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放課後の廊下は、夕陽で薄く金色に染まっていた。
窓際の掲示板に貼られたポスターが、さざめく光を小さな波に変えている。
その波のなかを、私はただ流れるように歩いていた。
特別な用事があるわけではない。誰かに会いたくて来たわけでもない。 ただ、学校にはいつも、誰かの物語があるのだ——それを覗き見るのが、私のささやかな趣味だった。
私の通う共学、六奏学園には“人気の六人教師”がいる。
校舎のどこかに必ずいる彼らは、生徒からも保護者からも愛される存在だった。
美術のすち先生、英語のみこと先生、社会と生活指導のらん先生、国語のひまなつ先生、数学のこさめ先生、体育のいるま先生。
授業の合間に交わす一言、廊下でのふとした立ち話、職員室の奥で弾む笑い声——そのすべてが、生徒の中で静かに噂になっている。
そして、もっと内密に囁かれているのが“仲良しペア”の噂だ。すち先生とみこと先生、ひまなつ先生とこさめ先生、いるま先生とらん先生。噂はいつも尾ひれがついて大きくなるけれど、本当に仲がいい人たちは、噂なんかに構わずにただ互いを見ているようだった。