「そんなことが……? あの先生のご両親って、どんな方なんですか?」
熱燗を飲み始めた女史に徳利を傾けて、先を促す。
「……お二人とも医師らしいけど……。……お母様の方は、有名な外科医だって聞いてるわ……名前、なんて言ったかしら……」
女史が考え込むように腕を組む。
「そうだ……政宗……外岐子先生だわ」
「……聞いたことがあります。雑誌にも、よく掲載されていて……」
”政宗 外岐子先生“と言えば、医療業界では知らない人がいない程の、名の通った外科医師だった。
外岐子先生は名字がお堅いイメージだからという理由で、女性らしい雰囲気のある名前の方で呼ばれていることが多く、あの政宗医師と同じ名字なことがあまり頭の中で結びついてはいなくて、まして親子関係にあるとは微塵も考えていなかった。
「そう、その外岐子先生よ」
と、松原女史が頷くのに、
あの有名な外科の先生が母親だったんだ……と、ぼんやりと思った。
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