」
『んね笑』
『で、どした?』
「んーとね、重大発表がある笑」
『え?』
反射的に背筋を伸ばす。様々な場合に備えてどきどきしていた。
『なになに』
「うんとね、」
「…ゆきちゃん、彼氏いた、」
『え』
「失恋したーー」
『え、え、?、まじで?この間まではいなかったよね』
「うん、今週の火曜日だから、えーっと、一昨日、付き合い始めたらしい。」
『えー、そうなんだ、、。相手はどなた?』「ん、こうすけ笑」
『え?!うそ、まじで?!こうすけくんってかなと付き合ってなかった?』
「別れてたってことだね」
『え、え、まじ、?あのカップルめっちゃ仲良かったのに』
「それな。」
『ええ、どっちから告ったの』
「そこまではわかんないけど、どっちにしろ付き合うってことは両想いだったんだろおおお」
『うん、まあ、。』
『でも好きじゃないけど試しに付き合ってる可能性はあるよ』
「でもさ、付き合ってんだよ?俺がこれで諦めなかったら略奪するしかないし、こんな俺じゃこうすけに勝てるわけないし…」
『うん、悩みどころだね』
「でも俺さ、思ったんだけどゆきちゃんのこと気になってただけであって、好きまではいかなかったんじゃないかなって」
「可愛いなーとは思うけど性的な目で、なんかいい方悪いな笑、まあそういうことしたいとは全く思わないし、付き合ってからこうしたいってのも特にないし、うん」
「これ、好きって言わんよな」
『うーん、まあそういう見方をすればそうなるけど』
諦める必要はないんじゃないとは言えなかった。「……よし、俺、ゆきちゃん、諦める、。」
『…いいの?』
言葉選びを間違った気がする。
本当にそれでいいの?より諦めてくれてありがとう、いいの!?の喜びのほうが伝わってしまったっぽい。
「うん。まあいつかケジメつけなきゃなって思ってたし」
思ったより彼の声に勢いがあったのにほっとしてしまう自分がいた。
「新しい恋見つける!」
『うん、応援する』
括弧自分に。
―21:45―
今日はいつもより早く寝られそうだ。さっきお風呂を上がった私は自室でスマホを開いた。
…うん。通知なし
いつもなら21:00頃に彼からLINEが来るのだけど。
もう寝よう!
そう思い22:30にベッドに入った。
…⚡︎⚡︎⚡︎
ん?
携帯が震えていた。
📞…『もしもし』
「もしもし」
『え?えーと』
それは彼だった。
『矢島くん……?』
「うん。…ふっ、なんでそんな驚いてんの笑」『あ、誰からの連絡か見てなかったから、』
「見ないで出たのかよ笑」
「らしいな」
『うん笑』
今日はどうして電話してきたのかわからない。
しかもこんな時間に。
『今何時?』
「ん、1時笑」
自分で確かめればいいだろって言わない辺りが彼の優しさだ。
『1時!?』
「うん、ごめん笑」
『なにか、あった?』
「うーんと、なんか、声が聞きたいなって、」
『………!?!?』
「あ、えっとこれは、昨日まで毎日夜話してたからなんか習慣化しちゃってってことで、」
「別に好きとかじゃなくて普通に話したいなって」
もっと別な言い方してくれればこんなに目が覚めないのに。
『ん、えーと、うん笑』(パニクってる)「あー変なこと言ってごめん笑」
『しゃ、喋ろう!』
「おう笑」
こういうの、慣れてないから本気にしちゃう。
そこから私たちは1時間半も話してしまった。「そろそろ、切る?」
『あ、うん』
「ごめんほんと突然かけちゃって」
『ううん!楽しかったから全然いいよ、』
…『また、かけてきても、いいよ』
夜の勢いは本当に怖い。矢島くんはもしかしたらチャラいのかもしれない。他の人にも同じように話しかけてドキッとさせているのかもしれない。でも私だけだって信じたい。新しく見つけた恋の相手は自分であってほしい。ほんの少しでもそう思うのだ。そう思ってしまいたいのだ。
それからも彼はたくさん話しかけてくれた。頻度は特に変わらないが、ゆきちゃんに吹っ切れたことでより親しげに接してくれるようになった。「いちー」
『ん?』
呼び方もいつの間にか変わっていて、以前より教室で話す機会も増えた。
・・・『それでさ〜』
「ねねねね」
放課後に友達とおしゃべりをするこの時間に高校生を感じる。
『ん?』
「いちかさ、矢島くんのこと好きでしょ?」
『うえ?!』
「やっぱりー」
『え、なんでわかったの、』
「いや誰でもわかるっしょ」
モモは小学生の頃からの友人で、特段仲がいいって訳ではないけれど、言葉数が少なくても分かってくれる、そんな一番の友達だ。
「だいたい矢島くんから話しかけてるけどさ、いちかが話しかけられた時にめちゃくちゃ目輝かせてて、あ〜そゆことって思った」
自分では意識しないようにしてたつもりが、バレバレだったらしい…。
『うん、確かににやけてたかも』
「いや、かも、とかいうレベルじゃないよ?笑」『まじーーー?』
「でもさでもさ、私、流石に矢島くんいちかのこと好きだと思うんだよね」
『思う!?やっぱり?!』
「やっぱり笑笑笑」
そうなのだ。
謙遜で違うよ、と言えない程最近の矢島くんは私にデレデレなのだ、!!!
