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この太宰さん好き!!
太宰さん。
あの人は、一体何を背負って居るのだろうか。
其れは、僕達には絶対見せて呉れない、
否、見せる事が出来ないもの。
此れからあの人は、何を以って何処へ向かうのだろうか。
「只今戻りました。」
「おお、戻ったか。」
連絡を貰ってからかなりの素早さで戻ったものの、探偵社に着いた時には既に全員揃っていた。
「其れで、話と云うのは。」
乱歩さんに視線が集まる。
「其れなんだけど…」
「先ず一つ、謝らせて欲しい。」
「僕、太宰がポートマフィアに戻るって事、知ってたんだ。」
「黙っていて申し訳無かった。」
皆が目を合わせて、大した事は無いとか励ましの言葉を次々に放つ。
そうすれば、乱歩さんは何処か動揺した様な、曇った表情でまた続けた。
「大した事なんだよ。此れは何時か僕らもポートマフィアも全部巻き込んで大問題に成る。」
「其れを知っていたにも関わらず、僕は太宰を引き留める事が出来なかった。」
「僕は分からなかったんだ。」
「如何するのが一番太宰にとっての良い事なのか。」
「僕には太宰の抱え込む何かから如何しても目が逸らせなかった。」
「だから何時か大問題に成るものであろうとも、太宰の意思を尊重したくなって仕舞った。」
「だから…その…」
「若し君達にも迷惑が掛かって仕舞ったら、本当に御免なさい。」
全部話し終えて、乱歩さんは下を向いた。
沈黙が流れる。
良く考えて見れば、僕は太宰さん本人の意思を本当に尊重していたのか。
其れは、僕が信じる善の世界に居て欲しいと云う自分の望みだったのでは無いか。
ならば乱歩さんは、乱歩さんの選択は矢っ張り正しかったんだ。
其れでも然し此の胸につかえるものは、何だろうか。
暫くして沈黙を破ったのは、賢治君。
「大丈夫です。」
「其の時が来たら、全力で、正面から向かい合って、話をすれば良いだけです!」
「だって此処に居る皆、仲間なんですから。」
意味の無い問答を続ける。
取り敢えず、今日一日は安静にさせておけとの命令だ。
窓の方を見て何かを考えて居る。
そんな此奴を見ていて、思う処が有る。
なぁ、太宰。俺はな、手前が大嫌いなんだよ。
隙さえ有れば他人を小馬鹿にして、
暇さえ有れば意味も無く思考する。
飄々とした態度で黒い自分を隠せた気に成って、
何も解らない人間もどきの癖して人らしく振る舞う。
そんな手前が心底気持ち悪ぃんだよ、解るか?
だからな、矢っ張り手前には此処が必要なんだよ。
人で無い者が人で無くて良い場所が。
自分から溢れる黒い『何か』に溺れる手前の態は、見ている此方も悪い気はしないぜ?
其の人間と呼ぶには悍ましい『何か』を全部曝して見せろ。
手前の本性はこんな生温いもんじゃ無ぇだろ?
中也は一体何を考えてそんなに愉しそうにしているんだ。全く気味が悪い。
振り向き様に聞いて見ようか。否、直接聞くと云うのは私の洞察力の低下をはっきりと示す様なものだから止めよう。
其れはそうとして、今日はずっと此処に居る心算なのだろうか。
私が幹部に復帰させられるのは明日だ。
其れ迄に私の進むべき道を見つけ無ければならないと云うのに、こんな蛞蝓に監視されて居ては纏まる思考も纏まらない。
………
今現在此処には中也と私と、強いて云うならば森さん位しか私の話を聞く人間は居ない。
詰まり、他人との会話で思考の糸口を見つけ出す方法を使う事も、今なら不可能じゃ無い。
…仕方無いから、矢っ張り中也に話し掛けよう。
「ねぇ、中也。」
「何だよ。」
「私の『救い』って一体何だと思う?」
「あーまたそりゃ面倒臭え問だな。」
「私の命題なのだよ、答えてみないかい。」
「そうだな…」
「んー…『解放』、とかじゃ無ぇか?」
「ほう、君にしては中々洒落た答じゃ無いか。」
「あ”ァ??」
「まぁ其れはそうと、『解放』、ねぇ。例えば如何云うものを考えた?」
「手前の事だからな、死とか趣味の悪ぃ事考えてんだろ。」
