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1次試験を無事に通過した者には、当然ながら2次試験も待っている訳で…
「どぉ?お腹は大分すいてきた?」
「聞いての通り もー ペコペコだよ」
「そんな訳で2次試験”料理”よ!!」
2次試験の試験官である美食ハンター【メンチ】と【ブハラ】の一連の会話の後、本試験が開始された。
2次試験も1次試験と同様に前半、後半に分けての試験である。
試験前半、ブハラから提示されたお題は
『豚の丸焼き』。ブハラのその巨体に見合ったものである。
「豚の丸焼きと言われたが…豚はどこにいるのか…。」
クラピカはビスカの森を見回す。しかし、豚など1匹もいないのだ。
この試験、材料はもちろん全て現地調達である。料理経験はあるのだが、食べられれば良し精神で今まで生きてきたクラピカ。美食とは到底及びつかぬような料理を作り上げる未来はありありと見えていた。
「…私は料理が苦手でな…。他に作れる者はいないか?」
皆の料理経験の有無を問うクラピカは、うすうす予感はしていたのだ。
「俺は料理を作った事ないな…基本は外で食べるからな…」
「前はミトさんが作ってくれてたし…」
「俺も。お抱えの料理人がいたからね。」
「俺は目玉焼きぐらいなら作れると思うぜ!」
経験皆無が3人。なんとも頼もしくない発言をする者が1人。 この場に、まともに料理ができる者などいなかった。何となく分かってはいたけれど。 この試験、早くもピンチである。
「豚みっけッ!」
豚を探すこと数十分。ゴンの元気の良い声が森に響き渡った。
「…私の知っている豚ではないのだが?」
「奇遇だな。俺の知っている豚でもないよ。 」
急いでその場に駆けつけると、目の前には”豚”が群れを成して地面の草を食べていた。
通常、皆が思い浮かべる豚といえば、体長は1m程度の比較的穏やかそうな個体だろう。
しかし目の前にいる”豚”は、3mはあろう大きな体と発達した鼻を持ち、気性は驚く程に獰猛であった。 …目つきも非常に悪い。
「すげぇ。これが豚か…」
「んな訳ねぇだろッ!デカすぎるわ!!」
豚を初めて見るキルアとツッコミを入れるレオリオを尻目にゴンは豚へと猪突猛進で向かっていた。イノシシじゃないよ。
案の定、その巨体によって跳ね飛ばされたゴンは、頭にコブを作っていた。
「…ゴン。むやみやたらに飛び込むのはよせ」
クラピカは、呆れながらゴンを目を向ける。
「えへへ。この豚すごいかたい!」
「ゴン。その釣竿で距離を取りながら、豚に攻撃すれば良いんじゃないかと俺は思うよ。」
照れ笑いをし頭を掻きながら豚を見上げるゴンにクロロは苦笑しながら、背中の釣竿を指さす。
そこでようやく、その手があったかと思い至ったゴンは釣竿を手にもって、豚の群れの中へと飛び込んで行った。
「…まったく。元気の良い事は素晴らしいことなのだがな…」
そう呟き、ゴンの背中を見つめるクラピカの表情はとても優しい。
「お前、やっぱり可愛いよな。…好きだよ」
「…あぁ。私もお前のことは好いているよ…」
今はまだ、この答えだけで十分だ。
クロロは満足そうに笑うと優しいキスを1つ、クラピカに贈る。
「…さぁ、俺達も豚を捕まえるとしようか。」
「…そうだな。」
名残惜さそうに唇を離した二人は、ゴンの元へと歩き出す。
クラピカとクロロ、そして神だけが知る森での一時であった。
豚を捕まえるために奮闘していた5人は、弱点が額であることに気が付いた。 額を強く打ち付けた際に生じる一瞬の隙が、狙い時である。 それぞれが豚の額に衝撃を与え、捕まえていく。
やっと豚の丸焼きの素体を確保した訳なのだが、全員が料理などできない。
捕まえた豚を火で炙るのだが、火加減を間違え、外は焦げ、中は生焼けになったり、とりあえず、目に入ったもので味付けをし、到底食べられるような物ではなくなったり。飾り付けが喧嘩を売っている物もあった。
「終了〜〜〜!!」
そうこうしている内に、ブハラが満腹になったことで前半戦が終了となった。
当然の事ながら、ブハラを満足させる品を作れた者はおらず、誰一人として合格を貰える者はいなかった。
合格者0にも驚くが、何よりも皆が驚いた事は、70匹分もの豚の丸焼きを食べ終えたブハラの胃である。いったいどうなっているのか。
「奴の体積より食べた量の方が明らかに多いだと…?」
クラピカは真剣に悩むが答えなど出る訳もなく、後半戦へと進む。
メンチのお題が何なのか、料理素人な受験者はその言葉を固唾を呑んで待つしかなかった。