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「第四章 赤月の魔女 ―第一戦・中盤 」(感情の揺らぎ)
銀色の巨人が、膝をついた。
次の瞬間、その全身を走る紋様が赤く染まり、まるで心臓の鼓動のように脈打ち始める。
空気が重くなり、赤月の光がさらに強く降り注いだ。
「……来る!」
セレスティアが星剣を握り直す。
巨人は地を蹴り、稲妻のような速さで迫ってきた。
その拳が振り下ろされる刹那、あなたは星剣で受け止めたが、衝撃で足が地面にめり込む。
剣越しに伝わる振動が骨まで響く――押し負ける。
視界の端で、魔女が微笑むのが見えた。
「ほら……昔みたいに、守りきれないでしょう?」
その言葉が、セレスティアの表情をわずかに曇らせた。
一瞬、彼女の瞳が揺れる――その奥に、遠い星の光景が映った。
小さな村。
炎に包まれ、泣き叫ぶ人々。
その中心で、今の巨人と同じ銀の姿が、すべてを踏み潰していく。
そして、若き日のセレスティアが立っていた。
彼女の隣には……赤月の魔女が、同じ方向を見ていた。
「……やめて……」
彼女が小さく呟くと同時に、巨人の拳があなたたちを吹き飛ばす。
視界が赤に染まり、土と血の味が口に広がった。
倒れたあなたの耳に、震える声が届く。
「もう……誰も失いたくないのに……」
その声は、剣を振るう時の勇敢な戦士ではなく、
たった一人の少女のものだった。
次の瞬間、あなたの中で何かがはっきりと決まった。
――彼女を守る。
この戦いがどんな結末を迎えようとも。