想ってるだけ　完

今まで通りでいいじゃないか。

怪我までするなんて。

向井は渡辺に申し訳ないと思っている。

向井の為に練習までしてくれて。

渡辺ー俺達、変わらないよな？

向井ー前より翔太くんが大事になった。

渡辺ー康二・・。

向井ー今まで通りでええねん。

渡辺ー分かった。

向井ー晩ご飯一緒に食べるのも幸せやと思うてる。

向井ー気持ちええこと出来るんも幸せやと思うてる。

渡辺ー俺も。

向井ー翔太くんの笑顔見られるだけで幸せやと思うてる。

渡辺は抱きしめられ、向井は泣いている。

背中を撫でてキスをする。

向井ー俺は幸せや。翔太くんは？

渡辺ー幸せだと思ってる。

向井ーまた、どこか行こか？

渡辺ー海に行きたい。

向井ーもう、人がおる。

渡辺ー海水浴場じゃなくて、小さな浜しかないようなところ。

向井ー探してみるわ。

渡辺ーん。

どうやって探したら見つかるのだろう？

向井は、見つけてきた。

千葉の方らしい。

2人は予定を見て前回から久しぶりのオフが重なってる。

このところ天気があまり良くない。

それでも海に行きたい。

渡辺は向井にそう言う。

カメラを持って、お弁当とタオルを持って出かけよう。

小さくて岩があちこちにゴツゴツある海。

人はいない。

天気が良くて良い風が吹いている。

向井は、カメラを構え渡辺を撮っている。

木の枝を見つけ、砂に線を引きながら歩いている渡辺。

向井がファインダーを覗いていると、寂しそうな顔。

シャッターを切り、渡辺の元へ。

向井ーどうしたん？

渡辺ーん、幸せだけど申し訳ないなと。

向井ーまだ気にしとんの？

渡辺ーん。

向井ー俺は今、満足しとる。

渡辺ー嘘だ。

向井ー翔太くんに怪我さしてまで、繋がりたくない。

渡辺ー待っててくれる？

向井ーちょっとずつ、練習しよ？

渡辺ーん。

向井ーほら、笑うて？

渡辺の笑顔がいい。

憂いのある顔もいいが、渡辺は笑顔がいい。

向井はシャッターを切りながら、そう思う。

小さな浜とも呼べないような砂地。

2人で砂山を作り、波が削っていく。

渡辺が泣いている。

崩れる砂山を見ながら。

向井は隣りに立ち手を繋ぐ。

硬く握りしめる。

同じように握り返してくる。

シートを敷いてお弁当を食べる。

笑ってる。

美味しいと言いながら笑ってる。

写真を撮りながら食べる向井。

渡辺はワザと変な顔をする。

2人で笑いながらお弁当を食べ、

コーヒーを飲む。

帰りの車の中で渡辺は眠っている。

いつもの日常が戻ってきた。

完