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拝啓、僕が壊した君へ。

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拝啓、僕が壊した君へ。

1 - 第1話僕が壊した君へ。

♥

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2025年03月27日

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「カンナ、今日は何が食べたい?」


昼頃、ご飯を食べ済ますと僕は冷蔵庫を漁りなが


らカンナに夜ご飯のことを聞いた。


「大丈夫?最近、全然食べないから僕心配だよ。」


体調が悪いのだろうか、ご飯を作っても全く食べ


てくれない。


「無理しないでね。」


彼女にそう伝えると、僕は彼女の隣に座り、テレ


ビをつける。


「面白いの?」


やっぱり体調が悪いのだろうか、前のお転婆な彼女の様子はなく、ずっとテレビばかりみている。


「うん」その言葉に僕はあまり共感はできなかった。僕自体はテレビに興味は無く、本当はもっとカンナと色々な所に出かけたかったが、カンナが


この調子ならば無理はさせたくない。


テレビの音が僕の耳によくはいる。


カンナはニュースが好きなのだろうか、少し意外


だがニュースをよく見ている。


「女子高校生が行方不明なんだって、カンナも気をつけてね」カンナに気をかけながら、僕はチャンネルを変えた。


「・・・・・・」カンナからは何も返ってこない。


それからまた一緒に過ごしていると、時間が過ぎるのがとても早く感じた。


「もう夜だね」


「そうだね」


「夜ご飯作るよ、オムライスでいい?」


「うん」


僕は、少しでもカンナから返事をくれた事が嬉しくてたまらなかった。


「…………」


前はあんなに元気で明るかったのに。


でも前よりもずっと一緒に居れている事実が嬉し


かった。


僕が独りで考え事をしていると、カンナがソ


ファーで寝てしまっていた。


「ごめんね、ご飯出来たから起きて。」


僕がカンナの体を起こす。


「ご飯、食べようか。」


僕は、高校を卒業してから、摂食障害を抜け出し、


ごはんを食べれるようになった。


でも目の前にいる彼女は、オムライスに手一つつ


けていない。


「お腹すいてないの?明日にする?」


僕は、ラップを手に取り、皿に巻いた。


そして、また冷蔵庫を開けた。するといくつかカ


「……」


ンナが食べなかった料理がまだ残っていた。


冷蔵庫を開ける度、僕は何故か苦しくなる。


「リリー。」後ろから僕の名前を呼ぶ声がする。


「リリー」まただ。でもその声は録音した声を、


何度も再生しているような感じがして気持ち悪


かった。


「・・・・・・どうしたの?」


後ろを振り向くと、笑っているカンナがいた。


いや、笑っているはずのカンナが、僕を見つめて


いる。


腐敗臭がする。


「リリー。」


さっきよりもずっと鈍くて、聞こえずらいものだった。


「・・・・・・いやだ。」思い出したくなかった。


おかしかったんだ。前までは僕に明るく接してくれたのに。前までは、もっと僕を優しくて、元気


な声で呼んでくれていたのに。


僕は、あの時最後の告白にしようと、またカンナを呼び出した。


案の定振られた。もう何十回になるだろう、振られてしまったのは。


辛かった。彼女が僕のものにならなかったのが。


そして僕は、彼女を殺してしまった。こうなると分かっていたかのように、持ち出していたナイフで。


ああ、全部思い出した。


また、彼女を見ると、僕の知っている彼女ではなく、もう人間と言っていいのかも分からないほどに、腐敗している彼女がいる。


脳内で再生される声も、セリフも、こんなにもわ


すれてしまうんだな。


扉を叩く音が聞こえる。


「ああ、行ってくるね、カンナ。」



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