「みゃあ」
(ーー猫の鳴き声?)
その鳴き声が聞こえたのは、遅くなった仕事終わり、暗い路地から明るい大通りに出ようとしたときのことだった。
「みゃあ」
「…ねこ、か?」
いつの間にか、振り向いていた。
「みゃあ」
いつの間にか鳴き声の主を探そうと、路地の奥深くへ進んでいった。
「みゃあ」
「どこにいるのかな…怖くないよ、出ておいで。」
きょろきょろあたりを見回して、静かに耳を澄ませて、気配を探ってまでして、猫を探していた。
「ミゃあ」
ふと、おかしいと感じた。
この路地は、こんなに長かっただろうか。
「みゃア」
この鳴き声の主は、ほんとうに猫なのだろうか。
「みゃん」
「みャあ」
「ミ゙ゃあ」
「みゃァ」
「ミャァ゙」
「みゃあ」
周りから鳴き声が聞こえる。
これは、猫ではない。
「ミャア」
「ミャァ」
「みゃあ」
警戒を引き上げたとき。
「みゃあ」
背後から、異質な声がした。
水の双剣を生成し、背後へ一閃。
「なにもいない…?」
「にゃあ」
にたりと笑った顔が目の前に現れる。
反射で剣を振るうと顔の主はひらりと避けた。
ふわりと現れた姿を見るとーー
「なんだ。鈴風さんか。」
「驚いたかい?」
「そりゃあもう!」
どうやら、これは鈴風さんの用意したドッキリらしい。
「そういえば美味しいご飯のお店を見つけたんだ。食べに行かないかい?」
「それはいいね!楽しみだ!」
「ふふ、さあ!早く早く!」
路地の出口へぐいぐいと鈴風さんが押していく。
鈴風さんのオススメならきっと美味しいのだろう。
ついつい笑みが溢れる。
「み…ゃあ」
2人が去っていったあとの路地裏で、つぶれてぐちゃぐちゃになったナニかが息絶えた。
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