❃唯華side❃
るなちゃんと沢山お話していると、いつの間にか通っている学校に着いてしまう。
(もう着いちゃった、)
るなちゃんを独り占出来る時間が終わってしまい、少し眉毛を下げる。
〈るなー!おっはよー!〉
『おはよ〜』
〈城崎先輩だ!せんぱーい!!〉
『○○ちゃん、おはよ』
あっという間に囲まれてしまうるなちゃん。
(この光景、見なれたはずなのになぁ…)
その場に居ると少し胸がズキズキするので、
私はるなちゃんに心の中でバイバイした後、自分の教室に向かおうとした。
『唯華!!』
突然るなちゃんに名前を呼ばれたかと思うと、グイッと手首を引っ張られた。
「わっ!?」
驚いてるなちゃんの方を見ると、酷く焦っているように見えた。
綺麗な口から少し震えた声で、
『なんで、何も言わなかったの、?』
そんな事を聞かれた。
「え、っと、」
(胸がズキズキして苦しかったなんて、言えないよ……。)
「るなちゃん忙しそうだったから、」
私は少し嘘をついてしまった。
大好きな、るなちゃんに。
『…ッ』
るなちゃんは悲しそうな顔をしていた。
なんでそんな悲しそうな顔するの、?
(悲しかったのは私だよ、)
初めてそんな事を思った。
ここに居ると、るなちゃんを傷つけてしまう。
大好きなるなちゃんを悲しませてしまう。
「… ごめんね…。」
そう言って私は逃げるようにるなちゃんの元を離れた。
(よし、帰りの時ちゃんと謝ろう。)
そう決意した私。
放課後、あんな事が起こるなんて、知る由もなかった。
❃瑠奈side❃
「それでね!」
隣で一生懸命話す唯華。
(世界一可愛い)
この登下校の時間が、日々の楽しみだった。
人気者の唯花を独り占め出来る。
誰にも邪魔されないこの時間。
(幸せだなぁ)
なんて呑気に思っていると、私達が通う学校に着いてしまう。
(朝の楽しみが、終わってしまった…。)
(でも、帰りもあるから…)
1人でぐるぐる考えていると、
〈るなー!おはよー!〉
友達にそう声を掛けられた。
『おはよ〜』
軽く返事をする。
(早く唯華と話したい)
そう思っているのに、
〈城崎先輩だ!せんぱ〜い!!〉
『○○ちゃん、おはよ』
一通り返事をして唯華を探すと、
『え…?居ない……?』
唯華なら一声掛けて行くのに、
私は焦りながら唯華を探がした。
『!!唯華!!』
自分でもびっくりするくらい声を出した。
細い手首を掴み、少し引っ張った。
「わっ!?」
唯華は少し声を上げていた。
それと同時に、私は震える声で
『なんで、何も言わなかったの、?』
違う、こんな事が言いたいんじゃない…。
先に謝らないと、
『1人にしてごめん』って言わないと。
「えっ、と」
少し困った顔の唯華。
『るなちゃん忙しそうだったから、』
そう言うと、右手で左腕をさすった。
『…ッ』(………嘘だ。)
唯華は嘘をつく時、右手で左腕をさする癖がある。
(私に、言えないような事なの、?)
(私、唯華に嫌われた、?)
そう考えるほど、胸がギュッてなった。
私が1人で焦っていると、
少し泣きそうな顔をした唯華が、
「…ごめんね…。」
そう言って、逃げるように私から離れていった。
小さくなっていく唯華の背中をただ見つめることしか出来なかった。
(帰りの時、謝ろう、)
そう思って私も教室に向かった。
この選択が間違っていたなんて、この時の私は知らなかった。いや、知りたくも無かった。
*次回へ続く*
コメント
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続きが気になりすぎる、!