「コーヒーでいいか?」
キッチンに立つ彼から呼びかけられて、初めての訪問ということもあって、「はい、すいません!」と、ついかしこまって返事を戻した。
「”すいません”は、いらないな」
ポットに沸かしたお湯をフィルターへ注ぎ、レギュラーコーヒーを抽出する姿が、まるでお店のマスターみたいにスマートでかっこ良くて思わず目を奪われていた私は、聞こえた彼の声に、再び反射的に「す、すいません!」と返してしまった。
「ほら、まただ。そんなに緊張をしないで、もっと気楽にしていてほしい」
彼が淹れ終わったコーヒーをカップに注いで、テーブルへ運んで来る。
「はい、でもなんだか緊張しちゃって……」
いい薫りの漂うコーヒーを一口飲むと、
「……やっぱり、あなたのことが、好きすぎちゃうからかもしれないです……」
普段なら言えないようなことが、彼が丁寧に淹れてくれたコーヒーのコクのある味わいに引き出されてか、口からポロッっとこぼれた。
「そんなことを言われると、照れるな……」
「言った私も、照れてます……」
互いに口にして、照れ隠しに持ったカップを乾杯するようにコツンとくっ付けると、二人で小さく笑い合った──。
コメント
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こっちも照れちゃいます😆