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鷹槻れん

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「お母さまに、ですか?」
「ああ」
瑠璃香は「分かりました」と頷くと、邪魔にならないよう……だけど傍についています、というように晴永の隣へ移動した。
晴永はスマートフォンを取り出すと、【新沼清香】の連絡先を開き、一度だけ息を吐いてから発信ボタンを押す。
呼び出しの間、晴永が視線で自分を捉えているのが分かって、瑠璃香はそっと晴永の手に触れる。
数回のコール音の後――。
『もしもし』
聞き慣れた声が耳に届いた。
「母さん」
『……晴永。あなたから連絡してくるなんて珍しいわね。……晴留の所にはちゃんと行ったのね?』
どこか穏やかな声だった。
だが晴永は雑談をするつもりはないらしい。
「そのことで……ちょっと話したいんだが……」
晴留のもとへ瑠璃香と晴永を向かわせたのは、他ならぬ清香だ。『なぁに?』と返す彼女の声には、どこか晴永の言いたいことがお見通しではないのかという響きがあるように、瑠璃香には思えてしまう。
「晴留んトコ、晴留や瑠璃香だけじゃなく、藤井田さんや彼女の恋人もいた」
電話の向こうで、清香が小さく息を吐いた気配がした。
『そう。みんなでちゃんと話せたのね?』
「ああ」
晴永は短く答える。
「母さんが……采配してくれたんだろ? ……助かった。……その、ありがとう」
晴永が少し言いにくそうに礼の言葉を述べた瞬間、電話の先で清香がほんの少しだけ驚かされたみたいに息を呑んだ気配が伝わってきた。
瑠璃香は勝手に、清香が照れくさそうに瞳を揺らせているところを想像してしまう。
だが、さすがというべきか。電話口から聞こえてきたのは、
『……晴留と千紗さんから頼まれただけよ』
というそっけないものだった。
それだけで、晴永の母親が自分の感情をうまく表現することが下手な人なのかも? と思ってしまった瑠璃香である。
晴永との軋轢のほとんどは、そういう些細なすれ違いの積み重ねなんじゃないかと思った。
だが、晴永は賢い男性だ。瑠璃香が感じたことは、彼にもちゃんと分かったんだろう。
「……それでも、だ。……母さんのお陰で、すごく有意義な時間を持てた。感謝してる」
『…………そう』
清香のそっけない言葉に、晴永が小さく笑みを浮かべたのが見えて、瑠璃香は何だか嬉しくなる。
それから少しだけ間を置いて、晴永は小さく深呼吸をすると、
「……その話し合いで決まったんだ。俺は瑠璃香を、藤井田さんは彼氏を選ぶ」
迷いなく言い切った。
「お互いに、婚約はなかったことにしようって話になった」
『……そう』
清香は驚かなかった。
まるで最初から分かっていたみたいに。
瑠璃香は、最初に晴永が〝藤井田さんや彼女の恋人〟がいたと告げたとき、清香が驚いた風もなく当然のこととしてその内容を受け流したことを思い出す。
コメント
2件
はるながくん、きよかさん、2人とも本当よかった!
# 感想 うわああああ107話まで読んだよ〜〜!!😭💕 晴永くんがお母さんに「ありがとう」って言えたの、マジでエモすぎるし成長じゃん?!清香さんも照れ隠しでそっけないけど、ちゃんと想い届いてるのが伝わってくる…あと瑠璃香が隣でそっと手に触れるシーン、尊すぎて鼻血出るかと思ったわ😇💦 「お互いに婚約なかったことに」って決断も、二人の覚悟が感じられる良い場面だった!親子のすれ違いが少しずつ溶けてく感じ、心温まるね…次も楽しみにしてます🔥