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#ヤクザ
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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鷹槻れん

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「そうか……分かった」
それぞれの意見を聞き終えた湊は暫く考え込むように黙り込んだ。
詩音のことを考えるなら国内に残る方が良いに決まっているが、和葉の不安も良く分かるからこそ悩ましい。
ただ三人が幸せに暮らすことを一番に考えるなら、父親の手の届かないところで生活をするのが一番安全だった。
全てを加味した上で湊は、
「……やはり、このまま国内に留まるより渡米したほうがいいかもしれないな。和葉や詩音には負担をかけることになるし、生活自体簡単なことじゃないのも分かってる……それで構わないか?」
「不安はあるけど、湊さんが傍に居てくれるなら、きっと大丈夫だと思うから」
その言葉を聞いた湊の表情がわずかに和らいだ。
「ありがとう。これからは三人で頑張ろう」
すると真宙が少し遠慮がちに口を開いた。
「あの、ご迷惑でなければ、私も千宙もご一緒します」
「……お前たちも?」
「はい。私も千宙も学生時代にあちらへホームステイしていた経験がありますので多少の伝手もあります。それに和葉さんや詩音ちゃんの生活面でも何かとサポート出来ると思いますので」
真宙がそう説明すると、その隣で千宙も頷いた。
「俺も構いませんよ。兄ちゃんと一緒に湊さんの手助けが出来るならそのほうがいいですから」
「……本当に、いいのか?」
「もちろんです。社長にはこれまで何度も助けていただきましたから、今度はこちらが力になる番です」
「兄ちゃんの言う通りです」
「……ありがとう。真宙、千宙……」
湊のその言葉にはこれまで以上の感謝が滲んでいた。
「ところで和葉さんは英語は話せます?」
「え? まあ、日常会話程度なら……何とか、という感じです」
「それなら大丈夫だと思います。最初から完璧に話せる必要なんてありませんよ。あとは俺が付いてサポートしますから生活しながら徐々に慣れていきましょう」
「……ありがとう千宙くん」
不安そうにしていた和葉も千宙の言葉にほっとしたように微笑む。
真宙や千宙が付いていてくれるなら何とかやっていけるかもしれない。
そう思えたところで真宙が話を本題へ戻した。
「それでは社長、早速誠様へご連絡をお願いします」
「ああ、そうだな」
促された湊は早速誠へ連絡を入れて渡米する意思を伝えると、快く了承してくれた。
『分かった。仕事や住まいについては任せてくれ。湊くんたちの準備が整いそうなタイミングに合わせて準備しておくから連絡待ってるよ』
「ありがとうございます。こっちの事情で色々と頼むことになってすみませんが、よろしくお願いします」
『気にするな。それじゃあ、またな』
「はい、失礼します」
こうして湊たちは国内に残る道を捨てて正式に渡米することを決めた。
まだ具体的な日程は決まらないものの、もう後戻りするつもりはなかった。
和葉と詩音を守る為、そして、自分自身の人生を取り戻す為に。
アメリカへ行くことが決まってから一夜が明け、二人はまずこれからのことを詩音に話しておこうと決めた。
まだ幼い詩音にこれから環境が大きく変わることをどう伝えるべきか、湊と和葉は顔を見合わせながら慎重に言葉を選ぶ。
そして和葉が詩音の目線に合わせるように腰を屈めた。
「ねぇ詩音、詩音はお兄ちゃんのこと大好きよね?」
「うん!」
和葉の問いに詩音は迷うことなく頷くと、その姿に和葉が微笑みながら続けていく。
「じゃあね……これからお兄ちゃんが詩音のパパになるって言ったら、どう思う?」
「え?」
詩音はパチパチと瞬きをした。
「おにーちゃんが……しおんの、パパ?」
その言葉に和葉と湊の胸がきゅっと締めつけられる。
血の繋がった父親と娘なのに、二人は生まれた時からずっと離れていた。
そんな詩音にとって湊はあくまでも、「お兄ちゃん」であり父親ではない。
だからこそ、いきなり、「あなたのパパなのよ」と伝えるのではなく、まず詩音自身がどう感じるのかを聞いてみたかった。
詩音にとって父親が傍にいないことは生まれた時から当たり前で、それでも時折、「パパに会いたい」と口にすることはあった。
そんなとき、和葉は詩音を抱きしめながら、『パパは遠くにいるから会えないのよ』と言い聞かせてきた。
だから詩音が父親という存在をどこまで理解しているのか正直和葉にも分からなかった。
けれど、
「おにーちゃんがしおんのパパになってくれるの!?」
詩音の顔がぱっと明るくなった。
「しおん、うれしい!!」
「……え?」
思わず和葉が目を見開く。
戸惑うどころか詩音は満面の笑みを浮かべながら嬉しそうに湊のほうを見る。
「だってねしおん、ずっとおもってたんだぁ」
「……何を?」
湊が優しく問いかけると詩音は少しも迷うことなく答えた。
「おにーちゃんがパパになったらいいのにって!」
「…………っ」
その瞬間、湊の胸が大きく揺さぶられた。
娘がいることすら知らずに暮らしてきて、傍にいてやることが出来なかった。
それなのに、詩音は『お兄ちゃん』として接していた自分のことを父親になってくれたらいいと思ってくれていた。
こんなにも嬉しいことは無いと湊は泣きそうになるのを必死に堪えたけれど、視界が滲みそうになって詩音をそっと抱きしめた。
「……ありがとう、詩音……これからは……パパって呼んでくれたら、嬉しい」
湊がそう告げると詩音は彼の胸に顔を埋め、暫くすると小さな声が漏れてくる。
「……っ、うん」
その声は少し震えていた。
「パパ……」
湊の腕に力が込もる。
「……パパぁ……」
堪えていたのか、詩音の瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちた。
そんな二人を見守っていた和葉の瞳からも大粒の涙が流れていき、ずっと離れていた父と娘の時間がようやく始まりを告げた喜びを静かに噛み締めていた。
コメント
1件
第75話、読んだよ……詩音が「おにーちゃんがパパになったらいいのにって」って言ったところ、マジで心臓掴まれたわ。ずっと離れてた父と娘がやっと結ばれる瞬間、湊の込み上げる感情がひしひし伝わってきた。和葉も含めた三人の新しい家族の形が始まる感じ、めちゃくちゃグッときた😭 この先の渡米生活、どんな展開になるのか楽しみ!