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『消えた歌、響く声』

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『消えた歌、響く声』

34 - 第34話 霧の中のひまわり

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2025年06月06日

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ミィコはしばらくベッドの中で身動きできずにいた。

胸の奥が締めつけられるように苦しくて、呼吸さえ浅くなる。まぶたを開けると夢の残滓が現実に溶け込んでいく気がして怖い。


かつて味わった痛みや、あのときの沈黙、居場所を失った感覚が、肌にまとわりついて離れない。


それはまるで、朝の光を拒むような、重く冷たい霧だった。


彼女は震える指でシーツを握りしめ、何度も深呼吸を繰り返すが、身体は重く、まるで動けない。


その時、ふと脳裏に浮かんだのは、セバスが描いたひまわりの絵だった。

鮮やかな黄色が目の前に広がり、まるで自分に語りかけるように感じられる。


――負けないで。


何度も目にしたその絵は、今、彼女にとって唯一の光だった。

セバスの温かな手が込められたそのひまわりは、ただの絵ではなかった。


それは、彼の思いが込められた、彼女を支える力そのものだった。


その優しさが、画面越しでもしっかりと伝わってきて、胸の奥でじわじわと温かさが広がり、心の奥底から力が湧いてくるのを感じた。


ゆっくりと身を起こし、枕元に置かれたスマートフォンを手に取る。


震える指でロックを解除し、そこに映し出された「ひまわり」の絵を見つめる。


その鮮やかな色が目に飛び込んできた瞬間、ミィコはふっと微笑みがこぼれた。

それは小さな微笑みだったけれど、彼女にとっては確かな希望の証だった。


その瞬間、

きぃちゃんの優しい声が頭の中で響いた。

「大好きだよ」


タクタクさんの低く穏やかな声が背中を押してくれる。

「頑張れよ」


ヨミ姐の力強い言葉が、胸に熱く響く。

「負けるな、あんたならやれる」


それぞれの言葉が、彼女の心に深く刻まれ、バラバラになりかけていた心を少しずつ繋いでいく。


”誰かがいる。私は一人じゃない。”


その想いが、心の底から湧き上がってきた。涙が滲み、喉が詰まる。


過去の傷が疼くけれど、もうそれを恐れることはない。


彼女はもう一度、決意を固める。

目を閉じ、深い呼吸をひとつ。

心が少しずつ落ち着くのを感じる。


そして、彼女は静かに呟いた。


「もう、逃げない」


その声は震えながらも、確かに彼女の心から発せられたものだった。

決意は、まだ小さな種かもしれない。


でもそれは、確かに心の中で根を張り、少しずつ成長し始めていた。


震える膝、残る涙、それらを全て抱えて進んでいく覚悟が彼女の中に湧き上がる。

少しずつ、少しずつでいい。


それでも、彼女はもう逃げない。

ひまわりのように、ただまっすぐ、光に向かって。


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『消えた歌、響く声』

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