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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「最初からみんなを、好きでいられて良かったな」

白に染まった部屋に青年が一人。

空を見上げ、ぽつりと零した。




「は、……?」

「余命、1年、って、……」

「ないちゃん、死んじゃう、の……?」

白いベッドに横たわる俺と、信じられないとでも言いたげなみんな。

いや、信じたくないのかな。

「うん。治療法もないんだって、」

いつもはあんなにうるさいのに、今、耳に入ってくるのは蝉の声だけ。

「あーあ、武道館、立ちたかったなぁ……w」

まだ歌えはするだろうけど、もう踊れる体力もないかなぁ。体力はある方だったのに。

「なんで、なんでそんな元気そうに振る舞うん?死んでまうんやで?お前。」

悲しそうな、怒ったような、まろの声。

まろともしたいこと、いっぱいあったのにな。

「なんで、って、治療法ないんだよ?足掻いても仕方ないって。もう俺は死ぬまでの1年楽しむって決めてんのっ!」

場の空気に合わない俺の元気な声。

そう、もう俺は決めてるんだ。

死には抗わないって。

この1年でメンバーに、社員さんに、リスナーさんに恩返しするんだって。

そう決めたから。


しばらくして、みんなは病室を後にした。

「都会じゃ、星見えないかぁ」

空は随分暗くなっていて、ビルや住宅の電気がキラキラ光る。

今日で世界が終わってしまえば、俺の生とか死とか関係ないのに。

そしたら、全部ほっぽって永遠にいられるのに。

なんて考えて、メンヘラっぽいなと自嘲する。

去年みんなで見た花火。

来年も来ようね、なんて誰かが言って。

笑いあった。

俺がこんなんじゃなければ、今頃には見れているのだろうか。

“Like a Fire Flower”

花火は打ち上がるときは華やかで、人の目を集める。

それでも、消えるときは一瞬で、儚い。

命みたいに、儚い。

夢、打ち上げたかったな。

そっと呟く。

「最初からこんな世界、好きにならなければよかった」

なんて嘘だけど。



俺の寿命が半年ほどになった頃。

最初の頃は不自然だったみんなの笑顔もだんだん、自然になってきて。

そろそろ、俺の寿命のことを公表しようということになった。

もちろん俺はまだ活動を続けている。

最後の最期まで活動には気を抜かないって決めたから。手が、口が、身体が、動かなくなるまでリスナーさんたちを笑顔にするって決めたから。

生配信でこのことを公表すれば、凄い速さで動いていくコメント欄。

みんな俺のこと心配してくれてるんだってちょっと嬉しくなった。不謹慎かもだけど。

それからずっと、鳴り止まないDM通知。エゴサをすればいれりすみんなの呟きが一気に表示される。

俺の過去のことだとか、自分の思いを綴った長文のツイートだとか。武道館ライブのことだって。

いつもなら止まらないスクロールする手が、今日は中々動かなくて、ただただ一呟きが、一粒の涙になってシーツに斑点模様を作る。

覚悟、決めてたのに。

ちょっとの、生きたいと思う心が顔を出す。

深夜0時。大好き、とだけツイートしスマホを閉じた。

“最初からこんな世界、好きにならなければよかった”

なんて、バレてるんだろうな。



残りの寿命はあと1日。

俺は病室にメンバーを集めた。

「俺たちさ、生まれも、育ちも、バラバラで、見た目は勿論、好きなものもそれぞれじゃん?」

身体は重くて、頑張れば動かせる程度。

身体中には幾つもの管がついている。

そんな俺の、最後に残ったのは歌い手らしい、声だった。

「そんな、俺らがさ、たった一つの夢を目指して、心を一つにして、ここまでできたの、すごいと思わない?」

体力も、もう無いらしく、途切れ途切れの言葉を紡ぐ。

ふと、左手に温もりと重さが伝わる。

「ねぇっ、ないちゃん、!僕たちね、っ武道館、決まったんだよ、…!」

「しかも、2daysなんやで、っ!」

今にも泣きそうな、いむしょーの声。

こんなときまで、元気に振る舞ってくれてありがとうね。

「そっかぁ、すごいね。頑張ったね。」

そう言って2人の頭を撫でる。

すると、左手に加わる力が強くなった。

「……、やだよっ、!ないくんっ!死んじゃう、なんて……!」

ふと、泣きそうな、というかもう泣いてしまっているりうらの声がした。

こういう所でりうらはやっぱ最年少なんだなと実感する。

「ごめんねぇ、もう俺生きられないんだよ。そう言ってくれてありがとう。大好きだよ、りうら。」

前より細くなった腕で、りうらの体を抱きしめれば、腕の中で啜り泣く声が聞こえた。

まろにきの方を向けば、すんと鼻を啜りながら子供組を宥めていた。

この2人はやっぱ大人だな。そう感じた。

「これからのことは、2人に任せるね。あにきとまろならきっと、良いグループにしてくれるから。」

そう笑いかけ、2人の頭も撫でてあげた。

「ないこ、……っ、」

「ッ、……」

声を殺して、涙を零すまろにき。

俺のために泣いてくれるメンバー。ずっとずっと心配してくれるリスナーさん。

こんな良い仲間を持って、俺は幸せだなぁ。

人生は線香花火みたいで、光り輝くのは一瞬でしかない。

その一瞬が、俺にとってはこの活動だった。

一瞬でも、みんなのことを笑顔にできて俺は幸せだった。

だから、ねえ、最期は泣かないで?俺はみんなの笑顔が大好きなんだから。


「最初からみんなのことを、好きでいられて、良かった。」




『本日は、毎年行われている花火大会です。会場の__』

夜空に輝く色とりどりの火花。

赤、水、紫、青、黄。

そして、桃色。

それぞれの色の火花が誰もいなくなった真っ白な空間を染め上げた。




※完全なる自己解釈です。

※Fire◎Flowerにハマってしまった今日此の頃。

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コメント

5

ユーザー

あ、あれ…?目から鼻水が…((汚ねぇな 命って儚いんだなと改めて思い知らされたし、いれいすは6人で1つだなと感じました いむしょーで涙腺崩壊しました、どうしてくれるんですか?!

ユーザー

えっ、ちょっ、、目がマーライオンにっっ((え

ユーザー

えちょっと泣かせないでください(?) 死ぬほど好きなんですけど いい話すぎでは……?

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