もう逆に好きじゃないところを探すほうが難しいくらいほんっとうに怪しいのだ。
「だってこの間さ、あ、英語の時」
『あ〜あれね笑』
それは3日前の英語の時間の話だ。
先生が一年の感謝を伝える文を即興で創りなさい、という課題を出し、毎回発言する訳ではないのに、矢島くん(以下やしま)は、手を挙げた。
―再現―
「はい」
「Itika, look at me for a second」
(いちか、ほんの少しだけこっちを見て)
ボーッとしていてよく聞いていなかったのだが、私の名前が聞こえたような気がしてふっと見た。
「At few last, we eyes keep.」
(やっと目が合ったね)
そう言いにこっと笑う彼の姿は何人の女子を虜にさせたのだろうか。
クラスがざわつき始める。
そこからは淡々とよく分からない英語の羅列が繰り返された。
「Please continue to be with me forever.」
(あなたはこれからもずっと私と居てください)
えっ、???????????
夢?
現実とは思いがたいほどロマンティックな言葉を私に届けてくるのだ。
どこかで女子がきゃ〜♡と言ったのを発端に、次々とザワザワし始めた。
なんと言えばいいか分からなくて
『yes…』
と答えてしまったのも良くなかったと思う。
―授業後―
数人の女子が周りを囲んでくる。
「え!2人って付き合ってんの!?」
「どっちから?」
「いつから!?」
もう付き合ってることを前提にちゃんちゃか話が進んでいく。
『付き合ってない!告白してない!』
そう何度言っても聞いてくれず、結局付き合ってるけどみんなには言えない、という関係だと思われて終わった。
…『ねえ、やしま!なんかみんなに勘違いされてんだけど』
「ん?いーじゃん面白くて笑」
『よくない!!!』
「てゆーか俺そういうつもりで言ったんじゃなかったんだけど」
このときから、ほんとかよ、と思っていた。普通に仲のいい女子に向かってそんなこと言っておいて、
ほんとかよ!?
って。
「外国だと割と感情表現って豊かだから別に仲良い友達に対してならさっきみたいなこと言うよ」やしまの兄は帰国子女で、やしまも2年程留学していたことがある。それでも日本でそんなこと言うのはおかしい!と思う。だって勘違いするもん。
「嫌だったらごめん。たしかにみんなの前で言ったのは良くなかったわ。」
いや、嫌じゃないけど、。むしろ嬉しいけど、。そう言ったら自分で認めてしまう気がしてなんとも言えなかった。
『うん』
…ということがあったのだ。
「矢島くんも矢島くんだよね。あまりにも積極的すぎてほんとに…」
『それなそれな?思わせぶりすぎる』
あとはこんなこともあった。
夜に電話をしているとき…
―回想―
「いつも相談乗ってくれてありがとね」
『ううん、やしまの話面白いからいいよ』
「そう?笑」
「あ、いちかはさ、好きな人とか、いないの?」『うーん、まあ、まあまあまあ…』
「なんだよその濁し方〜笑」
『まあまあ、って感じだから笑』
「え、教えてくんないの?」
『だってやしまも教えてくんないじゃん』
矢島には最近気になる人ができたらしい。
「いや、だってー、その子はまだ気になるって感じだからいつ気持ちが傾くか分からんし、曖昧な感じで人に言いたくないからさー」
『なるほどねー』
こういう辺りが私はいいなと思う。
「で、いちかは?」
『えー?やしまが言わないなら言わないよー』「えー」
『教えてよ』
「…いちか」
…??
