片手を押さえられたまま、唇を塞がれ、舌を絡め取られ、
熱を移されながら、元貴は心の奥で思っていた。
(……これ、もう勝ち負けじゃない)
息が苦しい。けど、それ以上に。
二宮の指が、シャツの間から肌をなぞる。
指先が触れただけで、そこから熱が伝染していくようだった。
「……ここ、弱いんだ?」
「っ…言わせたいだけでしょう……」
「うん。君のそういう声、聞きたくて仕方ない」
そのまま指が腰骨をなぞると、
元貴の背中がピクリと跳ねた。
「や……だっ……っ、そこ……!」
その反応に、二宮の目が細くなる。
「……元貴…」
名前を呼ばれた瞬間、
一気に、心のどこかの糸が切れた。
肩の力が抜け、喉から甘い息が漏れる。
触れてほしくないのに、触れてほしい。
そんな相反する欲望に、頭が沸騰していく。
「……僕、もう…ダメかも」
その言葉に、二宮の動きが一瞬止まる。
「……もう?」
「だって…こんなに……ずるい人だったなんて……っ」
言葉にならない喘ぎを堪えながら、
シャツの下から滲む汗を伝って、元貴の体温が高くなっていく。
「じゃあ……もっと、教えてあげる」
そう言った二宮は、元貴の両脚をベッドに押し広げる。
脱がせられるよりも、ゆっくりと、じれったく。
そして、その間中ずっと、目は逸らさずに。
「見てて。俺にどう壊されていくか」
「っ……ほんと、最低……っ」
「お前が言うと、ご褒美に聞こえる」
太ももに触れる手が、指先だけで撫でるように這う。
焦らすことが目的じゃない。
“どうしたらこの人が気持ちよく壊れていくか”、
それを知り尽くしたような動きだった。
「んっ……は、ぁ……っ」
快感が、喉を突き抜けて声になる。
そのまま、二宮の舌が滑り込む。
太もも、内側、腰の窪み――
一つ一つ確かめるように、キスで刻印していく。
そして、元貴の中心に舌を這わせる。
「ああっ……!二宮さんっ……やば……んっ!」
「……元貴、可愛い…」
唇がどんどん深くなっていく。
もう、音が隠せない。
気持ち良すぎて、二宮の頭を手で押さえつける。
ぐちゃ、ぴちゃ、と淫らな音が重なり、
それに混ざる元貴の喘ぎが、
ベッドの上をしっとりと湿らせていく。
「んっ……だ、め……っ、も、もう……」
「なにがダメなの?」
「わかってて聞くな……っ!」
ついに、元貴の腰が跳ね上がる。
もう、自分じゃ抑えきれない。
快楽が限界を越えた瞬間、
吐き出すような声が喉から漏れた。
「あ、ああっ、も、ダメ、いっ……く……っ!」
その瞬間。
身体が震えて、目の奥が白く染まった。
絶頂。
全身が一瞬、熱と共に解放される。
その崩れた元貴を、二宮が優しく抱きしめる。
「なぁ、可愛すぎるんだけど……」
「うるさい……」
「じゃあ、もう一回する?」
「……っ、バカ、鬼……っ」
「元貴が、また欲しそうな顔してるから」
今度は、ゆっくりと元貴の脚を自分の腰に引き寄せながら――
二宮が耳元で囁いた。
「……朝まで、離さないよ」
その言葉と共に、また身体が重なり合う。
もう焦らしも、駆け引きもない。
ここからは、ただ求め合うだけ。
濡れた肌が重なり、唇が何度も塞がり、
声と声が混ざり合う夜の中――
ふたりは何度も果てて、何度も抱き合って、
どちらが崩れたかもわからないほど、
一つに溶けていった。
コメント
4件
うわぁ、凄ぃ… 語彙力半端ない… 直接的な表現が抑えられてて、凄く個人的に読みやすい小説でした。 主様の言葉選びと、物語の進み方凄く刺さります。 コメント失礼しました。
ホント主さんの文章の書き方好きです…🫶