悲しき愛しい人

目黒が、ちょっとずつ、「おかしいな」と思い始めたのが、5周年を迎えるころ。

阿部ーめめ、もっと。

そう言って、目黒を離さない阿部。

最初は、積極的になって、嬉しいと思っていたが、だんだん、おかしいと思うようになった。

恥ずかしがって赤くなるのが、可愛いと思っていた。

今は、目黒を求めて、恥じらいなんか無い。奔放に身体を開き、誘う。

目黒ー阿部ちゃん、どうしたの？

阿部ーめめが欲しいだけ。

目黒ー違うでしょ。疲れてるのに、そんなに欲しいって今までの阿部ちゃんなら、言わないよ。

阿部ーいや！もっと抱いて！

目黒ー今日は、遅いから寝よう？

阿部ー身体の芯が疼くの。助けて。

目黒ー今日はもうだめ。明日、翔太くんたちに、会いに行こう。

阿部ー愛してくれないの？めめが欲しいだけなのに。

目黒ー帰ってきてからずっとだよ？

もう何時間になる？満足出来ないの？

阿部ー俺、おかしいの？

目黒ー分からない。

渡辺に、岩本の存在がバレてもいいか?と聞いた。

おおよその理由を聞いていたから快諾された。

阿部ーどこ行くの？

目黒ー翔太くんたちのところ。

阿部ー何で？

目黒ー阿部ちゃん、感じるけど満足出来ないんでしょ？

阿部ーそれと、翔太と、関係あるの？

目黒ー俺だけじゃ、無理だから。

阿部ーやっぱり、俺、おかしいの？

車は、岩本のマンションの駐車場に入って行った。

阿部は、誰の家に行くのか知らない。不安そうに目黒についていく。

目黒ーごめんね。

阿部ーここ、翔太んち？

渡辺ー違う、まぁ、入れ。

阿部ーお邪魔します。

目黒ー連れてきたよ。

阿部ーあっ、照？翔太の相手って照？

渡辺ーあぁ、座って。

目黒がここ最近の、阿部の様子を2人に話している。

目黒は、少し涙ぐんでいる。

阿部は、以前なら、こんな話、恥ずかしがったけど、今は何のこと？という顔をして、聞いてる。

岩本ー堕ちたか？

渡辺ーだな。

目黒ーどういうこと？

岩本ー快楽の沼に、堕ちたんだよ。

目黒ー阿部ちゃんが？

渡辺ー愛しても愛しても、満足出来ないのだろう？

阿部ー皆んな、俺、おかしいの？

渡辺ー阿部、快楽の沼に堕ちたら、3日ヘロヘロになっても、目黒を求め、それでも満足出来ない　んだと聞いた。

目黒ー3日？

岩本ー4日でも5日でも、無理なんだ。

渡辺ー俺たちが聞いたのが3日だっただけで、もっと時間かかっても、阿部は、もう満足出来ないんだ。

阿部ー俺・・病気？

渡辺ーあぁ、一種のな。

阿部の目から涙が出てくる。目黒に縋りたいが、触ると目黒が欲しくなる。阿部の隣りに渡辺が座った。

声を上げて渡辺にすがり泣く阿部。

目黒の横には、岩本が座る。

岩本ー面白がって聞くんじゃないけど、1番長くてどれくらい？

目黒ー仕事が早く終わって、晩ご飯終わって、明け方まで、阿部ちゃん、泣いて縋ってきて。

渡辺ー1番酷いときは、過ぎたかもしれない。

目黒ーその日？

岩本ー多分、阿部、でもやっぱりだめなんだろ？

阿部ー・・んっんっ・・すぐ冷めちゃって、また、めめが欲しくなる。

阿部は、渡辺の腕を掴みながら泣きながら話す。

自分は、快楽の沼に堕ちてしまった。どうなるんだろう？

岩本ー目黒、動くな。阿部に触れたらだめだ。

目黒ー岩本くん。

渡辺ー俺たちが聞いた話だと、極端なこと言うと、キスだけで満足するくらいじゃなきゃだめらしい。

目黒ー阿部ちゃんを救う方法はあるの？

岩本ーまず、お前まで、快楽に身を堕とすな。

岩本と渡辺は、こういう関係になったとき、教会に行ったらしい。

そこで、教えを受けた。「快楽の沼」に身を堕とすことのないようにと。