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天使(てんし、英: angel、[éɪndʒəl] (エィンジェル))
⋯ユダヤ教、キリスト教、イスラム教 の聖典や伝承に登場する神の使いである。
だから、私が「日本最聖の高校生」と呼ばれるのは間違っているのである。ライブの掛け声で「天使ちゃん」と呼ばれるたび、胸の奥で鈍い音がする。私はいつそれが耐えきれず溢れ出てしまうのかと、焦燥に駆られているというのに。いくらみんなに寛大に接しようとも、心の奥で自分自身を否定している。
「私じゃ天使なんかになれやしない」って。
学力では測れない心の美しさ、芯の強さを見ているという峯明高校に、私がいるのが何よりもの皮肉だった。本来自分はこんなところに居られる人間ではないと自覚はしていた。学校の掟に従うならば、中高一貫だからといって峯明中学校から峯明高校に内部生として進学するのではなく、どうせなら将来に虹を掛けられる聖桜やら、安曇やらに行くべきだったと。⋯それでも私がここにいるのは、自負していたから、いや、したかったからだ。本当は、「自分は自分が思っているほどひどい人間じゃない」って、その証明が欲しかったんだ。
下校を告げるチャイムと同時に教室を飛び出して、向かった先は私達のたまり場である楽屋だった。扉の側の表札には「姫守谺」、「如月キラ」、そして「御妃かぐや」の文字が並んでいた。どうしてこうもまた、私はこんなにお姫様みたいな名前なのか、見るたびうんざりする。
ノックをして入ろうとした時、後ろから声を掛けられた。
「キサキちゃん?」
振り向くと、そこにいたのは谺のマネージャーの明日無しふぉんだった。
「しふぉんさん、今来たんですか?」
「うん、こっちゃんにケーキ買わされに行ってたの。」
なんだパシリか。いつも、まああんな我儘女王様の相手をまともにしてやれるなと思う。私だって谺に並べるくらい我儘だけど⋯人間誰だっていつでも自分を棚に上げて他人を見下すものだ。こいつのケーキみたいな、アホみたいなキラキラネームに比べたら私の名前なんて大したことないんだろう。キサキなんて呼ばれるのももう慣れた。
しふぉんと一緒に楽屋に入ると、眠そうな顔のキラが座っていた。
「キサキ⋯お疲れ様。」
キラがあくびの混じった声で出迎える。私はそれに笑顔で返してから、肩に担いでいたキーホルダーだらけのスクールバッグをそっと棚に置いた。
「あれ、谺ちゃんいないんですか?」
しふぉんがケーキを買いに行ったってのに、当の本人が見当たらない。
「あー、こっちゃんが来る前に買っといてって言われたんだよね。」
しふぉんがケーキを紙箱から取り出しながら言う。棚に背を向け、しふぉんの方へ歩み寄り覗くと、紙箱からはケーキが4つほど出てきた。モンブランに、チーズケーキに、チョコケーキ。小さなマカロンが乗ったショートケーキもある。これはきっとキラのだろうな。
「キサキちゃんどれが良い?」
「私余ったので大丈夫です!しふぉんさんはチーズケーキ好きでしたよね?キラちゃんはマカロンが好きだし⋯谺ちゃんはチョコケーキとモンブラン、どっちを食べるかな⋯。」
うーん、と我ながらあざとく首をかしげて考え込んでいると、当の本人が丁度やってきた。
「あーーーー疲れた、電車混みすぎよね。キモいおっさんばっかりだし⋯」
いつもどおり文句を言いながら横目でこちらを確認して、ケーキを捉えた谺が私としふぉんの間に割り込んできた。
「ごくろーごくろー。あー美味しそ!谺、このチョコケーキがいい。いいよね?」
しふぉんがチーズケーキを選ぶと分かっているのか、谺は私と目を合わせる。
「うん、いいよ。私モンブラン食べるから、谺ちゃんはチョコケーキね。」
私が言い終えるよりも先に、谺は手を伸ばしてチョコケーキを取り出した。楽屋の中にはいつも通りのみんなの香水が混じった匂いと、甘いケーキの香りで包まれていた。
あとがき
読んでくれてありがとうございます!なんだか凄く長くなってしまいそうだったので無理やり切り上げました⋯。自分の絵を挿絵に入れたいと思っているのに、いざ描くと納得行くものが出来なくて、結局毎度文字だけの投稿になっちゃってます。谺のクズぶりが続いていますが、同レベのクズもいるので安心してください(無理)
今後こんなふうにちょっとしたあとがきを書いていくかもしれません。
次回もよろしくお願いします!