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「ここがパンクハザード……いや……間近で見るとすごいな……」
「ジェディ、シーザーの研究所があるのはどっちだ?」
「極寒の地の方だ。熱い方は気にしなくていいぞ」
燃え上がる島を見ながら、俺がローに言えば、ローはすぐに今見えている灼熱の方ではなく、反対側の極寒の地に向けて船を発進させた。
「っくしゅ」
「寒くなるからコート着とけ」
「わかった。ローのも持ってくるからな」
船内に入り、クローゼットに保管してあったコートを手に取って着る。ハートの海賊団支給? のコートだからお揃いだ。シンプルな黒のロングコートだ。
甲板に戻ってローにもコートを渡す。さっきよりも冷えた空気が肌を突き刺す。寒いなんてレベルじゃないな。これは。
「準備はいいか?」
「ああ。いつでもいいぜ」
俺たちはパンクハザードの大地を踏みしめ、歩き出した。シーザーの研究所を目指して……。
しばらく歩くと、雪のせいで真っ白になっている大きな研究所が視界に入った。
入口らしきところには門番のような兵士が2人立っている。兵士は俺たち、というよりローを見て目を丸くする。
「し、七武海、トラファルガー・ロー!? なぜここに……。ここは世界政府直轄の島だぞ!?」
「シーザー・クラウンを出せ」
「ッ、マスターは今実験中で……」
「二度は言わねえ」
ローの言葉に焦ったのか、兵士たちは急いで小型の電伝虫を取り出して通信する。すると、すぐに研究所に入る許可が下りた。
研究所の中に入ると、薄暗い通路が続いていた。少し広い場所に通され、ソファに座って待っていると、部屋に不規則な動きをするガスが侵入してくる。シーザーだ。
「王下七武海、トラファルガー・ロー。俺様の研究所、パンクハザードに何の用だ?」
「単刀直入に言う。ここ、パンクハザードにしばらく俺たちを滞在させろ」
「パンクハザードに滞在を?」
訝しげに聞き返すシーザーに、ローは続けて言う。
「ログの取れねえこの島に来るのも苦労した。元政府の秘密施設だからな」
「目的はなんだ?」
「Dr.ベガパンクがいたこの研究所には、現在にも続く世界政府のあらゆる証跡……つまり、後々の証拠となる痕跡が残ってるはずだ。とりあえず、俺とコイツが研究所内と島内を中に歩き回れりゃそれでいい。こっちも前の役に立つ何かをする」
「フン……」
シーザーは納得したのかしていないのかわからない表情で鼻を鳴らす。俺は黙ったままだ。
「互いにつまらねえ詮索はしない。もちろん、俺たちがここにいることも他言するな。ジョーカーにもだ」
「なっ……――フフッ、訳知りじゃねえか。なぜそこまで知ってる?」
「何も知らねえド素人が飛び込んでくるのと、どっちがいい?」
「シュロロロ! なるほど、同じ穴の狢ってやつか。信用は出来ねえが、害はねえかもな。なあ? モネ」
シーザーがモネと呼んだ女性は、十数冊の本を積み上げたり、広げたりしながら何かを書き留めているようだった。
「北の海出身、〝死の外科医〟能力はオペオペの実。医者なのね。この島には毒ガスに体をやられた元囚人たちがたくさんいるけれど、治せる?」
「問題ない」
即答したローに、モネもシーザーも目を細め、口角を上げた。
「お前たちがここに滞在する。その代わりに部下どもに足をくれる。そりゃありがてえよ。だが、お前は俺より強い。この島のボスは俺だぞ。ここに滞在したけりゃお前の立場を弱くすべきだ」
「別に危害は与えねえ。コイツも、俺の言葉なしにはお前の寝首を掻くことはねえだろうからな。そうだろ、ジェディ?」
俺はコクリと頷く。
だがそれでもシーザーは納得していないようだ。口約束だけじゃ安心できないのだろう。
「……どうすりゃ気が済む?」
「こうしよう、トラファルガー・ロー。俺の大切な秘書、モネの心臓をお前に預かってほしい。いいな? モネ」
「ええ、いいわよ」
「その代わり……お前の部下の心臓を俺によこせ! それで契約成立だ! 互いに首根っこを掴み合ってりゃ、お前は妙な気は起こせねえ。俺も安心だ。シュロロロロ!」
「…………コイツの心臓はやらねえ。コイツに危害を加えることは俺が許さねえ」
ギロリと睨みつけるローに、シーザーが眉間にシワを寄せた。要求が呑めないのならば滞在は許可できない。今すぐに出ていけ、ということだ。
「ロー、俺は別に――「代わりに」」
「俺の心臓をやる。そっちの方がさらにお前も安心できるだろう」
ローはそう言って自分の胸に手を当てて笑った。その言葉を聞いたシーザーはニヤリと笑って言った。
これで契約は成立した。俺たちはこの島で自由に動き回ることが出来るようになったのだ。