──────???視点──────
「──────はッ、はッ、」
私──────菓子は衝撃に耐えきれず、息も絶え絶えになる。同時に、先程の光景がフラッシュバックしてくる。天秤の冷たい感覚。飛ぶことも出来ず、天秤から離れることすらできない。死を感じるまでの恐怖。降りることが出来ない、強制。そして──────ぜんさんが目を見開いて、涙にも気づかないほど硬直した表情。そして、──────死ぬ直前、何かを叫ぼうとして、息を大きく吸った肩の動き。それらがフラッシュバックする度に、私の呼吸はまた、不安定になる。
「はッ───カヒュッは、ッ──、」
──────???視点──────
「ごめんなさい。ぜんさん。」
そう言った瞬間、菓子さんの手から種が飛んでくる。それくらいならなんてこともない、が──────しかし、そのサイズはぽれの顔くらいの大きさだった。そうなってくると話は変わってくる。それに気づいて避けようとするが、それは肩を貫通する。ブシュッとまるで炭酸水のように軽い音がする。が、その出血量は馬鹿にならない。赤色の血が天秤を汚す。そして、ぽれ側に傾く。と、同時に菓子さん側は少し上がる。
「──────え?菓子、さん、、?」
ぽれは驚いてそちらに目を見やる。その目はどこまでも冷徹で、冷酷で。そして、まだ追撃するようで、また、種が噴射される。
「───なんでお前の為に私が死なないといけないの?」
その言葉と共に、また、噴射される。ぽれは自身の意識を一瞬手放し、いつぞやの時に丸呑みした男騎士の姿へと変える。その能力は『盾に当たった攻撃を跳ね返す』というもの。最強、という能力では無いが、役に立つ能力ではある。───例えばこんな時に。
俺は手早く盾を取り出し、そして、構える。ちょうど俺の姿がすっぽりと守れるくらいの大きさだ。
「───ごめんなさいね。私はまだ死ねないの。」
「───え…?」
ぽれの下に種が植え付けられており、その種はすくすくと育ち、天秤につるを絡ませ、そして、ぽれの首元につるが巻かれ、そのまま──────。
その時、ガクンッと天秤が下がる。
───菓子さんの方が。
「あッッ───え…ッ!?」
それと同時にぽれの天秤は高くあがり、天秤に足をつけることが出来る。
「あッ菓子さ──────ッッ!!!」
下に下がった天秤を見る。そこには───背中から落ちてたようで、菓子さんが横たわっている。───地面にベッタリと血の花を咲かせて。それを確認するのと同時にぽれはそのまま落下する。不思議と痛みはなく、地面の雲が衝撃を吸収してくれたことが分かる。
しかし、そんなことを気にしている場合ではなかった。今は、菓子さんの安否を確認しなければならない。
「菓子さんッッ!!!」
ぽれが叫びながら近づく。───菓子さんの目が、口が開くことはもうなかった。
───即死だった。
「あ”ッあぁ…ッな、んでッッ」
ぽれの嗚咽がしばらく響く。その時、脳内で何かが囁くような声が聞こえる。
───食べてしまえ。丸呑みしてしまえ。
「嫌だぁッッ!!」
ぽれはこの光景に見覚えがあった。───親友だ。親友も食べろ、と囁いてきた。その声が、脳でフラッシュバックしているのかもしれない。
「はッ、はッ───」
ぽれはそうして、手を伸ばす。違う。このままでは、菓子さんの思いが、気持ちが、記憶が。消えてしまうから。しょうがないのだ。ぽれが、その意志を、引き継ぐのだ。
──────パクッ
そんな軽い音ともに菓子さんは目の前から消える。空腹が満たされる。そんな心地よい感覚のはずなのに。吐き気が止まらない。吐けるわけが無いのに、吐いたとしても菓子さんが戻るわけじゃないのに。涙がとめどなく溢れてくる。呼吸が、苦しい。
──────ぽれのせいで死んだ。ぽれのせいだ。ぽれのせいで、菓子さんが死んだ。あんな、冷静で、強い菓子さんがぽれのせいで、せいで。死んだのだ。
なら、死んでないことにしてしまおう。ぽれは───菓子さんになる。
それと同時に、菓子さんの記憶が流れ込んでくる。
───『ぜんさんを助けないと。』『今まで迷惑をかけたんだから。今度は私が恩を返さないと。』『…普通に私が死ぬだけじゃぜんさんはそれを引きずるのでは?』『───最後くらい、私が敵役を努めましょう。』『ごめんなさい。ごめんなさい。もう少しだけ、もう少しだけ。』『───生きて。』
「がッッ───はッ───ヒュゥッ、」
あぁ、菓子さんはぽれのために、悪役を演じてまで。ぽれが死ぬべきだった。あれは。賢く、知性に溢れる菓子さんの方が、この先必要なのに。戦闘にも優れる菓子さん。───あぁ。ああああああああぁぁぁッッ!!!!!
「あ”あ”ああッ──、!ああああああぁ──ッ─ッッぁぁッッ!!!!!」
──────【発狂】──────
ここで切ります!菓子さん、退場です。
あっさりと死んでいきますよ!その割には精神ダメージでかいですけど…。あはは…。
ぜんさんはしばらく菓子さんとして行動すると思います。しばらく発狂しときますね〜。それと、今回は菓子さんの優しい面を書きたかったんですよね。茶子さんの存在が消えたせいで菓子さんの性格はひねくれましたが、根の優しさは変わらない、仲間を大切に思っている、ということを書けて良かったです。ちなみに、200話目なのでなにかしようと思ったり、イラストを描こうと思いましたが、イラストは間に合わず、なんなら今200話目って気づいたという…。うーん、でもなにかしたいんですよね…。
いい案があればコメントで教えてくれると…。
もしくは次は特別会にしたいと思います!みんなで集まってなんかワイワイさせときますか!
それでは、おつはる!
コメント
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命が軽い()
やっぱり菓子さんは仲間想いですね…!ぜんさん色々な事が重なって精神的に心配です…