「君自身の事を聞いたんだけど…」
「否定しねぇのか、流石は糞鯖だな。」
「其れは…別に間違いでも無いしね。」
「『死』こそ『解放』で、『救い』、とか厨二病全開だなぁ太宰?」
「仕方無いだろう、心底本気で思ってるのだからさ。」
「其れならよ、何で手前は殺しを躊躇ってやがんだ。」
「嗚呼、気付いた?」
「当たり前だ。」
「まぁ、大事な人の言葉で今迄殺しを絶ってきた訳だからね、解釈を今更変える事に少し躊躇ってるのかもよ?」
「誰に聞いてんだ。」
「ん〜?自分かなぁ、強いて云わなくても。」
「一々腹立つ話し方だな本当に。」
暫し会話に空白が訪れる。
「…そう云えば、私明日単独任務なのだよね。」
「おー、丁度良いじゃねぇか。首領の慮りは有り難く頂戴しとけよ。」
「そうだね。森さんは屹度、私が幹部に戻る前に冷徹な判断力を取り戻して欲しいんだろうから、此の任務では私も一人以上は殺す事になるだろうね。」
殺す、其の直接的な『悪』に少し怖じ気付いた私が何処かに存在している気がした。
「踏ん切りの付いていない態が見ていて気持ち悪いから云っておくがな、」
「手前には善人面よりも本性を曝した悪人面のが余っ程お似合いだ。」
「明日、幹部会愉しみに待っといてやるよ。」
「一体どんな面提げて帰って来んだろうなぁ、心底期待出来るぜ。」
嗚呼、其れだったのか。
私が君に『絆』を見た所以。
私の本心、本性の立つ場所に同じく、あの蛞蝓も居るのだ。
昔から、本当の私を知っていて尚も私の側に立っていた。
詰まる所、最初から絆で結ばれていたのは中也だった。
織田作、そうなのか?
此れって、私が信じたい絆を見つけられた事に成る?
否、えっと、そうじゃ無くて、私は…
…うん。
私は、信じるよ。
此の絆を信じて進むから、
其処に居てくれるよね?織田作。
夜が明ける前に目が覚めた私は、さっさと支度をした。
其処にはもう中也は居なかった。
其れでも然し、何故か心強い味方が居る様な気分だ。
未だに一寸有り得ないと思っているよ、あんな莫迦が唯一信じる事の出来る存在だなど。
其れにしても、何だか気分が良い。其れもかなり。
悩みがほんの少し、解決した様な気がする。
でも矢っ張り、あの蛞蝓のお蔭だとは認めない事にする。
其れが、私達でしょう?
私の任務は、組織の一角を崩すと云うものだった。
情報の為に一人を先ず引き抜く。
幹部では情報量は多いものの引き出すには時間が掛かり過ぎる。
取り敢えず組織の一角を崩すのに必要な分だけの情報を収集出来る様な人材。
其れは、怯え切っていた。
其れはこう云った。
『此処で情報を吐けば、世界中に於いて自分の存在に穴が空く。』
『そうしなければ、今私の身体に穴が空くのだろう?』
『何方にしたって、私に救いは無い。』
『抑々此の世に私を救う心算等はなから無いのだ。 』
『ならば此処で今死ぬ方が良い。』
『さっさと終らせてくれ、私は情報を渡す心算が無いぞ。』
死によって救われる。
矢張りそう云うものらしい。
素晴らしい。
そう思い乍ら、私は引き金を引いた、
眼の前の其れは弾けて、
痛みに悶えて、
軈て穏やかな顔をして、
そして息を止めた。
途端に、心臓の鼓動が疾く成る。
血の巡りが良くなって、息が荒くなる。
余りの昂りに目を見開く。 そして、
心の底から『何か』が湧き上がって来る。
黒い『何か』。
嗚呼、此れが、
『感情』……!!
興奮に身悶えし、
愉悦に顔を歪ませ、
途方も無い幸福感に包まれる。
酩酊したかの様に千鳥足になって、
大きく息を吸い、吐く。
未だ嘗て経験した事の無い悦びに四肢が痺れる。
彼の息の根が止まった、
其の真実は私をも之以上無い程に救った。
救った…救った、救った!!!
私は、とうとう救いを成し遂げた!!!
嗚呼、素晴らしい、なんて素晴らしいんだ!!!
此れが、此れこそが…
…『私』だ―――――
書いてて楽しい…
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