テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
はじめに
・23年、24年辺りの時間軸です。
・口調など不安定な箇所があります。
《聖なる夜に愛を込めて》
大阪の冬にもいよいよ慣れてきた頃、俺は30歳を迎える手前の歳まで来ていた。いつも通り練習を終えて、自宅のマンションへ帰る。今年のクリスマスは、あかーしは会いに来れないみたいだ。東京と大阪、そうそう会えない距離。あかーしが受け持つサッカ?マンガカ?だっけか。その人が大阪に住んでるから会えないことも無いみたいだけど、やっぱり忙しいって言ってた。
寒い、寒い日だった。クリスマスまで1週間を切り、それももちろんのこと、新年へ向けて街全体が動いているみたいに感じられて、1人の夜がふいに寂しくなった。今年のクリスマスはきっと、ムスビィのメンバーと過ごす事になんのかな。メールアプリを開くと、ツムツムからの新着が来ていた。
24日の夜は、ショーヨーの家でクリスマスイブを過ごす事になった。楽しいけど、心の端でやっぱりあかーしと過ごせないことに何となくモヤモヤを抱えていた。あっという間に23時、プレゼントなんてない大人の俺たちにとって、夜はこれからだった。カーテンの隙間から見える空は星空のはずなのに、ほとんどが雲で覆われていた。柄になく、俺みたいだなあって思う。そして、1番に思っていたはずのあかーしからのメールにも気づかないまま、いきなりかかってきたスマホの着信音に4コール目でやっと気づく。それも、あかーしからだった。忙しいはずなのに、なんで?ショーヨー達に断りを入れてから、電話に出た。
「もしもし。すみません、赤葦です。今って何処にいますか?」
いつもの落ち着いた声が、今日に限ってなんだか荒い。何万回も、何億回も聞いてきた声だからすぐに分かった。
「え、今?ショーヨーの家でクリスマスパーティー?みたいなのしてる!あかーしこそ、忙しいんじゃなかったの?」
「あ、いえ…ただ、思ったより仕事が早く片付いたので、大阪まで来ちゃいまして。」
「あかーし今大阪いんの!?どこ!!」
人の家なのに、思わず声が大きくなる。
「えっと、難波駅です。でも、日向の家にいるんですよね?」
「そーだけど…ちょっと待って、難波駅だよね?今から行くから!あったかくして待ってて!」
「え、ちょ、木兎さん…!?」
あかーしに会いたい。止められなかった想いが溢れ、電話を切ってすぐにショーヨー達に謝り倒して家を後にした。慣れたはずの、それも東京より寒くないはずの冬が、いやに寒く感じる。イルミネーションの前で立ち止まるカップルや、クリスマス一色に染まった商店街を他所に難波駅まで走る。息が白くて、なんだかわくわくした。会えるんだ、あかーしに。会えないと思ってたあかーしに。
電話を切られてから十数分、言われた通りに難波駅でマフラーに顔を埋めながら難波駅で待っていた。自分に会うために集まりを抜け出させてしまった罪悪感と、久し振りに木兎さんと会えるという多幸感のジレンマが焦れったい。そしてしばらくして、見慣れたミミズク頭が駆けてくる。自分でも分かるほど口角が上がっている感じがする。
「あかーし!!」
「木兎さん…お久し振りです。すみません、来れないと言ってたのにいきなり来てしまって…」
「ううん!全然!俺、あかーしとクリスマス過ごせるの嬉しい!…あ、でももちろんショーヨー達と過ごすのも楽しかったけどね?」
「ふふ、分かってますよ。今年は会えないと思ってました。」
感極まって、思わず抱きしめる。普段なら絶対に駅前とかいう人で溢れた場所で場違いな事はしないが、今日だけはクリスマスイブという特別な日だ。浮かれた周りの雰囲気と混ざって、俺と木兎さんとのハグなんて誰も気にしていない。
新幹線に乗り込んだ時からの高揚感を思い出して泣きそうになるのをぐっと堪え、その分ハグの力を強くさせた。イルミネーションが目に眩しい。恋を超えた愛を感じる。言葉がなくとも、顔が見えなくても分かる、木兎さんの表情。いつになく穏やかで、喰われそうなほど惹き込まれる瞳の輝きが、いつの間にか晴れていた星空のように綺麗だった。
最後まで読んでくださりありがとうございました。私自身、文字書きに慣れていないのもあって、文章がおかしいところなどあったかと思います。そして何より、短い!もっと長編が書けるようにこれからも頑張ります。よろしくお願いします。