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#健康鯖
プランテーション
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めりりんちよ
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※これは曲パロです!!
ーー『バウムクゥヘンエンドロウル』
Nakamuとシャークんは、付き合っていた。
誰もが知っていたし、誰もが二人をお似合いだと言った。
シャークんはNakamuの前でだけ、少しだけ素直になれた。Nakamuはシャークんの前でだけ、無理に笑わなくてもよかった。
二人の関係は、綺麗だった。
まるで、何層にも重ねられたバウムクーヘンみたいに。
時間をかけて、丁寧に、壊れないように。
だからこそ。
きんときは、それを壊してみたくなった。
「ねえ、Nakamu」
ある日の放課後。
きんときは、シャークんがいない教室でNakamuに話しかけた。
「シャークんってさ、優しいよね」
「うん。すごく優しいよ」
「……ふうん」
きんときは笑った。
「お前、あいつのどこが好きなの?」
「え?」
「いや、気になっただけ」
Nakamuは少し考えてから答えた。
「一緒にいると、安心するところかな」
「そっか」
きんときは頷いた。
そして、心の中で呟く。
――じゃあ、そいつから安心を奪ったら、どんな顔をするんだろう。
シャークんは、昔から嫌いだった。
別に、何かをされたわけじゃない。
むしろ、シャークんはきんときに優しかった。
だから嫌いだった。
誰かに愛されて、誰かを愛して、当たり前みたいに幸せそうにしている。
その姿を見るたび、胸の奥がむず痒くなる。
自分には関係のない幸福。
自分の手には入らない幸福。
ならば、壊してしまえばいい。
他人の不幸は蜜の味。
きんときは、その甘さを知りたかった。
きんときは、少しずつNakamuに近づいた。
シャークんの知らないところで話しかけた。
何気ない相談を持ちかけた。
優しい言葉をかけた。
「Nakamuって、頑張りすぎだよね」
「そんなことないよ」
「あるよ。もっと自分のこと大事にしていいんじゃない?」
そんな言葉を、シャークんはあまり口にしなかった。
シャークんはNakamuを信じていたから。
言わなくても伝わっていると、思っていたから。
その隙間に、きんときは入り込んだ。
「俺は、お前のことちゃんと見てるよ」
その言葉に、Nakamuは少しだけ目を伏せた。
それだけだった。
たったそれだけで、きんときは嬉しくなった。
恋をしたわけじゃない。
Nakamuが欲しいわけでもない。
ただ、自分の言葉で誰かの心が揺れるのが面白かった。
そして、その先にシャークんの絶望がある。
それを想像するだけで、笑いが込み上げた。
最初に変化に気づいたのは、シャークんだった。
「最近、きんときとよく話してるな」
帰り道、シャークんが言った。
「うん。相談に乗ってもらってるんだ」
「……そっか」
シャークんはそれ以上、何も聞かなかった。
Nakamuを疑いたくなかった。
きんときを疑う理由も、なかった。
けれど、その日から少しずつ、Nakamuの笑顔が変わった。
シャークんに向ける笑顔と、きんときに向ける笑顔。
ほんの少しだけ、違う。
シャークんが知らない話題。
シャークんが知らない約束。
シャークんが知らないNakamu。
自分の知らないところで、恋人が誰かと親しくなっている。
それだけのことが、こんなにも苦しいなんて。
「Nakamu」
ある夜、シャークんは尋ねた。
「俺のこと、好き?」
Nakamuは目を見開いた。
「……どうしたの、急に」
「いや。なんとなく」
沈黙が落ちる。
Nakamuは、いつものように笑おうとした。
でも、できなかった。
「好きだよ」
そう答えた声は、少しだけ震えていた。
シャークんはそれを聞いて、安心したように笑った。
その笑顔を見た瞬間、Nakamuは泣きたくなった。
自分は今、何をしているんだろう。
