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ーーーーーヤマトが青髪の男と戦闘を始める少し前に遡る。
「旅人さん! コイツが悪鬼の正体です!! 今は人に化けていますが、油断した隙に攻撃して来ます!!」
ドレイクが声を上げた瞬間、ヤマトは風神魔法 ウィンドストームを使って青髪の男に襲い掛かった。
「ど、どうしたんですか!? ヤマト!? 彼から悪い魔力は感じないですよ!?」
しかし、ヤマトに僕の声は届かず、何か悪いモノでも見ているかのように次々と魔法攻撃を繰り出す。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!? なんなんだ急に!?」
男は両手でヤマトの炎魔法 ラグマを防いだ。
まずい……炎神魔法 ラグマ・ゴアに切り替わったら男性に危害が加えられてしまう……!
「ラーチさん! すぐにヤマトを攻撃をしてください! 僕が保障します!!」
「いいんだね! ”水魔法 アクアスチーム” !」
そして、水の神 ラーチから鋭い水魔法が放たれる。
ヤマトは慌てて回避行動を取った。
ラーチの攻撃を見切っている辺り、ヤマトに理性は残っているように伺える。
もし操られているだけなら、ラーチの水魔法が爆発することまで考えられず、盾で防御しようとするはず。
今把握できることは、ヤマトの意識、脳処理能力もそのままに、男性に襲い掛かったことになる。
「誰だか分からないが、助かったよ……。俺は攻撃魔法が使えないどころか、戦闘慣れもしていないんだ……」
男はそう言うと、急いで僕たちの背後に回った。
やはり、一番おかしいのはドレイクだ。
急に男性を悪鬼だと言い、それからヤマトの行動がおかしくなった。
この悪鬼討伐任務、何か裏がある……。
しかし、ヤマトも大分戦闘スキルと覚醒が高まってしまっている……。
いくら水の神が居たとしても、止めるのは困難を極める……。
すると、ヤマトの向きは急に変わり、僕へと風神魔法 ウィンドストームで前進して来た。
「仕方ない……。”光魔法 オーバー” !! ラーチ、今のうちに水魔法で牽制をお願いします!!」
取り敢えずヤマトと距離は空けないと……!
近接戦闘でなければ、僕の魔法も駆使してヤマトを封じ、ドレイクを問い詰められるかも知れない。
僅か三秒ではラーチの水魔法は当たらず、ヤマトは水魔法に向けて光剣を振り翳した。
何故、光剣を……?
「 “水魔法 アクアガン” 」
ヤマトの光剣から、大きな水魔法が放たれ、ラーチの水魔法と衝突し、ラーチの水魔法は空気中で暴発した。
「ヤマトの……水魔法か……!」
水魔法すら使えると言うことは、既にラーチから加護を受け取っているヤマトは、水神魔法も使えるようになっているはずだ……。
まさか、水魔法は遠距離攻撃だったなんて……。
僕も、新しい力のお披露目をするしかない。
「ラーチ、全力で相手して構いません。水神魔法も最悪使用して頂いて大丈夫です……!」
「へぇ……ヤマトくんはそこまで耐えられるんだね。なら僕もあまり加減はしてあげられそうにないよ……!」
ラーチが戦闘モードに切り替わると、今までの無邪気さは消え、今までの神たちのような風格が現れた。
「さあ、本気で行くよ……ヤマトくん……!」
その気配を悟ったのか、ヤマトは光剣を構える。
「 “水魔法 アクアガン” 」
再び、ヤマトの光剣からは水魔法が放たれる。
光剣は一度ヤマトに手渡してしまった為、持った者が手放さない限りは僕にも消すことが出来ない。
「そんなの簡単に避けられちゃうよー!」
ラーチはヤマトの水魔法を軽くジャンプして交わす。
しかし、
「 “水神魔法 アクア・ランズ” 」
ラーチが避けたはずの水魔法は、急に向きと速度を変え、再びラーチの背後に襲い掛かる。
ヤマトの水神魔法は、水魔法を遠隔で操作する力か……!!
そこに、すかさず青髪の男性が割って入った。
ヤマトの水魔法は、男性の手に触れると消滅した。
「なんか、助けられてもらってばかりだからな……! 攻撃は出来ないが、俺は盾にはなれるんだ……! 協力させてくれ……!」
原理は分からないが、この男性は手に触れた対象の魔法を消滅させる力……?があるようだ。
ヤマトの炎神魔法に似た魔法なのか……?
でも盾がいるなら助かる。
あとは、時間稼ぎさえ出来れば……!
