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風が冷たくなった。青年は手に持っていたジャケットに袖を通し、前ボタンを閉める。
「これまで、何で気づかなかったんだろう」青年は紙コップを見つめている「このギリシャコーヒーも、君の言うそのトルココーヒーも、同じものだよな」
「ついでに、君の言うコンスタンティノポリスも、僕のいうイスタンブールも、同じ所だよ」と旅人は言った。
ヨーロッパ丘の影が、海峡に伸びてきた。
青年はつぶやいた。
「人はそれを、当たり前って言うのか」
羽のはばたく音に顔を向けると、クルド人の若いカップルがドネルケバブを食べていた。彼らがちぎってちぎって投げるパンに鳩が群がっている。犬が吼えるのが聞こえた。青年は振り返り見上げる。匂いに惹かれ柵を超えようとする犬の手綱を、トルコ人夫婦が引っ張っている。
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