何を壊そうとしているんだろう。
答えはわかっていた。
それでも、もう引き返せなかった。
決定的な瞬間は、あまりにも呆気なかった。
シャークんが二人を見つけたのは、夕暮れの帰り道だった。
きんときがNakamuの手を握っていた。
Nakamuは、振り払わなかった。
「……何、してんの」
シャークんの声に、二人が振り返る。
Nakamuの顔から血の気が引いた。
きんときだけが、いつも通りだった。
「見てわかんない?」
「きんとき……!」
Nakamuが手を離そうとする。
けれど、きんときはその手を離さなかった。
「なあ、シャークん」
きんときは笑った。
「お前、こいつのこと大好きだもんな」
「……離せよ」
「嫌だね」
シャークんの拳が震えた。
「ふざけんなよ……!」
きんときは、ますます楽しそうに笑った。
「なんで? お前だって、ずっと幸せだったじゃん」
そして、耳元で囁くように言った。
「ちょっとくらい、不幸になってもいいだろ?」
その瞬間、シャークんは理解した。
きんときはNakamuを好きなんかじゃない。
自分から奪いたかっただけなのだ。
自分が大切にしているものを。
自分が幸せだと思っていた時間を。
全部。
「……お前、最初から」
「うん?」
「Nakamuのこと、好きじゃないんだろ」
きんときは答えなかった。
ただ、口元を吊り上げた。
その沈黙が、何よりも残酷な答えだった。
それから、三人の関係は壊れた。
Nakamuはシャークんに謝った。
何度も、何度も。
けれど、謝罪の言葉を重ねるたび、二人で過ごした日々が薄っぺらくなっていく気がした。
シャークんは、Nakamuを嫌いになれなかった。
好きだった。
今でも、どうしようもないくらい。
だからこそ、許せなかった。
好きなのに。
信じていたのに。
どうして。
一方、きんときは変わらなかった。
Nakamuと一緒にいても、心は動かない。
手を繋いでも、キスをしても、何も感じない。
ただ、シャークんが二人を見かけるたびに顔を歪める。
そのたびに、胸の奥が甘く満たされていく。
――ああ、楽しい。
きんときは思った。
他人の不幸は、こんなにも甘い。
シャークんが笑わなくなった。
Nakamuが泣くようになった。
それでも世界は、何事もなかったかのように回り続ける。
まるで、最初からこうなる運命だったみたいに。
ある日、きんときは一人でバウムクーヘンを食べていた。
何層にも重なった生地を、一枚ずつ剥がしていく。
甘くて、柔らかくて、少しずつ崩れていく。
「……ふふ」
思わず笑みがこぼれた。
大切なものほど、壊れたときに面白い。
綺麗なものほど、汚したときに気持ちいい。
シャークんが大事にしていたNakamu。
Nakamuが大事にしていたシャークん。
その二人の間に、自分が残した傷。
きんときは、最後の一口を飲み込んだ。
甘かった。
とても、とても甘かった。
スマートフォンが震える。
画面には、シャークんからのメッセージ。
『お前のこと、一生許さない』
きんときは、それを何度も読み返した。
そして、楽しそうに返信する。
『知ってる』
送信。
たったそれだけ。
それだけで、今日もいい一日になった。
だって。
自分は何も失っていない。
傷ついたのは、シャークんだ。
泣いているのは、Nakamuだ。
それなのに、自分だけがこんなにも満たされている。
きんときは、空になった皿を見つめた。
何層も重なった幸福を剥がして、最後に残ったのは、他人の涙を舐める自分だった。
それでも、やめるつもりはなかった。
だって、不幸は蜜の味。
甘くて、癖になって、もう二度と戻れない。
誰かの幸福が終わる音を、きんときは今日も笑って聞いている。
――そして、終わりのない輪の中で。
また誰かの幸せを、壊す機会を待っていた。
コメント
1件
うわ、きんときのヤバさがめっちゃ刺さったわ… 他人の不幸を蜜の味って表現、背筋凍る。シャークんの『一生許さない』に対して『知ってる』って返すとことか、心抉る展開すぎる。バウムクーヘンの比喩が綺麗なだけに余計に残酷に感じた。続きが気になる…!更新楽しみにしてる🔥