『え?』
「名前で呼んでよ」
ああ、そういうことか、びっくりした。
一瞬、
焦った。
『ああ、うん。』
「リピートアフターミー、そうすけ」
『そうすけ』
「よろしい」
『え、なんか意味あんのこれ笑笑笑』
「うーん、俺が嬉しい笑笑笑」
もうそれでハートを撃ち抜かれたんだと思う。夜は感受性がより高くなるからいつにも増してドキドキした。
『ふふふっ笑』
『そうすけ、ね、』
「うん笑」
ここまで照れて好きじゃなかったら逆になに?!と思い始めてきていた。
――――「えー、それさ、絶対矢島くんいちかのこと好きだよ」
『そうかな〜、でもそうだったらいいな〜』
「告っちゃいなよ」
『え?マジで言ってる?』
「うん。私のお墨付き」
『えーーーー、』
人生で一度も告白したことなんてないし、できない、
「もしね、もし仮に無理だったとしてもね、死ぬわけじゃないし、」
たしかに。
「それに、矢島くん理系なんでしょ?じゃあ来年絶対クラス違うじゃん。付き合うなら今しかないよ!!!」
うぅ、そう言われると…
帰り道、ずっと考えていた。『そのまま別々なんて、嫌だな』よし!覚悟を決めてやしまと遊びに行くことを決めた。場所は地元で有名なイルミネーション
『やしま!』
「おー」
「案外あったかいな」
そう言ってこっちを見てニコッとするやしま。あぁ、やっぱり好きだなー改めて再認識する。「お!なあなあ!じゃがバターだってよ!」
『花より団子ならぬ…』
「イルミネーションよりじゃがバター、だろ?」また笑いながらこっちを見てくる。あーもうほんとに好き。
『うん笑』
「あ!あそこで写真撮ろ!!!」
📸
「これ映え〜ってやるんだろ?笑」
『いや言わないよ笑』
私たちは周りからどんな風に見えているんだろうか。
これはもうカップルのやることだとしか思えないのは私だけなのだろうか。
「いち!!こっち、 」
『ん?』
カシャッ
『え?撮った?』
「うん笑」
『言ってよ〜』
「いやいきなり感がいいんじゃんか笑」
『よくないーー』
肩をぐっと寄せられた時、ふわっといい香りが漂った。
無意識ってところがまた彼の悪い所。
…『寒くなってきたね』
「だよな」
「…」
『…』
もう、後戻りはできない。
『…あのさ、やしま』
「うん?」
『好きな人教えてあげよっか?』
「お?まじ?今なんかいっ笑」
『うん』
『…こんな私の事ちゃんと見てくれて褒めてくれて、困った時とか辛い時に声掛けてくれて、いっつも元気をくれるの』『麻痺してるだけかもしれないし、なんかのフィルターかかってるだけかもしれないんだけどね、どうしても素敵に見えちゃって』
『他の人にも同じことしてるって思うと嫌だなって、独り占めしたいって思うの。これ、好きってことだなって、気づいてたんだけどね、うだうだしてて全然言い出せなくて』
『でもね、!やっと決心できたの』
…『やしま、私、矢島くんが好きです』
……30秒くらい間があった。
「ごめん」
その一言を聞くなり、目頭が熱くなった。
どこかで勘違いしていたのだ。
私のこと絶対好きだって。
恋は盲目というけれど本当にその通りだと。
「ごめん。いちかのことは好きだけど、それは恋愛感情ではないと思う。色々さらけ出せる相手は大切だけど、俺にとってその相手は必ずしも恋人だとは思わないからさ」
遠回しに、なに勘違いしてんだよ、と言われた気がして何も言えなくなってしまった。
『うん。いいの、ありがとう』
メインのハートのオブジェを見ずに私は帰った。
髪でも切りに行こうかな