ミィコは荒い呼吸とともに目を覚ました。 額には冷たい汗。心臓が痛いほどに鼓動していた。
だが、目を開けてもそこは安堵の世界ではなかった。
耳には、まだあの声がこびりついていた。
「リナの誕生日なんか、誰も祝ってないよね」
彩花の冷笑と、美咲の無言の同意。その残響が、何度も脳内でリフレインする。
夢だったとわかっていても、現実の空気がそれを否定しない。
ベッドの上、ミィコは毛布にくるまったまま膝を抱えた。
「私……まだ、弱い……」
その呟きが、まるで自分自身へのナイフのように胸に突き刺さる。
強くなったはずだった。前に進もうと決めたはずだった。
でも、あの頃の記憶はあまりにも生々しく、心を削り続ける。
“乗り越えなければ”
そう思えば思うほど、内側から湧き上がる声が邪魔をする。
「リナには、誰もいないよね」
「また一人で勝手に目立って、孤立していくんだよ」
まただ。また、あの底なしの穴へ引きずり戻される。
彼女は目をぎゅっと閉じた。視界を断っても、声は消えない。
まぶたの裏には、過去の傷と、過去の自分が焼きついていた。
「……やっぱり……ダメだ……」
弱々しく漏れた声が、静かな部屋に沈んでいく。
壁の時計が刻む音だけが、無慈悲に時間を告げていた。
気づけば、ミィコの頬を伝う涙が枕を濡らしていた。夢の中だけじゃない。
現実もまた、彼女を癒してはくれなかった。
どれだけ光を求めても、今はまだ届かない。
けれど、その奥底には、小さな予感だけが残っていた。
ほんのわずかでも、あの声を思い出せるなら…
でも今はまだ、それすら掴めずにいる。
そしてミィコは、音もなく、もう一度まぶたを閉じた。
現実の中に、闇はまだ残っていた。
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