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※過呼吸
聖域(4章)後すぐの話。
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紅い血に染まった、花形の髪飾り。
胴体を絶たれた桃色髪のメイド。
寝たきりになった水色髪の、自分を信じ愛してくれるメイド。
髪の毛一本も残さず、この世から消え去っていく契約精霊。
腹を切られて死んでいく。
喉を潰され死んでいく。
地面が近づき死んでいく。
凍てつく寒さに包まれながら死んでいく。
喉を刺して死んでいく。
血の味を噛んで死んでいく。
─── 耳を裂くような悲鳴を聞いた。
─── その声が、いつまでも耳の奥にこびりついて離れないのです。
─── 充満した血の香りを、はっきりと覚えている。
─── その匂いが、今もなお鼻腔へ残り続けているのです。
─── 目の前で、愛する人たちが冷たい肉塊へと変わっていく瞬間を見た。
─── その光景が、記憶の奥深くに刻みつけられて離れないのです。
死の淵で見た景色は、いつだって無力な自分を逃がそうと、守ろうとする人たちの背中だった。
その背中が、何よりも重い罪悪感となって、今も胸にのしかかっているのです。
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聖域を出て、スバルがベアトリスを禁書庫から解放した後のこと。
スバル達は燃えた別邸から本邸に移り住むことになった。
夕食が終わり、お風呂も終わり、屋敷の1部の人は、寝る準備に入っている時間のことだった。
「……スバル」
「お?どした?」
あの日からずっとスバルの後ろを着いて歩くベアトリスが、口を開いた。
「今日は、ベティーと一緒に寝るかしら」
「……」
「な、何かしらその目は!別に、スバルが一緒に寝たそうにしてたから……ごにょごにょ」
「…お前ほんっとうに可愛いなぁ……」
「うるさいかしら!」
と、膨れたベアトリスの頬をつんつんしながら、スバルとベアトリスは一緒に寝ることになった。
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目を開けると、そこは暗闇だった。鼻の先にあるであろう、自分の手すら、闇に飲まれるほどの暗闇。
自分がどこにいるのかも、立っているのかすら怪しくなるほど黒くて黒くて、だんだん、輪郭が溶け始めて、自分の身体が闇と一体化していく。
その先から、黒い手が伸びてくる。
暗闇の中から伸びた黒い手が、ゆっくりと自分の身体へ触れて───「 愛してる」
「愛してる」
「愛してる、愛してる」
「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる」
──ひゅ
目が覚める。ガバッと開いた目から、意思に反してじわりじわりと涙がこぼれ、次第に大粒になっていく。
「ぁ……う、う”」
身体の中に溜め込んでいた恐怖が一気に吐き出されたような感覚。
逃げ道のない恐怖につつまれたナツキスバルは、ただ嗚咽を漏らしその場で唸るしか無かった。
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夜は、いつの間にか深くなっていた。
隣から聞こえる寝息が、ふと途切れる。
「……っ、は……」
その異変に気が付き、ベアトリスは薄く目を開けた。
「……スバル?」
返事はない。
けれど、隣にいるパートナーの様子がおかしい。汗をどっぷりとかき、肩が小刻みに揺れ、呼吸がひどく乱れている。
「スバル!」
ベアトリスは慌てて身体を起こした。
「どうしたのよ、スバル……!」
「……う”…………かひゅっ、はっ…ひゅっ、は……おぇ……ぅ”うぅ……」
「お、落ち着くかしら!大丈夫なのよ、ベティーがここにいるのよ!」
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#二次創作
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声をかけても、スバルはすぐには反応しない。
ベアトリスはどうすればいいのか分からず、それでも離れることだけはしなかった。
「大丈夫。……大丈夫なのよ、ゆっくり呼吸するかしら、」
ベアトリスはスバルの傍に座り込む。
「げほっ、かひゅっ…はっ…ぅ…ふー……ぅ…」
しばらくして、乱れていた呼吸がほんの少しずつ落ち着いていく。
「ベア、子……?」
「そうなのよ」
「……あ、ご、ごめん。えっと…いやーなんか変な夢みちゃってさ!それだけだ!それだけ。もう大丈夫だから…」
「スバル」
ベアトリスは、むりやり笑っている、まだ青白いスバルの顔をまっすぐ見つめた。
いつものような拗ねた表情でも、どこか嬉しそうな表情でもなく、心配そうな目で、すこし涙ぐんだ表情で、言った。
「この可愛いパートナーに、隠し事はなしなのよ」
「…………」
「…さすがベア子。隠し事はできねぇな」
「ふふん、かしら。ベティーにはなんでもお見通しなのよ」
「…で、なにがあったのかしら。」
「…」
スバルは答えようとしたが、声が出なかった。
まだあの夢の黒がこべり着いて離れない。
「……話せないのよ?」
苦しそうな表情をするベアトリスをみて、ようやくスバルは言葉を紡ぐ。
「…別に、今に始まったことじゃない」
「夢を見るんだ。嫌な夢。悪い夢、最悪の夢」
「……よく、あるのかしら」
「ああ…」
「なぁ、このことは…誰にも言わないで欲しい」
スバルは困ったように笑った。
「みんなに知られたら、心配かけるだろ?」
「大丈夫だからさ。ちょっと夢見が悪かっただけだ。」
「……大丈夫な顔じゃないのよ」
「…………」
スバルは何も言えなくなった。
ベアトリスは、そんなスバルをじっと見つめる。
そして、そっと隣に座り直した。
「分かったのよ」
「……え?」
「誰にも言わないかしら」
「ベア子……」
「でも」
ベアトリスは、スバルの袖を小さくつまむ。
「ベティーには、ちゃんと話すのよ」
「一人で抱え込むのは許さないかしら。ベティーはスバルのパートナーなのよ、それくらい、一緒に背負わせるかしら。」
「……分かった。ありがとな、ベア子。」
「いいのよ」
ベアトリスはそう言って、スバルの隣から離れなかった。
コメント
1件
ああ、もう…冒頭の悪夢の描写が本当に生々しくて、胸がぎゅっとなりました。特に「愛してる」の畳みかけが、呪いみたいで怖かった…。でもそこからベアトリスが気づいて、そっと寄り添うシーンにほっとしました。「隠し事はなしなのよ」って言うベアトリス、優しすぎる…。スバルの無理に笑う強がりも切なくて、二人の距離が縮まる瞬間を大事に描いてくれて、すごく好きです。続きが気になります。