そんな中、ドレイクは、不穏な笑みを浮かべながら僕の背後で囁く。
「旅人さん、どうしたんでしょうね?」
「もう分かっていますよ。『洗脳』ですね」
「ふふ……。流石は天使族……。その通り。昨夜、彼に触れた瞬間に、洗脳を掛けさせて頂きました。想像以上、流石の戦闘能力だ……!」
「あなたの目的は何ですか……?」
「それは言えません。水の神も同行することは誤算でしたが、まあ、もう直ぐ私の目的は果たせるでしょう」
僕に攻撃魔法が使えないことを知っているから、こんなにも堂々と、ドレイクは僕に接近して来ているんだ……。
でも、憶測ではあるが、ドレイクは自分に絶対の自信があり、計画通りに全て事が運ぶと思っている。
だから、言う事全てがきっと真実なのだろう。
だとしたら、本当にドレイクは攻撃魔法は使えない。
それならば……
「それは、どうでしょうね?」
まだ、僕たちに勝算はある。
僕は、嫌味ったらしい笑みをドレイクに向けた。
「今更何ができると? 水の神の水の加護を使用しても、きっと旅人さんなら防げるでしょう! あんな洞窟で暮らす戦闘経験の浅い彼が加わり、残すは能無しの天使。もう、貴方たちに私を攻撃する手段はない!!」
そこに、一本の矢が放たれた。
「僕は少しお節介が過ぎると思っていました。世界救済の旅ですからね。でも、ヤマトは困っている方達を見放しておけなかった。それが功を奏したんですかね……」
ゴォン!!!
放たれた矢は、洞窟に当たると、大きな音を発し、ゴロゴロと崩れ始める。
「僕たちには、仲間がいるんです」
「カナンたいいん! ただいま参上〜!!」
崩壊する岩雪崩から必死に回避するドレイク。
その隙を突き、柴色の光がドレイクを捕らえる。
「やっぱり私……許せないことは曲げられない。『正論』とか『正義』とか、本物なんて私には分からないよ……。でも私はお母さんが好きだった ……! お父さんだって好きだったの……! ヤマトが……カナンが……この人たちのことが、私はもう好きになってしまったから……。『必要な犠牲』とか、私には分からないよ……! 私はもう、大切な人を失いたくない!!」
涙をポロポロと溢し、セーカはドレイクを押し倒して、首元を掴みながら声を荒げた。
「人の為なんだよね……お兄ちゃんのしてることは……。分かったよ……。すごく考えた。でも……」
そう言うと、セーカの鎧はバチバチと光る。
「ごめんなさい……」
形勢逆転は出来た……!
龍族の企みは阻止したい……けど、セーカに人殺しなんてさせたくない……!
オーバー……ダメだ……まだ使えない……!
セーカが涙を落とした刹那、風が舞い込む。
「ほら、また落としてるぞ、セーカ」
セーカの首元を掴んだ手を、ヤマトの盾が覆い、ヤマトはセーカのコップを服の内側から差し出した。
「ヤマト……? そのコップ……昨日の……」
「なんだよ……。みんなが操られてると思って必死に戦っていたと思えば、僕が操られちゃってたんだな……」
「遅いですよ、ヤマト」
「世話かけたみたいだな、アゲル。そして、ナイスだ! カナン隊員!」
押さえ付けられるドレイクは、声を荒げる。
「何故、旅人は目を覚ました……! 何が起きているんですか……!?」
「僕の視界では、最初に青髪の彼が本当に鬼みたいに変身したんだ。その後、次から次へみんな洗脳に掛かったみたいに目が黒くなって、みんな悪鬼の能力か何かで、操られてんのかと思って焦った。でも、カナンの爆破による洞窟の崩壊、その回避に意識が逸れて僕への洗脳が解けられちゃったみたいだな、ドレイク!!」
そうか……!
カナンちゃんの爆破で瓦礫崩壊から避けている時、意識が逸れることで洗脳が解かれたのか……!
そこまでは予測できなかった……。
けど、それなら本当にカナンちゃんナイスだ……!
「そう言うわけだから、ドレイク。セーカにはお前を殺させない。必要な犠牲か……。確かに、お前の言う通りかも知れない。僕が、お前を殺すよ……。もう、優しいだけのヒーローごっこはお終いにする……!」
ヤマトの目からは、一切の迷いが断ち切られているようだった。
しかし、首元を抑えられ、全身を押し倒され、最早逃げ場のないドレイクは、声を荒げて笑った。
「フフフフ……アハハハハハ! 私の計画が崩された! そんなことは初めてだ!! 流石だ!! ここで殺してしまうのは惜しい……。もっと成長してくれ……そして私を楽しませてくれ……。フフフフフ……!」
「いや、お前はもう今ここで……」
「 “雷龍魔法 エレクトロ=サイト” 」
ドレイクの身体はボロボロ崩れ始める。
「雷龍魔法……!? 龍の加護魔法か……!? で、でも……これ……どうなってんだ……!?」
完全に姿はなくなり、そのまま二人は地面に手を付けた。
「こんな魔法見たことないわよ!? これが龍の加護を受けた魔法ってこと!?」
「多分……そうなんだろうな……」
しかし、僕らの耳元でドレイクは囁いた。
側にいるはずの声なのに影も形も目視できない。
「ふふ……また会いましょう。救世主さん……。次に会うのが楽しみです……」
そうして、ドレイクの気配は消えてしまった。